2020/07/30
愛犬との生活に欠かせない毎日の散歩ですが、真夏は直射日光で熱せられたアスファルトや気温には注意が必要です。真夏の散歩に適した時間帯はいつなのか、熱中症や肉球のやけど、さらに蚊などの虫刺されといった夏のトラブルから愛犬を守り、快適な散歩へ導く対策法をご紹介します。
飼い主さんにとっても暑い季節の散歩はつらいものですが、愛犬にも様々な危険が潜んでいます。
地面からの照り返し
ジリジリと日差しで熱せられた地面の温度は60度以上になることもあります。犬は顔が地面に近く、照り返しの熱気をダイレクトに受けてしまうため、熱中症の危険性が高まります。天気が曇りだとしても油断せず、必ず飼い主さん自身の手で地面を触り、愛犬が歩いても熱くない温度であることを確認したうえで、散歩へでかけてください。
肉球のやけどを引き起こす
犬は成長とともに肉球の角質層が厚くなるおかげで地面の熱を感じにくいと言われています。しかし、温度が50~60度近くに上昇したアスファルトやコンクリートの地面の上を直に歩くと肉球のやけどを引き起こす危険があるため、真夏の散歩は注意が必要となります。昼間の散歩は避けた方がよいでしょう。
熱が発散しきれず熱中症になる
人は暑くなると全身の汗腺から汗を出して体温調節を行いますが、犬は肉球にしか汗腺(エクリン腺)がありません。そのため体に溜まった熱を逃がすため、「パンティング」という行動をします。パンティングは口を開けて舌を出し、ハァハァと速い呼吸をして体内の熱気を吐き出しながら涼しい空気を取り込み、体温を下げようとするものです。
また、舌を出すことで唾液を蒸発させます。唾液が蒸発する際に舌の熱を奪うため、そこで体温調節をしています。しかし、犬が日差しを長時間浴びてしまうとパンティングだけではその熱を逃しきれなくなり、熱中症を誘発することがあります。
夏の散歩でもっとも気をつけたいのが、時間帯です。気温が上昇し、日差しやアスファルトからの照り返しによるトラブルがもっとも増えるのは昼間のため、夏は早朝と夜に散歩をしましょう。
一番おすすめは早朝
夏は日の出が早く、朝は5時を過ぎるとだいぶ明るくなっています。早朝であれば、夜の間に地面の熱も解消されます。また、日差しも気にならず、気温も上がりきっていない時間帯であるため、犬も人も快適に散歩が楽しめます。
早朝が難しい場合は夜
夕方はまだ地面が熱く、肉球を傷めてしまう危険があるため、完全に地面の熱が下がった夜になってから散歩へ行きましょう。日差しの関係で長時間の散歩ができない場合は、早朝と夜の2回に分けて行うこともおすすめです。
どちらの時間帯も必ず飼い主さんが素手で地面を触り、地面の熱が下がっていることを確認してください。昼間よりも気温が下がっているとはいえ、真夏は夜間も蒸し暑いため、夜間であっても熱中症にならないという保証はありません。犬用のひんやりグッズなどを活用して快適な散歩をさせてあげましょう。
散歩に行きたいストレスから無駄吠えをしてしまう時は?
