2020/09/17
愛犬の口臭・歯の黄ばみが気になる。その原因は歯石や歯垢にあるかもしれません。歯石や歯垢が溜まることで起こる口内トラブル「歯周病」は悪化するとあごの骨や臓器にも影響を及ぼします。歯石のチェック方法、取り方、予防方法などを詳しくご紹介します。
知らない間に溜まってしまう歯石。いったいなぜ溜まってしまうのか、原因について解説します。
歯石とは
歯石とは、唾液中のカルシウムが歯垢に沈着して固くなったものです。歯石になった時点で、歯磨きで除去することは非常に困難です。
歯石の元となる歯垢(プラーク)は、口腔内の細菌が唾液中の糖蛋白に定着し、生成するネバついた成分(多糖類)のことです。口の中に食べカスが残っていると細菌は増殖しやすく、歯垢増加の原因となります。
犬の歯垢は3~5日で固い歯石になります。歯石の表面はザラザラしており、さらに歯垢がたまりやすくなっていくため、日々のデンタルケアが大切です。
愛犬の歯石・歯垢チェック
愛犬に次のような行動・症状がないか、チェックしてみましょう。
・口臭がある
・歯茎・歯肉が赤く腫れ、炎症を起こしている
・ヨダレで口の周りが濡れている
・ヨダレに血が混じっていることがある
・歯の表面に黄色や茶色の目立つ汚れがある
・歯やあごをガチガチ鳴らす
・脚で口や歯をこする仕草をする
・口を触られるのを嫌がる
・以前より硬いものを噛まなくなった
・フードを食べるときに顔が傾く
これは歯石や歯垢だけでなく、歯周病になっていないかの目安にもなります。愛犬に上記のような異変がみられる場合には、動物病院に連れて行き、相談するようにしましょう。
溜まった歯石は細菌の住み家となります。歯石を放っておくと、歯周病(歯肉炎、歯周炎、歯の動揺、歯槽骨炎など)になったり、口腔内以外の臓器(心臓や腎臓など)へも悪影響がでます。
歯周病とは、歯周組織に起きる炎症性の病気の総称です。「歯肉炎」になると歯と歯肉の間に炎症が起こり赤く腫れます。これが進行し「歯周炎」になると、歯を支える歯根膜や歯槽骨が破壊されます。さらに悪化すると歯根の先端(根尖部)に膿が溜まる「根尖周囲膿瘍」となります。
この状態のまま放置してしまうと、あごの骨が破壊されたり、膿の通り道である瘻管(ろうかん)ができてしまい、顔が腫れることがあります。皮膚に穴が開いて血混じりの膿が出てきたりする可能性もあります。
さらに、歯の周囲の血液にも細菌が混入し感染することもあり、細菌が体中に回ると、腎臓病、心臓病、肝臓病などのきっかけになるなど、歯周病は放置すると非常に恐ろしい病気です。
では、愛犬の歯に歯石がついてしまったとき、どのように取り除けばよいでしょうか。また、近年では「無麻酔歯石取り」をメニューに載せているトリミングサロンなどを目にしますが、動物病院での歯石除去との違いや、なぜ全身麻酔を使用するのかについてもご説明します。
動物病院で歯石を取るメリット
動物病院で歯石を取る場合、まずはレントゲン検査や血液検査をして歯周病がどのくらい進行しているかを調べたうえで、適切な歯石除去手術を行います。動物病院での歯石取りは、 全身麻酔をかけて実施するため、 歯周スポットの歯垢や歯石(この除去がもっとも重要)をしっかりと除去できることが可能となります。
なぜ、全身麻酔を使用するのか
上記で記載したように、歯石取りは歯周ポケットの歯垢や歯石の除去が重要です。非常に繊細な部分となるため、犬が少しでも動いてしまうと、歯茎を傷つけ、細菌感染を起こしてしまいます。無麻酔では歯周ポケット内の歯石までは除去できないため、見た目だけは綺麗になりますが、目に見えない場所に残った歯石によって細菌感染を続けていきます。気づいた頃には、歯を抜かなければならなくなっていたり、歯石取りより長時間の麻酔をかけて手術をしなければなりません。
