2020/05/21
愛猫がおしりを地面にずりずりと擦りつけて「おしり歩き」している姿を見かけたことはありますか?一見すると可愛らしい仕草ですが、頻繁に行っている場合は猫がお尻に違和感を感じており、病気のアラートかもしれません。
今回は、猫がずりずりとおしり歩きをする原因や予防するためのケア方法についてご紹介します。
猫の肛門には左右に一対、肛門嚢(肛門腺)と呼ばれる袋状の構造があります。肛門嚢はアポクリン腺という外分泌腺の一種で、独特な強いにおいのする分泌液が肛門嚢の中には溜まります。肛門嚢は肛門の筋肉、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間に挟まれた状態で存在しているため、排便時に肛門をキュッとすぼめることで自然と肛門嚢は押され肛門の左右から分泌液が排出されます。
しかし、何らかの原因で肛門嚢が目詰まりを起こすと、猫が違和感を感じ、おしりをずりずりと床や壁に擦りつける行動をし始めることがあります。
愛猫のおしりから悪臭がする、急におしりを気にして舐める、座れない、肛門の斜め45度下あたりが赤く腫れる、おしり周りを触ると怒るといった行動や症状が見られる場合、肛門嚢炎の可能性が考えられます。
肛門嚢炎とは、細菌感染や肛門線の目詰まりなどが原因で肛門嚢が炎症を起こした状態のことです。膿が溜まり、ひどくなると肛門嚢が破裂し肛門周囲の腫れや皮膚に穴が開いて血膿が出てきます。肛門周りの腫瘍が原因で肛門嚢が破裂する場合もあります。
肛門嚢炎の治療では、抗生物質や抗炎症薬の投与を行い、なかなか治らない場合は外科手術が必要になりますので、早めに動物病院で受診しましょう。
猫のおしり歩きの原因として、便秘などが原因でトイレにいる時間が長い、うんちの切れが悪いといったことも考えられます。
猫が便秘を起こす原因は、水分不足・ストレス・食物繊維質の過剰摂取・高齢による排便能力の低下・トイレの汚れ、そして排便困難を伴う病気が考えられます。便秘が続く場合や血便、嘔吐、食欲不振も伴う場合などは、早めに動物病院に相談しましょう。
猫の便秘について詳しくは「教えて獣医さん!猫の便秘は病気のサイン?」をご覧ください。
下痢や軟便時には、肛門周りの粘膜に下痢便が付着し炎症を起こすことがあり、痛みやかゆみを伴うため、猫はおしり歩きをします。
肛門の周りが汚れている、炎症を起こしている場合は、こまめに洗ってあげたり、蒸らしたタオルなどで優しくふき取ってあげましょう。
肛門嚢の位置をしっかりと確認することから始めましょう。猫の肛門嚢は、肛門を中心に見た場合、時計の4時と8時の方向に位置します。
利き手と反対の手でしっぽを優しく持ち上げ、利き手で肛門嚢を軽くつまんでみると、左右にパチンコ玉大のコロコロした小さな塊があり、触ることができると思います。肛門嚢に分泌液が溜まっていると塊が大きくなるので、溜まっているときの大きさと、しぼり終えたときの大きさを覚えておくと良いでしょう。
肛門嚢を優しくつまみ、身体の内側にかけて優しくしぼってあげるとトロッと分泌液が出てきますので、これを数回繰り返しましょう。
自宅で猫の肛門腺しぼりをするときには、お風呂場で行うとスムーズにおしりが洗い流せて便利です。肛門腺から独特な強いにおいがするため、部屋で行うときは壁やカーペットなどに付着しないよう十分に注意してください。
さらにおしり周囲の粘膜はとてもデリケートなので、爪で傷つけたり、汚れた手で触ったりしないようにします。正しいしぼり方や愛猫に必要な頻度をかかりつけの動物病院へ相談のうえ、行いましょう。
自宅でも肛門腺をしぼることはできますが、無理をすると破裂をさせてしまう危険もありますので、愛猫が嫌がる場合は決して無理はせず動物病院でしぼってもらいましょう。動物病院によって異なりますが、猫の肛門腺しぼりの料金は1回につき500~1,000円程度が一般的です。
猫のおしりや排便には様々な病気の兆候があらわれます。赤く腫れていたり、分泌液の臭いが変わったり、膿や血混じりになっていないかなど飼い主さんの日々の観察とケアが大切です。トラブルや病気を防ぐためにも、日頃から愛猫の様子をよく観察し、定期的なチェックを行いましょう。