2020/05/28
人と同じように犬がくしゃみをすることは珍しくありません。数回くしゃみをする程度で特に体調の変化がなく元気であれば、一過性の生理現象の可能性が高いでしょう。しかし、毎日くしゃみを繰り返したり、ゼリー状や膿状の鼻水が続いたり、鼻血やいびきなど他の症状がある場合は、病気のサインかもしれません。
今回は、犬がくしゃみをする原因や考えられる病気、逆くしゃみついて解説します。
異物が鼻に入ると、犬は生理的にくしゃみをします。小さなものでは室内のほこりや室外の砂、大きなものでは草の種や葉、食べたものの欠片などが異物として鼻の中に入ることによってくしゃみが起こります。異物が排出されれば治まるので心配はいりませんが、あまりにくしゃみの頻度が高い場合は、異物がくしゃみで排出されずに残っていたり、アレルギーなどの過敏な反応が起きている場合があるので動物病院に相談しましょう。
室内のほこりが原因と疑われる場合は、こまめな部屋の掃除、空気清浄機の設置、換気などを心掛けましょう。
犬は嗅覚がとても優れているため、タバコ・お香などの煙、香水・ハーブ・香辛料・殺虫剤などの刺激の強いにおいを感じるとくしゃみを誘発します。できる限り、このようなにおいの強いものは犬に近づけないようにしましょう。
脱臭・消臭効果のある空気清浄機などを設置し、くしゃみの原因となるにおいを抑えることも効果的です。
植物の花粉やハウスダストなどに対して犬がアレルギーを持っていると、くしゃみや鼻水などの症状があらわれます。同時に皮膚や耳の痒み(アレルギー性皮膚炎)を伴うことが多いです。アレルギーの原因(アレルゲン)となるものは、花粉やハウスダストから食べ物まで様々なので、原因を特定するためには動物病院でアレルギー検査を受けると良いでしょう。
また、季節によってくしゃみの頻度に差がある犬の場合、植物の花粉がアレルゲンとして考えられます。例えば春のスギ、ヒノキ、夏のイネ、秋のブタクサなどです。このような犬の場合、草のなかに入らないように気をつけ、散歩などの外出後は、ブラッシングで犬の体に付着した花粉などを落としてあげたり、犬の体にアレルゲンが付着しないように服を着せて出かけることなどを心がけましょう。
犬のくしゃみが長く続く、鼻水が止まらない、膿状の鼻水が出る、鼻出血やいびきを伴っている・・・こうした場合には、病気の可能性が考えられます。
くしゃみを伴う病気には様々なものがありますが、一般的には特発性、歯牙疾患(特に犬歯の根の化膿)、ウイルス感染、カビの感染、口や鼻の腫瘍などが考えられます。病気によっては命に関わるため、くしゃみや鼻水が止まらないときには、なるべく早めに動物病院を受診しましょう。
今はスマートフォンなどで動画撮影も簡単にできますので、くしゃみをする愛犬の動画を撮影して、動物病院に持参すると良いでしょう。
犬のくしゃみから考えられる病気としては、主に以下のようなものがあり、なかには命に関わる病気もあるので、くしゃみ以外の症状がないか、日頃からよく観察するようにしましょう。
犬の慢性鼻炎の中でもっとも多い病気です。アレルギーや刺激物質、免疫の異常などに対して起こるのではないかと考えられています。この病気は命に関わることは少ないですが、完治が難しいため根気よく治療をする必要があります。
鼻炎を起こすウイルスにはジステンパーウイルス、アデノウイルス2型、犬パラインフルエンザウイルス、犬ヘルペスウイルスなどが関与します。主な症状は、くしゃみ・鼻水・微熱・短く乾いた咳です。なかでもジステンパーウイルスは致死率が高く、下痢やけいれん発作などを伴いますので注意が必要です。ウイルス性鼻炎のほとんどは、ワクチン接種により予防が可能なので定期的な抗体検査やワクチン接種が非常に重要です。
