2020/07/16
胃腸が未発達な子犬は、健康でも空腹や食べすぎで嘔吐をすることがあります。子犬を飼いはじめた飼い主さんにとって、嘔吐は非常に不安な症状のうちのひとつです。嘔吐物に白い泡状のものが見られたり、また何度も嘔吐を繰り返す場合には注意が必要です。
今回は、子犬の嘔吐についてその原因や疑わしい病気、対策方法についてご紹介します。
犬は比較的吐きやすい動物です。人は食べ物をモグモグと噛んで細かくしてから飲み込みますが、犬は食べ物を咥えたら奥歯で噛み切って適度な大きさになったら飲み込む習性があります。食べ物を口に入れてから飲み込むまでが早いため、飲み込んだ食べ物に異常を感じた場合、速やかに吐き出せる体の構造になっています。
特に子犬は体がまだ成長段階であり消化器官が未発達なことに加え、成犬よりも色々な物に興味をもってかじり、誤飲をすることがあるため、結果として、成犬よりも吐く回数が多くなります。
子犬が吐いた場合には、まず生活環境や吐いた物、行動の観察をしてください。基本的に1回だけ吐いて、その後何ごともなく元気で食欲があるようならば病気の可能性は低いでしょう。
しかし、何度も吐く場合は注意が必要です。子犬の行動範囲内に物をかじった跡がないか、なくなったり減ったりした物がないか、吐き戻したものの中に異物か混ざっていないか注意しながら確認しましょう。
そして、吐くときの行動や様子をしっかりと観察し、可能なら動画で様子が分かるように全身をいれて撮影しましょう。
「嘔吐」と「吐出」
犬が吐く場合、大きく分けて「嘔吐」と「吐出」があります。胃や腸から内容物が吐き出されることを「嘔吐」といい、吐く前にうろうろとしながらウエッ、ウエッっとお腹を凹ませる行動が見られ、その後ゲポッと吐き出します。一方、胃に入る前の喉や食道から内容物が吐き出されることを「吐出」と呼び、前兆が無く突然ゲーっと吐き出します。吐出は明らかに異常なので、吐出の疑いが少しでもある場合には早めに動物病院に行くべきです。
子犬の吐出で一番多いのは食道内異物です。嘔吐が続く場合も様々な原因がありますので動物病院で調べてもらいましょう。吐き戻してる様子を撮影した動画や吐物を持参するとよいでしょう。
また、誤飲した異物を飼い主さん自身で取りだそうとすることで起こる事故もありますので、無理やり吐き出させようとせず、動物病院で処置をしてもらいましょう。
吐き方に違いがあるように、吐く原因も様々あります。
白い泡や黄色い液体を吐いた場合、空腹による逆流性胃炎(胆汁嘔吐症候群)が原因と考えられます。胃の中が空になると胃酸が増え、子犬は吐き気を感じ嘔吐します。この場合は、空腹を避けるように食事の回数を工夫することで解決する可能性があります。成犬の多くは1日2食ですが、子犬(1歳まで)のうちは1日の適量分を3回以上に分けて与えるようにしましょう。
勢いよく食べた直後に全部吐き戻し、その後も元気で食欲がある場合には、病気ではなく生理的現象が考えられます。勢いよく食べることで、フードを食道に詰まらせてしまったり、胃でふやけたドッグフードが胃の許容量を超えた場合に、このような現象が起こります。吐いたフードを再度食べる子犬も多いです。1回の食事で食べすぎないように回数を増やしたり、早食いをして、食道にフードを詰まらせないようにフードボウルの置く位置を高くしたり、早食い防止のフードボウルなどを上手に活用しましょう。
固いジャーキー類や歯磨きトリーツなどは大きなサイズのまま飲み込んで食道に詰まらせてしまう場合があります。他にも、木片や布片、縫い針や糸などを誤飲している可能性考えられます。食道内異物の場合、よだれを垂らしながら苦しそうに何度もゲーゲーと吐き戻す仕草を見せます。このような場合は緊急性がありますので早めに動物病院を受診しましょう。与えるおやつのサイズには十分気を付け、子犬が口にすると危険なものは、子犬が届く範囲には置かないようにしましょう。
子犬は、クッションの綿・プラスチック片・梅干しや果物の種・ボタン・ゴムボール・ビニールなど様々な物に興味を持ち口に咥え、そのまま飲み込んでしまう場合も多々あります。胃の中はタンク状なので閉塞を起こすことはありませんが、胃内異物が刺激となり、間欠的な嘔吐や悪心が続きます。そして異物が胃から腸へと送られ腸閉塞を引き起こします。腸閉塞は死に至ることもあり、嘔吐の症状がみられる場合は緊急性がありますので、様子を見るのではなく、早めに動物病院を受診しましょう。