「無麻酔」と聞くと、愛犬への体の負担を減らせると考える飼い主さんもいますが、正しい治療を行い、その後は自宅での日々のケアによって予防してあげることが、愛犬の負担が少なくなります。
ご自宅での愛犬の歯石除去
歯石を取るための「歯石取りペンチ」、「スケーラー」といった道具はインターネットなどで簡単に入手できますので、愛犬の歯石取りを飼い主さん自身でされているという方もいるのではないでしょうか。この場合も、無麻酔での歯石除去になるため、歯垢や歯石がしっかり取れない、愛犬に怪我をさせてしまうといったデメリットが大きいため、動物病院で施術してもらうことをおすすめします。
ここまで歯周病の恐ろしさや歯石の除去についてご紹介しましたが、もっとも大切なのは、歯石を作らないようにすることです。歯石の元となる歯垢を溜めないケアをしてあげましょう。
歯ブラシ
歯ブラシはデンタルケアのなかでもっとも効果的で、歯の隙間や奥歯もケアできますが、いきなり歯口の中に入れることはやめましょう。まず口の周りを触ることに慣れさせます。それができたら、次は歯茎など口の中を触ることに慣れさせ、それができたら歯を触っていくというように、段階を踏んで触れる範囲を広げていきます。歯ブラシを使用する際もまずは前歯や犬歯など、手前の歯から慣れさせましょう。
ケアをした後には必ず愛犬を褒めてあげることで、歯ブラシは怖いものじゃないと教えてあげることがポイントです。
犬の口・歯のサイズに合わせて設計された犬専用の歯ブラシがありますので、獣医師と相談して愛犬に合う歯ブラシを用意しましょう。
また、歯垢を分解する酵素(グルコースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ)や、ポリリン酸による歯石予防効果が期待される犬用歯磨き粉をつけて歯ブラシすると効果的です。
上手に歯磨きを行うコツについて詳しくは「犬も歯周病にかかる!主な症状・治療法と上手に歯磨きをするコツ」をご覧ください。
歯磨きシート
愛犬が口の中を触らせてくれるようになったら、同じように前歯からシート当て、やさしく磨いてあげましょう。愛犬がシートを誤飲しないよう、シートを指に巻きつけるようにして持ち、飼い主さんは指で愛犬の歯を磨く感覚でケアをしてあげましょう。
歯磨きガム、歯磨きトリーツ
おやつ感覚で歯磨きができるアイテムとして、歯磨きガムや歯磨きトリーツがあります。ポリリン酸や歯垢を分解する酵素の含まれていると効果的です。ほかにも、層構造の繊維によって歯磨き効果を与えるフードもあります。
注意点として、歯磨きガムやトリーツについて「固い素材を噛む事で」歯石除去効果を謳っているものもたくさんありますが、乾燥した牛皮や蹄、プラスチックや骨などは奥歯の摩耗や破折を引き起こし逆に歯を痛めることもあります。
酵素が含まれるガムやトリーツは短時間噛むだけでも歯石予防になりますが、少しでも長く噛ませたいときは、飼い主さんが歯磨きガムを手に持ち、左右の奥歯を交互に噛ませるようにしましょう。
また、愛犬の一日のカロリー摂取量を考え、歯磨きガムを与えたカロリー分のフードの量を調整しましょう。
口内トラブルは体全体の健康を損ねるだけでなく、食べる楽しみも奪ってしまいます。毎日の歯ブラシケアが大変な場合には、歯ブラシのほかにも、歯磨きシート、歯磨きガム、歯磨きトリーツなど順番を変えながら続けるようにしましょう。
愛犬が健康で長生きをするためにも、愛犬の口の中をチェックし、きれいな歯を保ってあげましょう。