猛暑日続きで散歩に行けない日が続いたり、通常の散歩時間より短くなってしまう場合、犬は散歩に行きたくて無駄吠えをしたり、いたずらが増えてしまうことがあります。そんな時は、ボール遊び、おいかけっこなど、家の中でできる遊びを積極的にすることで、ストレスを解消させましょう。
犬種によりそれぞれ必要な運動量が違いますので、愛犬の適切な運動量を把握しましょう。小型犬に必要な散歩の距離や回数について詳しくは「【獣医師監修】小型犬に散歩は必要?適切な回数や距離、注意点を解説」を参考にしてください。
動物病院への通院など、どうしても犬と昼間におでかけする場合は、以下のことに気をつけてください。
・なるべくアスファルトやコンクリートを避ける
・いつもよりこまめに水分補給をさせる
・犬が苦しそうにパンティングをしていたら直ちに散歩をやめる
・帰宅後は肉球が赤くなっていたり、腫れていたらよく冷やしてケアをする
その他にも、犬をドッグカートに乗せ地面を歩かせないようにする、布で包んだ保冷剤などを首に巻いてあげるといった工夫もしてみましょう。ただしエチレングリコールという中毒性のある原料を用いた保冷剤もあるため、誤食に十分気をつけましょう。
犬に元気がない、歩こうとすると嫌がる、すぐ座る、すぐ寝そべる、すぐ疲れてしまう、歩き出したが足がふらついているといった症状が出ている場合、暑さから夏バテを起こしている可能性があります。その時は、すぐに散歩を中止して自宅に戻り様子をみてあげてください。水を飲まない、食事を取らない、元気がないなど気になる症状がみられる場合には、熱中症の可能性もあるため、すぐ病院へ連れて行きましょう。
炎天下の屋外に長時間いた結果、愛犬が熱中症を発症してしまった場合、どのような対応をしたらよいのでしょうか。
意識がある場合
まずは直射日光を避けて、風通しのよい日陰に移動してください。そして水分補給を促します。飲まない場合は口の周りを濡らす程度にし、誤嚥(ごえん)を避けるため、無理に飲ませることはやめましょう。犬の体に水をかけて風をあて、氷のうを作り頭や体を冷やし、こもった熱を逃がしてください。冷水で濡らしたタオルやハンカチで頭や脇の下、脚の付け根など動脈が通っている部位にあてることも熱を取り除くのに効果的です。この時、体温を下げすぎないよう注意しましょう。
応急処置で体調が戻ったとしても、熱中症は多臓器障害の恐れがあるため、見た目だけでは分からないこともあります。動物病院へ電話をし、愛犬の症状や状態を伝え、獣医師の判断を仰ぎましょう。
意識がない場合
愛犬がぐったりとして意識がない場合は、すみやかに体を冷やして、すぐに動物病院へ向かいましょう。どれだけ早く体の熱を取れるかが重要なため、動物病院への移動中も冷やすことを忘れないでください。
夏の散歩に対する悩みはどの飼い主さんも一緒です。そこで、暑さをしのいで快適に過ごせるおすすめのアイテムをご紹介します。
冷感素材のひんやりグッズ
夏の散歩におすすめなのが、冷感素材で作られた洋服やネッククーラー、バンダナです。ペット用のベッドなどにも用いられている冷感素材は、身につけるだけで涼しくなるので愛犬の熱中症が心配な飼い主さんにおすすめです。
肉球の保護パッドや犬専用のシューズ
肉球の形をした保護パッドは犬の足裏にペタッと貼るだけで、アスファルトの熱からくる肉球のやけどを防いでくれます。犬専用のシューズは見た目もおしゃれで可愛らしいのが特徴です。散歩前に履かせるだけでいいので、手間もかかりません。
反射リード
夜は暗い中での散歩となるため、車や自転車などにも注意が必要です。そんな時はペット用の反射リードをつけ、愛犬を危険から守りましょう。暗闇で光る素材を使用しているため、車や自転車とすれ違う際の安全性を高めてくれます。
ハンディシャワー
水分補給対策にはペットボトルの口に取りつけるハンディシャワーがあります。給水はもちろん、おしっこをした時のマナーシャワーとしても使用できるため、夏場はもちろん一年中使える利便性の高いアイテムです。
虫除け対策のスプレーやリング
夜の散歩でも蚊、ノミ、ダニなどの虫刺されに注意が必要です。蚊は「フィラリア」という寄生虫を媒介します。ノミやダニは、動物だけでなく、人にも感染する病気を媒介していることがあります。近年では、マダニから人へ媒介されるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気で、ペットから人へ感染したと思われる死亡症例も報告されました。ノミやダニ、フィラリアはそれぞれ予防薬で対策できますが、蚊の駆除はできません。予防薬と合わせて、犬用・ペット用の虫除けスプレーを犬の体に振りかけたり、虫除けリングを身につけるなど、虫を寄せ付けないための対策を行いましょう。
散歩コースを選ぶ際は、草むらなどの虫が多く生息するような場所はなるべく避けてください。散歩後には犬の体をチェックし、万が一、犬の体にノミやマダニを含む虫本体や虫刺されを見つけたら、動物病院に相談しましょう。フィラリアについて詳しくは「犬のフィラリアってどんな病気?獣医さんに聞きました」をご覧ください。
犬にとって散歩は季節を問わず、毎日の楽しみであり、欠かせない習慣ですが、夏の散歩は熱中症や肉球のやけど、虫に刺されるなどトラブルが頻発しています。
飼い主さんが気をつけてあげると未然に防げることは多いです。愛犬の楽しみを奪ってしまわないよう、時間帯や水分補給など上手に工夫して夏も愛犬との散歩を楽しみましょう。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。