2015/09/09

犬の生理の症状や期間って?対処方法と出血する病気との見分け方

2015/09/09

犬の生理の症状や期間って?対処方法と出血する病気との見分け方

 女の子のわんちゃんを飼っていると、「生理」に直面することがあります。
 元気に過ごしていると思っていた愛犬が出血しているのを発見したら、頭では「生理」と分かっていても、少し心配になりますよね。
 今回はわんちゃんの生理について三宅先生に詳しくうかがいました。

犬の「生理」の仕組みは?

—犬の生理って毎月ではないですよね?人間とは違うのですが、どういった仕組みなのでしょうか?

 まず、犬の「生理」と呼ばれている現象は正確には「発情期」というもので約半年に一度起こるものですが、1年に一度だけ発情する犬種もいます。性成熟を迎えた6~7ヶ月齢くらいに初回発情が起こります。超大型犬では1歳を超えてから起こるケースもあります。

—犬の生理は発情期の一環なんですね。犬の発情期について、もう少し詳しく教えていただけますか?

 発情周期は「発情前期」「発情期」「発情休止期(発情後期)」「無発情期」の4期に分かれるんです。発情出血が起こるのは、「発情前期」と呼ばれる期間で、平均7日ほどです。犬はこの期間に排卵準備を始め、交尾に備えます。
 「発情期」になるとオスを受け入れるようになり、発情出血の色も薄くなってきます。

—発情前期で身体を整えてから発情期を迎えるんですね。

 はい。その後、オスを受け入れなくなり、また発情出血も止まり、「発情休止期(発情後期)」に入ります。
 この時期は約2ヶ月間で、妊娠していれば2ヶ月後に出産を迎えますが、妊娠していないと偽妊娠を起こします。

—想像妊娠というものでしょうか?

 そうですね。「想像妊娠」という言葉のほうが聞き馴染みがあるかもしれません。
 偽妊娠は妊娠時と同様のホルモンが出ることにより、乳腺が発達したり、乳汁が出るようになったりします。また、ぬいぐるみを子供のように抱え込み離さなくなるという行動を起こすこともあります。これらの症状は、発情後期が過ぎれば自然とおさまるので、見守りましょう。

発情後期の症状は温かく見守ってあげて

発情後期の症状は温かく見守ってあげて

—突然出血しているのを発見して、先生に相談される患者さんは多いですか?

 そうですね。発情出血に気付かれる方も多いのですが、外陰部が普段の約3倍にも腫脹するため、その変化に驚いてお電話をくださる方が多いです。でも、それも異常ではないので、愛犬の様子が普段と変わらないなら心配しなくても大丈夫。

—約3倍もですか?それは確かに驚いてしまいますね。出血に関する相談はあまり多くないでしょうか?

 大型犬だと出血量が多いこともありますが、小型犬の場合は量が少なくて自分で舐めとってしまい、飼い主さまがそれほど発情出血を気にされないこともあります。

生理中のわんちゃんに特別なケアは必要?お散歩は行ける?

—出血が少なくても、外陰部が腫れてしまうんですね。そういう状態の時に犬の体調が崩れたり、ナーバスになったりということはありますか?

 犬によりけりですね。普段と変わらずケロっとしている犬もいれば、頻尿になったり、だるそうにする犬もいます。お散歩を嫌がるようになることもありますね。

だるそうだったら無理にお散歩に連れて行くのは控えましょう

だるそうだったら無理にお散歩に連れて行くのは控えましょう

—だるそうでなければ、生理中は普段通りにお散歩をしても大丈夫ということですね。

 ただ、犬が普段と変わらない様子なら、お散歩に連れて行くこと自体は問題ないのですが、発情期にオスと会うと、とても興奮させてしまうため、他の犬への影響があります。

—愛犬への気遣いに加え、周囲への気遣いも必要ですね。

 オスの犬が興奮してしまうことは、オスにとってもメスにとってもストレスになります。マナーとして人通りの少ない時間帯や場所でお散歩するなどの配慮は必要です。

—生理中に特別なケアをしてあげる必要はありますか?犬用の生理オムツなども市販されていますが…

 出血量が多いようであれば使用されるといいと思いますが、犬が自分で舐めて綺麗にしているのであれば、特別なケアをしてあげる必要はありません。

—血を舐めとってしまうことで、犬の健康に影響はありませんか?

 自然なことなので、大丈夫ですよ。
 オムツは、かぶれてしまうこともあるので、愛犬の様子をよく見て検討されるといいと思います。

出血量が多い場合は犬用のオムツもありますが、普段以上にデリケートな時期なので自然体が一番おすすめです

出血量が多い場合は犬用のオムツもありますが、普段以上にデリケートな時期なので自然体が一番おすすめです

生理と間違えてしまいそうな病気は?

—生理と間違えてしまいそうな出血のある病気はありますか?