予防接種について、詳しくは「犬の予防接種|狂犬病・混合ワクチンの種類と費用」もご覧ください。
鼻水に血が混ざっている、鼻水が臭う、片方の鼻だけ鼻水が出るなどの場合は細菌性鼻炎、真菌性鼻炎、蓄膿症や鼻腔内腫瘍の疑いが考えられます。
細菌性鼻炎の原因菌としては気管支敗血症菌、マイコプラズマなどがあり、真菌性鼻炎はアスペルギルスやクリプトコッカスなどが原因になります。どちらも副鼻腔内に感染が進むと慢性蓄膿症(副鼻腔炎)になり重症化した場合、呼吸困難や顔面の変形などを伴うこともあります。進行する前に動物病院を受診し、原因菌を特定して抗生剤や抗真菌薬で治療しましょう。
犬の鼻腔内腫瘍については、ほとんどが悪性です。中高齢期の犬、なかでもシェットランド・シープドック、ダックスフントなど鼻の長い、いわゆる長頭種の犬に多い病気と言われています。上記の症状に加えて、いびきや鼻呼吸が難しそうにしている、鼻出血が止まらないなどの様子がみられたら、早めに動物病院で精密検査を受けましょう
犬の上顎犬歯(いわゆる牙)の根は鼻腔のすぐそばに位置します。歯石が付着し歯周病を患ったり、歯が折れたり擦り減って歯の神経が露出した場合、歯根に膿が溜まり、膿が次第に鼻腔内に侵入して鼻炎を起こし、くしゃみが止まらなくなることがあります。予防として、こまめな歯磨きや細菌のかたまりである歯石の除去をしてあげましょう。また、犬歯が擦り減ったり欠けたりする可能性があるフリスビーや固いおもちゃ、乾燥豚耳ジャーキーや牛皮などの固い食べ物をあげないよう心がけましょう。歯周病は主に抗生剤や抗炎症剤を使い治療を行いますが、症状が進行すると抜歯が必要になる場合があります。
歯周病について詳しくは「犬も歯周病にかかる!主な症状・治療法と上手に歯磨きをするコツ」をご覧ください。
犬が突然に息を何度も吸い込みながら、ズーズーと鼻を鳴らす動作のことを「逆くしゃみ」と言います。くしゃみはクシュンと鼻から外に息を出しますが、逆くしゃみはその逆で、吸い込みながら鼻を鳴らします。
原因ははっきりとしていませんが、鼻の奥の筋肉のたるみや鼻孔の狭さ、アレルギーなどが関係していると言われています。
逆くしゃみは小型犬の短頭種によくみられる症状です。代表的な犬種としてはチワワ、フレンチ・ブルドック、パグ、シーズー、ペキニーズ、トイプードルなどがあげられますが、その他の犬種でもみられます。
逆くしゃみは愛犬が突然喘息のように苦しそうな呼吸をはじめるため、命に関わる問題ではないのかと心配になるかもしれませんが、実際に呼吸が苦しいことはほとんどありません。たいていは数分以内にはおさまり、愛犬は何事もなかったかのようになります。
ただし、逆くしゃみのような状態が長時間続く場合や、元気や食欲がなくなった場合は、何らかの病気の可能性が考えられるので、動物病院で相談してみましょう。逆くしゃみの様子を動画で撮影しておき、獣医師にみせると診断がスムーズになるため、事前に用意しておくと良いでしょう。
犬には「カーミングシグナル」という行動があります。これは相手に対して本能的な行動や仕草で、カーミング(落ち着かせる)シグナル(合図)を送ることです。犬自身が緊張や興奮を落ち着かせるためにカーミングシグナルのひとつとして、くしゃみをすることがあるようです。犬のくしゃみと言っても、治療が必要ないものや、自宅でのケアで対処できるものなど様々です。しかし、なかなかくしゃみが止まらない場合には病気が隠れていることもあるので、日頃から愛犬の様子に気を配っておくことが大切です。気になる症状があれば早めに動物病院で、くしゃみの原因が病気ではないか調べてもらいましょう。