愛犬の誤飲・誤食を防ぐ方法や対処法について詳しくは「犬の誤飲・誤食を防ぐために|安全に応急処置できる対処法一覧付き」をご覧ください。
室内やお散歩コースには中毒により嘔吐を起こすものが潜んでいます。タバコや室内の観葉植物、人の風邪薬、チョコレートやブドウ類、殺鼠剤や除草剤などの誤食には注意しましょう。食べたものによって対処方法や治療法が異なりますので、中毒の危険性がある物を誤食した場合、食べた量や成分、種類、時間などをメモにとり、動物病院に相談しましょう。
子犬は乗り物酔いしやすく、体温調整も苦手です。車で長時間の移動をする場合、こまめに休憩をとり、車内の温度をやや低めに設定してあげましょう。乗り物酔いをしやすい子犬には、動物用の酔い止めを動物病院で処方してもらいましょう。予防対策として飲ませておくことをお勧めします。
子犬の時期は免疫力が未発達です。ウイルス性の腸炎(パルボウイルス、ジステンパーウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス1型など)、細菌性の腸炎(大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなど)などの感染症でも嘔吐がみられます。この場合には下痢の症状も引き起こしますので、早めに動物病院に行きましょう。
引越しやペットホテルに預けた際など、いつもと違う環境の変化からストレスを感じて一時的に嘔吐や軟便の症状が出ることがあります。症状が軽く1~2日程度で状態が落ち着いてくるようであれば心配はいりません。
子犬が何度も吐き、その後食欲の低下、元気がない、下痢を伴っている場合には病気を発症している可能性が考えられます。子犬にみられる吐き気を伴う病気には具体的に下記のようなものがあります。
消化器の病気
・胃腸炎
・膵炎
・食道炎
・胃捻転
全身・臓器の病気
・食物アレルギー
・熱中症
・腎障害
・肝障害
感染症
・細菌性腸炎(大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなど)
・ウイルス性腸炎や肝炎(パルボウイルス、ジステンパーウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス1型など)
・寄生虫感染(回虫)
ウイルス感染は定期的な予防接種で重症化を防ぐことができます。予防接種の種類や費用について詳しくは「犬の予防接種|狂犬病・混合ワクチンの種類と費用」を参考にしてください。
この他にも、水頭症、門派シャント、脳炎(壊死性髄膜脳炎、壊死性白質脳炎など)等の先天的な疾患や、中毒症状の際にも嘔吐の症状がでます。
嘔吐が続くと食道や胃に負担がかかり、胃炎や食道炎を進行します。また、胃液を吐くことで体内のミネラル成分や水分が失われ、危険な状態となりますので、以下の症状がみられたら早めに動物病院へ連れていきましょう。
・嘔吐が1日3回以上続く
・何日も嘔吐が続いている
・食欲や元気がない
・軟便や下痢がある
・いたずらをして食べたものがある
・震えや熱っぽさがある
・ひきつけを起こして倒れた
・よだれを垂らしている
・呼吸が荒くなっている
また、嘔吐物の色が黒っぽい場合や血が混じる場合、異物が混じっている場合は吐く回数に関係なく動物病院へ行ってください。
獣医師は治療の際に嘔吐物を参考にしながら診断することがあります。子犬が吐いたものは捨てずにビニール袋などに入れ動物病院に持って行きましょう。また吐くときの動作を動画で確認ができれば、こちらも診断のための判断材料になります。飼い主さんが嘔吐だと思っていたが、動画で確認すると呼吸器の病気(咳)から起こったえずきが主原因だったこともあります。(白神先生経験談)
子犬は吐きやすい動物で、その原因も様々です。子犬が吐くという症状は飼い主が生活環境を整備することで改善されることも多いため、日頃から愛犬の生活環境の整備や体調管理をしっかりと行いましょう。