2015/09/09
ドッグトレーナーである島本さんのパートナードッグとして暮らす9歳のラブラドールレトリーバー、コマジ。
コマジはとってもおっとりした男の子ですが、こう見えて島本さんと一緒に「ドッグダンス」のコンテストで優勝したこともあるエンターテイナーなんです。
でも、ドッグダンスコンテスト優勝までには、長く険しい道のりがありました。
税務関係の仕事から、ドッグトレーナーになろうと一念発起した島本さん。パートナードッグを探しブリーダーの元を訪れ、そこで出会ったのがコマジでした。
第一印象ではやんちゃなコマジの兄弟を引き取りたいと思っていた島本さんでしたが、一緒に来ていた友人に先手を打たれ、同じケージの中にいたコマジをパートナードッグとして迎えることに。
ドッグトレーナーのスクールでわんちゃんのトレーニングについて勉強したとはいえ、これまでに一度もわんちゃんを飼ったことのなかった島本さんにとっては、コマジが初めての「愛犬」です。
音楽に合わせて、わんちゃんと飼い主さまがクルクル回ったり、ピョンピョン跳ねがら踊る「ドッグダンス」。
とても楽しく、どんなわんちゃんでも飼い主さまと一緒にできる競技ですが、日本ではまだまだ普及していません。島本さんのトレーナーとしてのミッションは、このドッグダンスを広めることでした。
プロのトレーナーとしてドッグダンスの道を極め、コマジをパートナードッグに育てなくてはならない…島本さんには、そんなプレッシャーがありました。
競技として、本格的にドッグダンスに取り組む場合、好奇心旺盛でやんちゃなわんちゃんのほうが向いていると言われています。
しかし、コマジは真逆の性格。おっとりとしたとても優しい子で、真剣に指導する島本さんに委縮してしまうこともあったそうです。
ドッグダンスのためには、基礎となる「おすわり・ふせ・待て」の持続力を伸ばす特訓、ジャンプや二本足で立ち上がる動きなどの「トリック」の訓練など、わんちゃんだけではなく、それを指示する人間にも忍耐力が必要です。
わんちゃんができるようになるまでの時間と同じだけ、トレーナーもその練習に付き合い、ドッグダンスの完成に向けて時間を共有するのです。
ドッグダンスで使うテクニックは通常のしつけの「お手」や「おすわり」などとあまり変わりません。しかし、ドッグダンスのメリットは飼い主さまが当事者意識を持つことができ、わんちゃんだけにプレッシャーをかけることなく一緒に楽しむことのできるところにあります。
技術的な部分は練習を重ねることで、上達のスピードに差はあれど、どんなわんちゃんでも出来るようになります。 大きな問題となるのは、わんちゃんのモチベーションです。わんちゃんがドッグダンスに消極的だと、一緒に楽しむ事ができず、決して良いパフォーマンスをすることはできません。
プライベートでは伸び伸びとしているコマジですが、ダンスの練習になると、途端にテンションが下がり、逃げ出してしまったことも…
プロとして、なんとしてもドッグダンスを体得しなければならないという島本さんの焦りがコマジに伝わり、なかなかダンスがうまくいかないという悪循環が続きました。
コマジが生後10ヶ月でドッグダンスを始めてから、9年もの月日が経った頃には、島本さんは、コマジの表情を見ただけで、どんなことを考えているのかが手に取るようにわかるようになったといいます。
また、島本さんが緊張すれば、コマジも緊張する。島本さんがリラックスしていれば、コマジもリラックスできる。その様子をお互いが理解し、いつしか、ふたりは一心同体でダンスに挑むことができるようになっていました。
そして、2015年5月。
4回目の大会への出場。島本さんは、コマジがもう9歳と高齢なこともあり、この大会で引退することを決めていました。勝っても負けても全力を出しきるしかないと、覚悟を決めて望んだ最後の演技。
島本さんとコマジは接戦の末、見事に9年越しの優勝トロフィーを手にすることができたのです。
島本さんはコマジとの関係をこう語ります。
「プライベートでも、仕事でも常に一緒にいるので、コマジはもう、仕事の”相方”であるのと同時に”分身”のような感覚です。いま何を考えているのか手に取るように分かる。
普通に一緒に9年過ごすだけでも、お互いの考えていることはある程度わかるようになると思うんです。ただ、ドッグダンスでは犬が普段しないような動きをこちらが提示しなくてはいけないので、どうやってその動きを伝えて理解させるか?ということを試行錯誤します。
でも、犬側も『人が言っていることはわからないけど、理解したい』と思ってくれる。この意思疎通を合致させようとし続けているからこそ、関係性というか、絆がすごく良くなってくるんです。」
お互いがお互いを最大限に輝かせられ、仕事においてもふたり揃わなければ成立しない島本さんとコマジの関係は、確かに「相方」という呼び方がピッタリなのかもしれません。
コマジは引退後、それまでの緊張感の反動からか、甘えん坊になりました。島本さんは、プロのトレーナーとして甘やかしすぎてはいけないと思いつつ、少し嬉しそう。
これまでパートナードッグとして頑張ってきてくれた姿を誰よりも知っている分、島本さんはこれまでよりも、コマジを自由に遊ばせてあげているそうです。
初めは、コマジの兄弟をパートナーとして選びたいと思っていたところから始まった1人のドッグトレーナーと1頭のパートナードッグの関係。そして、ドッグダンスの引退により、島本さんとコマジは新たな関係に踏み出しました。
ふたりの過ごし方や接し方が変わっても、「相方」であり、「愛犬」であるふたりの絆は変わることはないでしょう。
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