見えてくるのは、自分の運転だけじゃない。
最初の目標は、100点を出すこと
- 普段どんなときに車を運転していますか?
- いちばん使うのは通勤ですね。家から会社まで片道18キロくらい。あとは、ちょっとそこのコンビニに行くのでさえ車です。私に限らずこの町の人たちは、短い距離でも車を使っていると思います。
- この地域ならではの、運転中にヒヤッとするポイントがあれば教えてください。
- 自宅周辺の細い道はすべて要注意。ご近所のお子さんやお年寄りが飛び出してくることもありますから。「車が来るかも?」っていう意識が薄いのかもしれないですね。あとは信号をショートカットできる抜け道。あそこはすごく危ない。朝は通学路になっているのに、通勤する車が大勢いますし、道幅も狭いので時々車同士がにらめっこしていますね。
- このプロジェクトに参加したきっかけは?
- 参加するとアプリを使うためのデバイスがもらえるじゃないですか。私の場合、まずそのデバイスへの興味ですね。自分の車とつないだときに、アプリがどんな動きをするのか単純に知りたかったんです。新しいゲームを手に入れるときのような、そんなワクワクした感覚で参加しました。
- もともと運転に自信がありましたか?
- 正直、ありましたね。自分は安全運転をしていると思っていました。日頃からタクシーの運転手になったつもりで、助手席の人が眠くなるような運転を心がけていたので。でも最初に出した得点が79点か80点…。これじゃダメだなと。それで、「だったら絶対100点取るぞ!」っていう意識が芽生えてきて。初めて100点が出たときはすごく嬉しかったですね。
改善ポイントが、見つかる
- YouDriveアプリを使ってみていかがでしたか?
- まずは想像以上にすごい技術だと思いました。運転が終わるとスマホの画面に自分が運転したコースが表示されるし、どこでアクセルやブレーキを踏んだのかも全部出てくる。つまり、自分の運転を振り返ることができるんです。たとえば、急ブレーキをしたポイントを思い返して、「そういえば、前の車が急に減速したから自分もブレーキを踏んだなぁ」とか。
- 自分の運転を振り返って、どんなところを改善しましたか?
- まずは急ブレーキしない運転をするために、車間距離に気をつけるようになりました。あとは法定速度も守って運転していますね。
- 総合ランキングもこだわっていますよね?
- そうですね、今は得点よりもランキング重視かな(笑)。最初は本当にゲーム感覚だったので、常に「自分がトップを取る!」っていう意識でアプリを起動させていました。そこから自然に安全運転を考えるようになっていった気がしますね。
急いでいる車に、合わせない運転
- 今までの運転と比べて、どんな変化がありましたか?
- まずは自分がいかにスピードを出していたかよくわかりましたね。たとえば、近所の幹線道路って、けっこうスピードを出す車が多いんです。今までは、自分もそのスピードに合わせて運転していたのですが、今は法定速度で走ります。そうすると、正直な話、後ろから煽られることも多くて…(笑)。
- それだと高得点の運転を続けるのは難しそうですね?
- そうなんです。最初は単純に煽られるのが嫌で嫌で…。やっぱり周りの車からは「なにタラタラ走ってるんだよ」って思われがちですね。あと難しいのは、高速道路の入口手前の道路。そこでも法定速度で走らないとスピードオーバーで減点になります。実際はそこで多くの車が加速して本線へ行くので、自分だけ遅いと「危ない車」だと見なされるんです。
- 交通ルールと現実のギャップを感じるわけですね?
- まさにそこが、このアプリで上位をめざすときに苦しんだところです。それでも、毎日100点を出していくことが楽しくなってきて、今ではまったく気にならなくなりました。あと実は、燃費も良くなったんです(笑)。安全運転だからエンジンに負担が少ないんですよ。以前より1、2キロは長く走るようになりましたね。だから今は、煽られたらすぐにハザードをつけて先に行かせています。
安全機能よりも、安全意識を高める
- 安全なクルマ社会をつくるために、何が必要だと思いますか?
- 今って車の進歩というか、安全を配慮した機能が次々と出ていますよね。それも必要なことかもしれませんが、その手前にあるドライバー自身の意識が高まらないと、安全なクルマ社会って実現しないと思います。
- YouDriveアプリは、安全なクルマ社会に貢献できるでしょうか?
- 居眠り・酒気帯び・ながら運転とかの事故は除きますが、少なくともアプリで高得点が出る運転を心がければ、急アクセル・急ブレーキ・一旦停止無視などをしなくなるので、追突事故や交差点での人身事故もずいぶん減ると思います。私自身、20年の運転歴の中で今がいちばん安全運転ですから。
- 今後このプロジェクトに期待したいことはありますか?
- たとえば、どこかの県で行政や警察の協力を得ながら、試験的に県内すべての車にこのアプリを導入するような、規模を広げた取り組みができるといい気がします。もしそれで、事故件数や死亡者数が減少するような効果が表れたら、それこそ「見える化」だと私は思いますね。
- これからのドライバーに伝えたいことはありますか?
- すこし余談ですが、プロのカーレーサーってサーキットではありえないスピードで走るのに、日頃の運転は絶対に安全運転。その話を聞いて「安全運転ってカッコいい」って思ったんです。今回、YouDriveアプリで安全運転を競う楽しさを体感できました。まずはその楽しさを多くの人にも知ってほしいと思うし、ゆくゆくは、「安全運転ってカッコいい」という価値観が広まると、未来のクルマ社会は、もっと安心で安全になると思います。
取材を終えて
安全運転の基準が見えることで、今のクルマ社会とのギャップを感じるようになったという牧野さん。そして「優秀者同士で意見交換ができる場があると、きっと盛り上がるはず」という意見もいただきました。たしかに参加者の仲間意識が高まるような仕掛けがあると、安全運転に対する意識をより楽しく共有できるのかもしれません。このプロジェクトによって、未来ドライバーが育つ。そして、未来ドライバーたちがつながることで、クルマ社会の未来が育つ。今回の取材では、MIRAI DRIVE PROJECTの大きな可能性にも気づくことができました。
プロフィール
- 氏名:牧野恵乗さん
- 年齢:30代後半
- 居住エリア:富山県小矢部市
- 運転歴:20年
- 安全運転の秘訣:急ぐ車は先に行かせる