2020/08/06
暑い季節に食欲がない、散歩を嫌がる、下痢や嘔吐の症状がみられる場合、それは夏バテかも知れません。愛犬にとって快適なエアコンの設定温度から食事の工夫まで、犬種・年齢で異なるケア方法、夏バテと熱中症の違いもご紹介します。
また、夏バテと勘違いされることもある、「夏に起こる貧血」の原因についてもあわせてご紹介します。
年々平均気温も上がり、夏になると日本の各地で「猛暑」のニュースが飛び交います。さらに、日本は高温多湿な気候のため屋外だけでなく、室内にいても人間と同じように犬も夏バテをします。
では、犬が夏バテになるとどのような症状がみられるのでしょうか。
元気がない
夏バテは屋外だけでなく、室内にいても起こります。床に寝そべったまま動かない時間が増え、おもちゃなどでも遊ばなくなり、飼い主さんが呼び掛けてもなかなか動こうとしません。
食欲がない
フードだけでなく、おやつを見ても喜ばなくなります。においを嗅ぐけれど食べようとしない場合には夏バテを起している可能性が考えられます。
睡眠時間が長くなる
元気がなく、フードも食べたくないため、犬は睡眠時間が長くなります。長期間この症状が続くと、運動不足や栄養不足につながるため注意が必要です。
散歩を嫌がる
夏バテで食欲も落ち、体力も低下するため散歩に行く気力がなくなります。また、日差しで熱せられたアスファルトによる肉球のやけど、照り返しにより犬の体感温度は45℃以上とも言われます。愛犬が散歩に行きたがらない場合には、室内で遊ぶなど、散歩以外の運動をさせるとよいでしょう。
下痢や嘔吐がある
食欲が落ち、運動ができない状態が続くことで体調をくずして、下痢や嘔吐を繰り返します。この症状が続くと脱水症状を引き起こすため注意が必要です。愛犬が脱水症状を起こしている場合には、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
<脱水症状の確認>
愛犬が脱水症状を起こしていないか、飼い主さんでも確認できる方法があります。首の後ろの皮膚を軽くつまみあげ、すぐ戻るようなら大丈夫ですが、戻るのに時間がかかる場合には脱水症状気味と考えられ、さらにつまんだ形のままの場合は、ひどい脱水症状を起こしている可能性が高いです。このほかにも愛犬の目、口の周りが乾いている、おしっこの回数が減っている場合にも注意した方がよいでしょう。もし、おしっこがほとんど出ていないようであれば、ひどい脱水症状を起こしていると考えられるため、できるだけ早く、動物病院でみてもらうようにしましょう。
人間は全身に汗腺があり、汗をかくことで体温調整を行いますが、汗腺が肉球や鼻にしかなく、全身が毛で覆われている犬は暑さに弱く、体温調整が苦手です。ハアハアと舌を出して息をするパンティングで体内の熱を発散させますが、暑い季節は涼しい空気を取り込むことが難しく夏バテを引き起こします。
徐々に体力が低下する夏バテに比べて、熱中症は急に症状があらわれます。必ずしも日中の炎天下で起こるとは限らず、室内でも熱中症が起こる可能性は十分にあります。
次の症状がみられる場合には熱中症かもしれません。
・呼吸が荒く、よだれが多い
・寝そべりながら、ぐったりしている
・水を飲もうとしない
・呼びかけへの反応が薄い、足元がふらつく
・歯茎や肉球が白っぽくなる、舌の色が薄くなる、または紫色(チアノーゼ)になる
・痙攣をおこしている
このような症状がみられる場合には、応急処置をしながら、急いで動物病院へ連れて行きましょう。
熱中症は迅速な応急処置が大切です。涼しい場所へ移動し水分補給をさせ、十分な休憩をとりましょう。保冷材や濡らしたタオルで、脇の下や首、足の付け根などを冷やすと効率的に体温を下げることができます。
そして、症状が治まったとしても、できるだけ早く動物病院へ連れて行きましょう。犬の夏の散歩で気になる熱中症、熱中症の応急処置方法、やけどについて詳しくは「熱中症・やけど対策|犬の夏の散歩に適した時間はいつ?」をご覧ください。
夏バテは何も対処せずに様子をみていると、さらに症状が悪化することがあります。「水分」「温度」「食事」に気をつけ、適切な対処を行ってください。
十分な水分補給
夏バテに限らず、健康管理という観点からも大切な「水分補給」ですが、暑くてパンティングが多くなると、体の中の水分が多く消費されます。いつでも新鮮な水を飲めるように準備してあげましょう。愛犬に留守番をさせる時は水を入れた容器を複数用意するとよいでしょう。散歩に行く時もペットボトルなどに十分な量を用意しましょう。