 考えられるのは膣炎や子宮の病気ですかね。もしくは膀胱炎での血尿を出血ととらえることもあるかもしれません。
 ただ、代表的な子宮の病気である「子宮蓄膿症」は、子宮内にたまってしまった内容物が外に排出されない「閉鎖型」があります。子宮蓄膿症は放置すると敗血症になり、全身感染になってしまう怖い病気です。

—子宮蓄膿症になってしまった場合はどんな治療をするのですか?また、予防するためにできることはありますか?

 手術の内容としては、避妊手術で行う、子宮・卵巣の摘出です。
 通常の避妊手術と同じではありますが、子宮蓄膿症により食欲不振、嘔吐、などを起こしていることに加え、子宮内の細菌が出す毒素により多臓器不全を起こすことも多く、全身状態が悪くなります。予防するためには、避妊手術をして子宮を摘出するのが一番です。

愛犬とその子犬のため…犬の出産について大切なこと

—発情期は健康面ではあまり心配はいらないとはいえ、予定外に妊娠してしまう可能性や子宮の病気のことを考えると不安ですね。避妊手術は犬が何歳の時からできるのでしょうか?

 避妊手術は、日本では初めての発情期が来てから行う病院が多いかと思いますが、色々な考え方があります。
 アメリカでは生後3カ月程度の子犬の頃に避妊手術をすることもあります。
 発情期中の手術もできるのですが、止血の面で心配があるので避けたほうがいいでしょう。
 手術費用や術前の検査内容、入院期間は病院によって違うのですが、検査のしっかりした病院のほうが安心かもしれませんね。

—避妊手術のデメリットはありますか?

 ホルモンバランスが変わるのと、臓器が減る分、消費カロリーが減りますので太りやすくなります。避妊手術前より、食餌のカロリーを3割ほど減らすことが推奨されます。

—避妊についてお話をうかがいましたが、犬の妊娠や出産はどういったものですか?

 犬の妊娠期間は63日で約2ヶ月と短いですが、犬のお産はイメージよりも大変で難産になることも珍しくありません。自然分娩が難しいと判断される場合は病院で帝王切開が選択されることもあります。
 しかし、犬が産気づいた時に病院に連れて行って環境を変えてしまうと、犬が落ち着いて出産を行うことができないため、ご家庭で赤ちゃんを産ませることが多いです。

 もちろん、妊娠期間中は病院で妊娠検査が必要です。
 画像診断で胎仔数や大きさ、心拍などをみます。また、お腹に何匹いるかを知っておかないと、子宮に胎仔が残っていても外からは分からず、そのまま死産になったり、母体を危険にさらすことになります。

「犬のお産は軽い」という話は誤解です!犬の出産だって命がけ

「犬のお産は軽い」という話は誤解です!犬の出産だって命がけ

—自宅でお産をするのは大変そうですね。自分の犬の赤ちゃんを見たい!という憧れを持っている人もいると思うのですが、一般家庭で妊娠可能な時期を見極めることはできますか?

 メスの犬だけ飼っていて、妊娠可能な時期だけオスの犬と一緒にして妊娠を期待するのは相性や時期の見極めという点から難しいかもしれません。

—一般の家庭で犬の繁殖を行うのは難しいのですね。

 一般の家庭で、子犬が見たいからといって愛犬の妊娠を安易に望むのは少し考えたほうがいいかもしれません。
 妊娠や出産では危険な目にあうことも多いのです。無事に出産できたとしても、育児放棄などの可能性もありますし、生まれた子の引き取り先を探すのも大変です。

—子犬を望む時には、犬と飼い主さまの幸せについてきちんと考えなければなりませんね。

 犬の身体のことを考えて、もし子供を産む予定がないなら早めの避妊手術をおすすめします。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

たとえば、トイプードルの場合 月々1,290円 ※詳細はリンク先をご確認ください。普段の通院から、もしもの入院・手術までしっかり補償 保険料を調べてみる

▼コチラの記事もCheck!▼

ペット保険の補償対象をおさらい!避妊や誤飲はカバーできるの?[vol.2]

→実は気になっているペット保険。「うちの子は大丈夫」と思っていても、病気やトラブルに遭う可能性は0ではありません。人間よりも数倍早く歳をとるペットのために、飼い主が知っておきたいペット保険の基本を紹介します。

 

ペットの治療費は意外と高額?いざという時のためのペット保険の基本[vol.1]

→意外と気になるペット保険。「うちの子は大丈夫」と思っていても、トラブルに遭う可能性は0ではありません。人間よりも数倍早く歳をとるペットのために、飼い主が知っておきたいペット保険の基本をご紹介します。

 

愛犬を「皮膚病」から守るために|知っておきたい予防と治療法 [皮膚炎 後編]

→犬のかかりやすい病気である皮膚炎。原因は多岐にわたりますが、心因性のものに注目してその症状や日頃のケア、治療法をまとめました。

総まとめ そもそもペット保険って?! 失敗しないためにも保険のしくみをチェック!! 大切なことだワン 知って損はないニャー 詳細はこちらから 総まとめ そもそもペット保険って?! 失敗しないためにも保険のしくみをチェック! 詳細はこちらから
↑