2020/08/27
猫は肉食動物ですが“猫草”など植物も好んで食べます。しかし、なかには誤って食べると嘔吐、下痢、呼吸困難などの中毒症状を引き起こし、場合によっては命を落としてしまう猫にとって危険な植物も存在します。自宅で何気なく飾っている観葉植物や花を愛猫が食べてしまう、揺れる葉にじゃれついて、誤って飲み込んでしまうこともあります。
今回は猫にとって危険な植物と安全な植物の紹介、治療法に加え、猫と飼い主さんが安心して過ごせる観葉植物の飾り方をご紹介します。
猫が食べたり、樹液に触れたりするだけで有害な植物があります。また、毒性はなくてもサボテンのようにトゲのある植物で怪我をしてしまうなど、注意が必要な植物もあります。一般的にご家庭に飾られることのある植物で猫にとって注意が必要なものをいくつか紹介します。
ユリ科の植物は花が大きく甘い香りがして華やかですが、実は猫にはとっては猛毒となる植物です。鉢植えで自宅に飾られている方もいらっしゃいますが、水差しにユリを活けている場合は、その水にも注意が必要です。量にもよりますが、摂取すると腎臓への毒性から急性腎障害を引き起こし、死に至る場合があります。花、花弁、花粉、葉、茎などどの部位でも少量摂取しただけで危険です。決して猫のまわりにユリ科の植物は置かないようにしましょう。
ユリ中毒を引き起こす植物:ユリ科植物(カサブランカ、テッポウユリ、チューリップ、ローズリリー、ヒヤシンス等)、ススキノ科(キスゲ等)
サトイモ科の植物は大きく肉厚な緑の葉が綺麗なため、観葉植物として人気があります。しかし、葉や根茎にはシュウ酸カルシウムが結晶状態で多く含まれているため、猫が食べると口腔内にチクチクと刺さり炎症や疼痛を引き起こし、嘔吐することがあります。猫がいる室内には置かないようにしましょう。
サトイモ科の植物:ポトス、カラジューム、ディフェンバキア、モンステラ
こちらも人気の高い観葉植物ですが、葉に強い毒性があり、口にすると嘔吐、下痢、手足の腫れ、麻痺などを引き起こすことがあり、死に至る場合もあります。
アロエをはじめとした多肉植物も有害な部類に含まれます。アロエの皮や葉にバーバロインという成分が含まれ、口にしてしまうと下痢や腎炎を引き起こす可能性があります。
また、多肉植物にはサボテンのようにトゲがある植物も多く、触れたり、口にすることで手足や口内、口周りを傷付けてしまうことがあります。
このほかにも、ヒガンバナ、アサガオ、アジサイ、菊、パンジー、ツツジ科、ナス科の花などには注意が必要です。
もし、愛猫が危険な観葉植物を口にしてしまった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。その症状と対処法について紹介します。
「猫にとって危険な植物とは?」でご紹介した植物以外にも、猫にとって危険な植物は多く、症状は摂取した植物によって様々ですが、代表的なものは嘔吐、下痢、ヨダレといった症状があり、知覚障害、中枢神経マヒ、反射低下、運動失調などを引き起こす植物もあります。
猫がいる環境に観葉植物を設置する場合、観葉植物の種類や毒性に十分配慮した上で、猫が観葉植物にどの程度の興味を示しているか観察して、なめたり、かじるような様子があれば、観葉植物の置場所を変えるか、愛猫の健康を考え、室内に置くことを諦めましょう。
まず、飼い主さんが有毒な植物の摂取にいち早く気づくこと、そして、下痢や嘔吐などの中毒症状が出る前に動物病院へ連れていき、治療することがもっとも重要です。毒性の強い観葉植物を摂取し、かつ吸収される前の段階(出来れば1時間以内)であれば胃洗浄を行います。ほかにも催吐剤により毒物を吐き出させたり、医療用活性炭投与で毒素を吸着させ、便と一緒に排出させる場合もあります。
なお、嘔吐や下痢などの症状が出ている場合には、毒物を体外に排出する目的もあるため、薬で止めてしまうのは危険です。胃腸の保護や炎症を抑える対症療法と補液による水和と脱水予防といった治療を行います。
そのほかにも、腎臓や肝臓など解毒のための臓器がダメージを受けていないか血液検査で確認をします。大切なことは、飼い主さんが慌てて自分自身で吐き出させようとせず、動物病院で適切な対処をしてもらうことです。