夏場の温度管理
犬にとって過ごしやすい温度は犬種や毛の生え方で異なります。
・毛が密に生えているダブルコートの犬種:19~23℃
※日本犬、ダックスフンド、ポメラニアン、コーギー、チワワ、パピヨンなど
・寒さに弱いシングルコートの犬種:22~25℃
※トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、フレンチブルドッグ、マルチーズなど
室内はエアコンで適温を保ちましょう。ただし、個体差がありますので愛犬が寒がったり、暑がったりしていないか観察し、それぞれに合った温度調整を行ってください。
また、ブラッシングもこまめにしてあげましょう。ブラッシングで抜け毛や毛玉を取ってあげると通気性がよくなります。
食事の工夫
愛犬の食欲がない場合、ドライフードをお湯でふやかして食べやすくしたり、嗜好性をあげるために、ささみの煮汁や犬用のふりかけを加えるなど工夫をしてあげましょう。ただし、塩分が多い食べ物、人間用の味の濃い食べ物は控えてください。
食欲は落ちているが、十分に水を飲んで元気な場合は、1~2日なら様子を見てもよいでしょう。ただし、食欲が戻らない場合は動物病院へ連れて行きましょう。さらに、元気がない、水を飲まない、下痢や嘔吐があるといった場合は、脱水症や他の病気の可能性もあるので、この場合も早めに動物病院へ連れていくとよいでしょう。
夏バテで元気がないと思っていたら、実は貧血だったということがあります。貧血になると体内に酸素が行き渡らなくなり、食欲が落ちたり、元気がなくなったり、疲れやすくなることがあります。また、舌や歯肉が白っぽくなる、手足が冷たいという症状がみられることもあります。貧血の原因は、栄養不良や出血など原因は様々ですが、「ノミ」の寄生によるものも考えられます。多数のノミに寄生されると貧血を引き起こすことがあります。まだ体の小さい子犬は特に注意が必要です。重度の貧血は命にかかわる場合があるので、動物病院へ連れて行きましょう。
また、ノミが潜んでいる草むらなどは避けて散歩をするなど、夏は散歩コースも見直しましょう。
体の機能が未発達な子犬や、体力や内臓機能が衰えている老犬は、成犬より夏バテしやすいため十分なケアが必要です。特に注意したい点は次のとおりです。
【子犬の場合】
・温度管理
子犬の体温は成犬よりやや高めで、体温調整をうまくできないので、エアコンをまずは24℃程度に設定して、寒がっていないか、暑がっていないか様子をみて調整しましょう。また、ケージやサークルを窓際などの直接日光が当たる場所には置かないようにしましょう。
・水分補給
子犬はまだ抵抗力が弱いので、容器に入れた水は1日に数回取り替え、容器も清潔にしておきましょう。いたずらをして手足を突っ込んでしまうこともあるので、容器はあまり大きくなく、底面の広い倒れにくいものを選びましょう。
【老犬の場合】
・水分補給
老犬になると体の水分量が減ってきます。また、筋力の低下などによって水を飲みに行くことを億劫がる場合もあります。口の近くまで水の入った容器を持っていくなど飼い主さんが意識して、水分補給をさせましょう。
・食事の工夫
実は、成犬よりも老犬の方が多くのタンパク質を必要とします。
血や骨、筋肉、皮膚、被毛はタンパク質から作られており、さらに消化吸収や免疫維持にも必要な栄養素です。成犬と同じ量のたんぱく質を摂取しても吸収される量が少なく、そして足りなくなったタンパク質は、自らの筋肉から補おうとするため筋力が低下します。良質なタンパク質を含んだ食事を用意してあげましょう。
・散歩の時間
夏の屋外は老犬にとってつらい環境です。だからといって散歩に出かけなければ、運動不足により体力の衰えや、基礎代謝が低下します。さらに、基礎代謝が低下すると免疫力の低下にもつながりかねません。散歩は、気温の低い早朝や夜といった時間帯を選び、無理のない距離を設定しましょう。
犬の夏バテは徐々に体力が低下していくので、気がついた時には重い症状になっていることもあります。犬は自分で暑さ対策を行うことが苦手なため、飼い主さんが水分補給や温度管理、食事の与え方などを工夫するとよいでしょう。それでも愛犬の食欲や元気が減少した場合には、動物病院へ相談しましょう。
また、心臓病などの全身に負荷がかかりやすい疾患があったり、肥満気味な犬にとって暑さは天敵です。日頃の健康管理を心がけ、愛犬と一緒に夏の暑さを乗り切っていきましょう。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。