2020/09/24
犬の健康診断ではどのような検査を行い、費用はどれくらいかかるのでしょうか。また、愛犬が何歳になったら健康診断を受けるべきなのでしょうか。検査内容から健康診断を受ける際の注意点まで詳しくご紹介します。
動物病院へ行くタイミングとして、「愛犬の具合が悪くなったら行く」と考えている飼い主さんは多いです。しかし、実際には愛犬が具合の悪いサインを出した時点で、すでに重症化しているケースが少なくありません。言葉で体調を伝えることができない犬だからこそ、元気なうちから定期的に健康診断を受けることが、病気の予防や早期発見へとつながります。また、病気を疑って検査を行った際に、元気な時に受けた検査結果と比較することができれば、より正確な診断ができます。
犬の健康診断について、主な検査内容とその検査結果から分かることなどをご紹介します。
問診
問診とは、愛犬の様子や近況などを飼い主さんから聞き取り、診断へとつながるヒントを見つける診察です。普段の様子はもちろん、気になることはできるだけ詳細に獣医師に伝えましょう。ご家族にしか見せない行動や、飼育環境の変化、いつごろからなど、動物病院だけでは分からない情報が重要となります。些細なことは忘れがちなので、メモをとったり、気になる行動は動画や写真で記録し残しておくと忘れずに獣医師に伝えられます。
視診・触診・聴診
獣医師が見る、聞く、触るなどの五感を生かし全身をチェックする診察です。聴診器を使って心雑音や気管のゼーゼーという音を聴いて心臓や呼吸器の疾患に気づくこともあれば、おなかを触ったときの感触で腫瘍が見つかることもあります。さらに、臭いからも病気が発覚することがあります。視診、聴診、聴診で見つかる病気は多く、ほかの検査同様にとても大切な検査です。
血液検査
血液を採取して行う検査です。血球の数や形、血液に含まれている酵素や蛋白質などを測定することで、各臓器や全身状態を把握します。
肝臓や腎臓の機能、脂質のバランス、糖の代謝、栄養状態などを各数値から評価します。
白血球や赤血球、血小板などに異常がないか調べ、病気への体の反応状況や貧血の有無などを評価します。
腫瘍マーカの測定やアレルギー検査、各種ホルモン濃度などを測定します。
細菌培養検査や、ウイルス性の伝染病、寄生虫感染を調べます。
各検査には基準値があり、そこから大きく外れていないか、他の値とのバランスがおかしくないかなど総合的に判断していきます。数値の出る検査のほかに、陽性か陰性かを調べる検査もあります。基準値から外れたからといって、必ずしも病気であるとは限りませんので、獣医師の意見を詳しく聞くようにしましょう。
尿検査・便検査
尿検査では、主に腎臓や膀胱、前立腺などに異常がないかを調べます。また、糖尿病やクッシング症候群、尿崩症などのホルモン疾患の発見にも役立ちます。尿は自宅で採尿して持参するか、動物病院に来院した際に採尿します。自宅で採尿した場合には、常温で2時間以内を目安に液体のまま(ペットシーツなどに吸った状態では検査不可)持参しましょう。
便検査では、異物や寄生虫の有無、腸内細菌のバランス、消化状況などを調べます。便を採取するときは、直に触らないようビニール袋などで間接的に取ったものを、清潔な容器に入れて持参しましょう。外で採取すると異物などが入りこんでしまうため、屋内で採取できればベストです。採取後は乾燥しないようにラップなどで密閉をして、常温のまま、採取した当日に提出しましょう。
この2つの検査は、動物病院によっては飼い主さん側で事前準備しておく必要がありますので、健康診断を申し込む際に、
1、健康診断の検査内容に尿検査・便検査が含まれているのか
2、持参する必要があるのか
3、採取用の容器は動物病院で用意されているか
などを確認するとよいでしょう。
レントゲン検査
レントゲン検査では、外から見えない骨や関節の異常、心臓や気管、肺、肝臓や腎臓などの臓器の位置や形、大きさなどを確認します。腫瘍の有無や、腎臓や膀胱に結石が見られないかなども分かります。正面や横からなど、向きを変えて撮影されることが多いです。
超音波検査
超音波検査では、臓器の形や大きさだけでなく、動きや血液の流れなども分かります。腫瘍の有無や位置の特定、レントゲンに映らない膀胱や腎臓の結石なども発見できます。確認したい部位に専用のゼリーを塗り、プローブと呼ばれる超音波を発する器具をあてて検査します。毛の多さや確認したい部位によっては、剃毛することもあります。
検査内容は病院によって違う
犬の健康診断には特定の決まりがなく、血液検査や尿・便検査のみのシンプルなものから、レントゲン検査や超音波検査などを含めた全身をくまなく検査できるコースなど、動物病院によって様々です。そのため、事前にどのような項目を検査してもらえるか動物病院に確認し、気になる検査があれば、獣医師に相談するとよいでしょう。
犬の健康診断の費用は、受ける検査によって異なり、数千円~数万円と幅があります。日本獣医師会の『平成27年度家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査』(73ページ)によると、健康診断(1日ドック)の料金は、1万4021円が中央値です。ただし、料金は受ける検査や動物病院で異なるため、詳しい料金は動物病院に問い合わせてみましょう。
子犬だから病気にはならないということはなく、まず子犬のうちに1回(先天的な異常や発育時の異常、子犬に起こりやすい病気の有無を調べるためにも)健康診断を受けておくのが望ましいです。初めての総合的な健康診断は、避妊・去勢手術前の生後6ヶ月齢が目安となります。
犬の年齢によって受診頻度の目安は異なります。子犬~中年齢ならば年に1回、7~10歳のシニア期は年に2回、11歳以上の老犬は年に2~3回が望ましいでしょう。特にシニア期以上になると、腫瘍、心疾患や腎・肝疾患、糖尿病、甲状腺疾患や副腎疾患などの病気が起こりやすくなりますので、年齢に合わせて検査内容を獣医師と相談して決めるとよいでしょう。
シニア期の健康診断について詳しくは「老犬(高齢犬)のケアの基本。健康診断でかかりやすい病気をチェック」もあわせてご覧ください。
犬の心臓病について詳しくは「愛犬が心臓病と診断されたら~心臓病の治療や生活とは~」をご覧ください。
愛犬の健康診断は、予約なく受診するよりも、事前に検査内容を確認したうえで予約しましょう。検査内容によっては数時間前からの飲食制限が必要な場合や、尿や便を事前に採取して持参する必要があるためです。また、忘れずに受けることができるよう、例えば、年に一回のワクチン接種のタイミング、春のフィラリアやノミ予防の時期、愛犬もしくは飼い主さんの誕生日など、覚えやすい時期に一緒に設定しておくのがおすすめです。
犬の寿命も伸び、健康面を気づかう飼い主さんも増えてきています。さらに動物病院で行える検査は増え、精度も上がり続けています。愛犬に健康で長生きをしてもらうためにも定期的な健康診断を心がけましょう。
愛犬がシニア期に近づいたら気をつけたい「腎臓病」「クッシング症候群」の記事もぜひご覧ください。
犬の腎臓病の記事はこちら
「犬の慢性腎臓病は早期発見が大切!獣医師に聞く症状や治療法」
犬の副腎疾患のひとつであるクッシング症候群の記事はこちら
「犬のクッシング症候群とは?愛犬が元気がないのは病気かも」