また、症状が出ていないので大丈夫だろうと思わず、摂取した観葉植物の種類や写真、摂取してからの経過時間、量をメモして、動物病院へ行きましょう。
猫が口にしても安全と言われている観葉植物でも猫がいたずらをしてしまうことがあるので、注意点と合わせてご紹介します。
猫草という名前の植物は存在せず、猫に害がなく、多くの猫が好んで口にする草を「猫草」と呼んでいます。ホームセンターなどに売っている猫草は、えん麦を使用していることが多いです。猫は胃の中に溜まった毛玉を吐きだすために先の細いチクチクとした草を食べ、胃の内部を刺激していると言われています。
ほかの観葉植物を食べてしまうことを防ぐためにも、愛猫が猫草を好んで食べる場合には、飼育環境に猫草を置いてあげましょう。
ブラジル原産の観葉植物で、育てやすく、サイズも豊富です。種は有毒ですが一般的に販売されているパキラは挿し木で栽培された鉢植えのため、花や種子ができることは滅多にありません。茎や葉には毒性がないので、安全性は高い植物です。幹が長かったり、太いと猫が爪とぎをに利用することがあります。
たくさんの小さい葉が特徴のシダ植物で、涼しげな見た目で毒性もないため、猫がいる部屋に飾ることが可能です。毒性はありませんが、鉢から飛び出した部分がゆらゆら揺れると、猫の興味をそそるので、いたずらには注意です。
日本でも自生しているネムノキの一種で、エバーグリーンとも呼ばれています。昼間は葉を広げ、夜になると葉を閉じるという性質を持っています。上記のアジアンタム同様に、猫が小さい葉を好むため、いたずらに注意しましょう。
アフリカ原産の多年草で、ボリュームのある葉が真っ直ぐ生え、スタイリッシュで人気の高い観葉植物です。猫に無害と言われていますが、先端が鋭く先細っているため、遊んでケガをしないよう注意が必要です。若いサンスベリアはかじりやすく繊維質なので、好んで口にする猫もいるようです。
アレカヤシ、テーブルヤシ等のヤシ科の植物で、管理も簡単で室内でもよく育つため、人気があります。葉が多く先端が尖っているため猫がじゃれてケガをしないよう注意しましょう。茎から1本抜いて先端の葉を数枚残せば、使い捨ての猫じゃらしにもなります。
猫にとって安全な植物を紹介しましたが、猫には個体差があるため、安全と言われている植物でも自宅に設置する際は猫の様子をよく観察して注意が必要です。
猫に害がない植物でも、じゃれて葉がボロボロになることや土を掘り返されることは避けたいですよね。観葉植物を守る方法をいくつかご紹介します。
観葉植物の土を掘り返されたり、鉢を倒されることに悩んでいる場合には、プランターカバーを取り付けることをおすすめします。カバーはホームセンターやインターネットでなどで購入できます。鉢より大きく、ある程度の重さがあるプランターカバーは観葉植物の鉢の安定性が増して倒れにくくなります。
また、土の上に被せる大きめなウッドチップ(インテリアバーク)なども愛猫による土の掘り返しの予防になります。
木酢液はいたずら対策をしたけれど、どうしても猫が植物で遊んでしまう、土を掘り返してしまうというときに使いましょう。猫は柑橘系や酢の匂いを嫌います。この習性を利用して、木酢液を植物に吹きかけると効果がある場合があります。木酢液は植物の病気や害虫予防に使用され、猫に害のない液体です。原液で販売されている場合が多いため、必ず説明書を読み適正な濃度に希釈して使用しましょう。
猫に無害とされている植物でも、倒してしまったり、登り始めたりと危険があります。観葉植物を猫が暮らす部屋に置く場合、必ず猫の安全を確保できる場所に置きましょう。
天井から観葉植物を吊るすなど猫が届かない位置に置きましょう。このとき、近くに棚や窓辺など足場があると飛び乗ろうとする危険があるので、家具の配置などもよく注意して設置してください。
窓から入ってくる風、エアコンや扇風機の風で葉が揺れると、猫はじゃれてしまいます。植物に日光をあてるため窓側に置くときには、窓が開いていないか注意しましょう。
多くの家で飾られている人気の観葉植物や花の中にも、猫にとって有害なものが数多く存在します。猫に無害だと言われている植物でも、個体差があるため、口にしてしまう場合は注意が必要です。猫がいる環境に植物を置く場合には、まず猫の安全の確保をするために種類や置き場所、転倒・いたずら防止策をしっかり練ってから飾るようにしてください。