2015/06/29

犬がかかりやすい病気「外耳炎」の原因って?正しい予防と治療方法

2015/06/29

犬がかかりやすい病気「外耳炎」の原因って?正しい予防と治療方法

 犬が最もかかりやすい病気のひとつでもある外耳炎。
 実際にどのような治療がおこなわれるのか、三宅先生に詳しくうかがいました。

首が痒いだけと思ったら、外耳炎!?見落としがちな外耳炎のサイン

—電話相談では、外耳炎に関するものは多いですか?

 「しきりに首を掻いているんですけど」と言うように、外耳炎と気付かれないで相談される場合が多いですね。首のあたりを掻いたり、頭をぶんぶん振ったり、かゆみを訴えるようなしぐさが頻繁になってくると、異変に気づいて、ご相談の電話をくださる飼い主さまが多いです。

—外耳炎なのに耳ではなく、首を掻いたり、頭を振るんですか?それは意外ですね。

 犬は、ピンポイントに耳を掻くことができませんからね。痒いと思ったら後足をつかって掻くので、どうしても耳まで届かないことが多く、耳に異常があるようには見えないんです。

 実際、かかりつけ医を受診された際、ちょっと痒そうだったから連れて行っただけなのに外耳炎と診断されて、治すためには薬を飲まなきゃいけない、何回か通院しなくてはいけないとか、おそらく飼い主さまが想像していた以上に治療が必要で、びっくりされるんですよ。

—外耳炎にかかりやすい犬種というのはありますか?

 レトリーバー系、コッカー・スパニエル系など、耳が垂れている犬種が多いですね。湿気に弱い犬種は、梅雨時期に外耳炎を発症する場合もあります。あとは、フレンチブルドッグなど皮膚が弱い子もかかりやすいですね。

 また、トイプードルなど耳道に毛が生えている犬種だと、毛を抜く際に耳道を傷つけてしまい、外耳炎につながることもあります。

外耳炎にかかりやすい犬種

※当社調べ 「アクサダイレクトのペット保険」2014年保険金支払データより

—犬ならではの症状はありますか?

 ゴールデンレトリバーやラブラドールなど大型犬の場合、頭を振りすぎて耳の軟骨の毛細血管が切れ、耳介に血や漿液(しょうえき)がたまる耳血腫(じけつしゅ)を起こす犬もいます。耳血腫は、初期であれば漿液を抜けばいいのですが、ひどい場合は手術が必要になります。普段からの注意が必要です。

—なるほど。臭いやただれといった外耳炎の直接的な症状だけではなく、痒がるしぐさがきっかけで病気に気づくケースもあるんですね。

痒みを我慢できず、頭をブンブン振ってしまうと垂れている耳が思わぬ怪我をすることも。

痒みを我慢できず、頭をブンブン振ってしまうと垂れている耳が思わぬ怪我をすることも。

治療が長期化することも。侮れない外耳炎の治療あれこれ。

—外耳炎は主に投薬治療となりますが、薬代はどれくらいかかりますか?

 症状が軽い場合は、点耳薬を1本処方される程度で済みますが、症状が重い場合は処置代がかかります。耳の洗浄が必要な場合は通院回数にもよりますが、再診代とあわせてだいたい2,000円から3,000円ぐらいでしょうか。ただし通院が2カ月ぐらい続くと、内服薬が1日150円~200円かかる場合もあり、トータルで1万円を超え、飼い主さまの負担も大きくなります。

—初期症状で治療をはじめることができれば、犬・飼い主さま双方に負担がかからないのですね。処方薬に関する相談はありますか?

