2020/02/20
室内犬を飼い始めるときは、できればケージやサークルを用意しましょう。犬を閉じ込めるようで可哀想だと感じるかもしれませんが、屋外犬が犬小屋に入って落ち着くのと同じように、室内犬にも自分だけのスペースが必要です。
今回は、犬にケージが必要な理由を確認しながら、ケージ選びのコツや、使い方のポイントをご紹介します。
犬にケージやサークルが必要な理由として、主に以下の3点が挙げられます。
犬には縄張り意識があり、自分のテリトリーを守ろうとします。犬を室内で放し飼いにすると、部屋全体が縄張りとなり、異常が無いか警戒心を働かせる対象となってしまいます。
そうなると、室内のちょっとした変化に反応したり、来客に対して過剰に吠えたりするなど、飼い主さんだけでなく犬自身にもストレスがかかる状況を招きかねません。
子犬は好奇心旺盛でパワフルです。長時間、ケージの中でお留守番させるのは可哀想だからと部屋に放したまま出かけると、帰宅したときには家具がかじられていたり、クッションが噛みちぎられていたりと、思わぬ惨状を目にするかもしれません。
また、そのようなイタズラを繰り返していると、その後のしつけが難しくなったり、問題行動が定着しやすくなったりします。ケージを活用することで、イタズラを自由に経験させないようにしましょう。
そしてイタズラをした結果、落ちていたものを誤飲する、電化製品のコードをかじって感電する、などといった重大な事故が起こることもあります。
犬が過ごす場所は自宅ばかりとは限りません。飼い主さんが旅行に出かけるときにペットホテルのケージに泊まることもあれば、病気やケガで動物病院に入院する場合もあります。また、災害時には避難所に設置されたケージに避難したり、保護団体に預かってもらったりする可能性もあります。
日頃からケージの中で長時間過ごすことに慣れさせておくと、飼い主さんも犬自身も、いざというときに対応することができます。
災害時のペットの避難については、「災害時にペットを守るために。同行避難時の救護対策を確認しよう」もあわせてご覧ください。
なお、ケージやサークルで落ち着いて過ごせるように育てられている犬は、飼い主さんの不在に耐えられずに体調を崩したりする「分離不安」になりにくいともいわれています。
急な環境変化が起きた時に愛犬の心を守る意味でも、日頃からケージを活用する必要があるといえるでしょう。
犬の分離不安については、「愛犬の「分離不安」とは? 症状や原因をチェック!」もあわせてご覧ください。
愛犬にはどのようなケージを与えれば良いのか、ケージを選ぶときのポイントについて考えてみましょう。
ケージもサークルも、犬の居住区間を区切るという意味では類似したものですが、使い勝手が異なる部分もあるので、それぞれの特徴を踏まえて選びましょう。
「ケージ」とは、一般的に床と屋根がついたタイプのものを指します。作りが頑丈で、犬が飛び出してしまう心配もありません。また、屋根のある空間に日頃から慣れさせるという意味でも有効です。ただし、掃除や食器などを出し入れする際に、天井を取り外したりする手間は必要になります。
天井部分のパーツをつけない使用方法もありますが、高さを考慮しないと犬が飛び出してしまう恐れがあります。
一方、「サークル」は金属製の柵をパーツでつなげて設置するタイプのものが一般的です。部屋の形状に合わせて組み立てたり、犬の成長に応じて拡張したりすることができます。
なお、どちらを使う場合でも、大きさの目安としては「フセ」の姿勢がゆったりとでき、立ち上がって方向転換できるものを選びましょう。
ケージやサークルの中には、寝床とトイレを用意するのが一般的です。クッションやマットを寝床として用意する場合もありますが、クレート(キャリーケース)も活用できれば、より万全といえるでしょう。
クレートの中でおとなしくすることに慣れていれば、車や電車で飼い主さんと一緒に旅行に出かけたり、災害時に慣れたクレートに入って避難できるなどのメリットがあります。
また、夜はクレートだけを飼い主さんの寝室に移動すれば、同じ部屋で眠ることもできます。
多頭飼育の場合は、それぞれの犬にケージやクレートが必要になります。新しい犬を迎える場合は、事前に設置スペースを明確にしておきましょう。最初はお互いの顔が見えないようにケージの間に目隠しをしたり、離れたところに設置したりするなどの配慮も必要です。
頭数分のケージを設置するスペースを確保できない場合は、2階建て・3階建てのケージなども市販されているので検討してください。
慣れないと、ケージに入ることを嫌がる犬も少なくありません。愛犬がケージを使うようにするために、以下の点に注意しましょう。
犬は群れで過ごしたがる動物なので、ケージを設置する部屋は、家族が集まるリビングがおすすめです。
設置場所として、人がせわしなく通る場所や、外の物音が聞こえやすい窓の下、テレビの近くなどは、犬が落ち着かないので適しません。エアコンの風や直射日光の当たらない、静かな場所に設置しましょう。
子犬を迎えた時に、最初から進んでケージに入るとは限りません。ケージを好きになってもらうためにはトレーニングが必要になります。
方法としては、犬の鼻先におやつを見せて、「ハウス」と言いながらケージの方へ誘導します。犬がケージに入ったら、ドアを閉めることなくハウスの中でおやつを与え、よく褒めます。
「ケージに入ると、おやつがもらえて褒められる」という経験を繰り返すことで、ケージを良い場所と学習し、やがて「ハウス」の声掛けだけでケージに入るようになります。
クレートを使う場合は、「ハウス」で誘導する先がクレートになりますが、トレーニングの手順は同じです。
反対に、犬がイタズラや失敗をしたときに罰のようにケージに閉じ込めたり、犬がケージに入ろうとするときに飼い主さんが手で押してドアを閉めたりすると、ケージをつらい場所と認識してしまうのでやめましょう。
ケージで落ち着いて過ごす時間が必要とはいっても、犬には毎日のお散歩や運動が欠かせません。必要以上にケージに入れっぱなしにすることなく、犬と活動したり触れ合ったりする時間を大切にしましょう。
また、レトリバー種や牧羊犬など活動量の多い犬種は、やはりケージで長時間過ごすのには向きません。意識的に運動量を増やすようにしてメリハリのある生活を送らせてあげましょう。
ケージの中でお留守番させる際に、犬が退屈しないか心配な場合は、長時間与えても安全なおもちゃやおやつを入れましょう。
代表的なものとして、中にフードやおやつを詰められる「コング」があります。犬用ペーストや犬用チーズなどをコングに詰めて与えれば、なかなか出てこない中身を舐め取ろうとして、夢中になって過ごすことができます。
オモチャを入れる場合は飲み込んでしまわない大きさのものを選び、事前に製品パッケージの注意書きなどをよく確認してから活用するようにしましょう。
今回はケージの必要性について確認しながら、ケージの選び方や使い方のポイントについて考えました。飼い主さんの生活リズムや迎え入れる犬種などを考慮しながら、愛犬が安全に、安心して暮らせる環境を整えてあげましょう。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。