 抗生剤の場合、3~4週間は服薬することもあるので「そんなに長い期間飲ませて大丈夫ですか?」と聞かれますね。あとは、痒み止めのステロイド剤に対する不安も多いです。痒いのをガマンできず患部を掻きこわしてしまう子もいるので、痒みを抑え、症状を悪化させないためにもステロイド剤を使ったほうがいい場合もあります。

犬の治療。判断するのは飼い主さまです。

犬の治療。判断するのは飼い主さまです。

—処方薬については、飼い主さまのポリシーによってもご意見が分かれそうですね。

 そうですね。たとえば、外耳炎にかかってしまった原因が耳ダニの感染であれば、ダニを駆虫すれば症状は良くなるのですが、細菌・真菌感染の場合、完治するまで時間がかかったり、湿気が多い時期に再発してしまうことが多く、点耳薬だけでは痒みを抑えられず、犬自身にストレスがかかってしまいます。

 ここまで説明すると、大抵の飼い主さまは処方薬について、ご納得いただけますね。なので、治療法や処方薬について、改めて獣医さんと相談してみてはどうですか、とお伝えします。

—ペットクリニックでも処方薬に関する説明はあると思うのですが、それでも心配なのでしょうか?

 外耳炎と診断された時点で、処方薬の説明はされているはずですが、飼い主さまご自身が病名や治療にかかる時間などに対し、少なからず動揺しているケースもあるので、その場で冷静に理解するのは難しいのだと思います。

—だから、病院やクリニックで診断された後、冷静に考えてみたら気になってしまって、三宅先生のもとへご相談されるんですね。

 獣医師のことを「犬のプロ」と思っていらっしゃるでしょうから、獣医師を目の前にすると、ご自身が疑問に思ったことでも、その場で聞けず、「先生が言うなら…」と飲み込んでしまうのかもしれません。その点、電話相談だと、思ったことを気軽に言いやすいのでしょうね。

—外耳炎と診断された場合、注意点などはありますか?

 耳を触られることに敏感になっているので、トリミングをしてもらう時はトリマーさんに外耳炎であることを一言添えてあげるといいですね。もし知らずに耳を触ってしまうと、犬が身を守ろうとして急に噛んでしまう場合もあります。

 あとは、必要以上に耳掃除をしないことですね。日本人は耳掃除が好きなので、もしかしたらちょっとやり過ぎかもしれません。普段のお手入れは、ガーゼを巻いた指で軽く拭う程度で大丈夫ですよ。

犬の耳、日頃のお手入れはほどほどに…。

犬の耳、日頃のお手入れはほどほどに…。

飼い主さまへ。日頃からちょっとずつ、ペットの”しぐさチェック”を。

—外耳炎を予防するためにはどうしたら良いでしょうか?

 耳の匂いやしぐさなど健康時の様子を把握しておくだけで、ちょっとした変化がすぐにわかると思います。病気のサインを見逃してしまう飼い主さまは、どこか「ごはんさえ食べていればこの子は大丈夫」と思っているんです。だって、考えたくないですよね?自分の大切な子が病気かも、だなんて…。

 人間は自分の症状をきちんとお医者さんに伝えることができますが、犬のことになると、ちょっとわかりませんよね。保護者という立場で、日頃のしぐさをチェックしていただく癖をつけてもらいたいですね。

外耳炎ってこんな病気

●症状

 初期では、普段と違う匂いがします。首のあたりを頻繁に掻く、頭を強く振るなどで痒みを訴えることが多く、症状がひどくなると床に耳を擦り付けて痒みを訴えるケースもあります。さらに症状が悪化すると、耳を掻きこわし出血とただれで耳道が塞がってしまうことも。その場合は、治療に時間がかかり、手術が必要になることもあります。

●原因

 主な原因は、細菌、真菌、耳ダニ。その他に、アレルギーによる皮膚疾患、虫や種子などの異物混入、耳の中に腫瘍や出来物ができてそこから炎症を起こす場合もあります。

●治療方法

 軽度の症状であれば、直接耳に薬をたらす点耳薬で治る場合が多く、耳ダニであれば駆虫剤を使います。痒みや感染がひどい場合は、痒み止めや抗生剤などの内服薬や注射を使い、耳の洗浄のため通院が必要な場合もあります。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

たとえば、トイプードルの場合 月々1,290円 ※詳細はリンク先をご確認ください。普段の通院から、もしもの入院・手術までしっかり補償 保険料を調べてみる

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