2015/11/19
あなたの大切な家族であるわんちゃんやねこちゃんは、どのようにしてご家庭に迎えられましたか?
ペットショップ、知人からの譲渡、野外で弱っていたところを保護など、さまざまな迎え方があったことでしょう。
その中で、動物愛護団体などで保護された動物を里親希望のご家庭へ譲り渡す「譲渡会」という取り組みが、近年盛んになってきました。
そこで今回は、実際に東京都千代田区で開催された猫の譲渡会を取材し、譲渡会参加の流れから実際に里親になるまでの方法をうかがいました。
10月某日、千代田区役所。
まだ入場開始から数十分ほどしか経っていないのに、会場には多くの人が集まりました。里親になりたいという思いで、猫のいるケージを覗き込んだりスタッフさんと話したりしています。
参加した猫は20匹ほど。生後1ヶ月半の子猫から、どっしりと貫禄のあるシニア猫まで、個性豊かな面々が集いました。
譲渡会は、このように基本的に屋内で開催され、猫はケージに入っていますが実際に触れることもできます。
各ケージのそばにはスタッフさんがいらっしゃるので、「もっと近くで見たい」「抱っこしてみたい」と思ったら、気軽に声をかけてみましょう。
また、スタッフさんは、猫の性格や保護に至った経緯などを丁寧に教えてくれますので、会場では、里親希望者とスタッフさんの和やかな話し声が絶えず聞こえていたのも印象的でした。
ただ、大きな声を出したり、ケージの中に手を入れて猫を無理やり触ろうとすると、猫がビックリしてしまうので気をつけましょう。
譲渡会で「この子を引き取りたい!」と決められる方は、たくさんいらっしゃるそうです。
では、その場で猫を連れて帰ることができるのでしょうか?
実はそうではないのです。
「ちよだニャンとなる会」では、保護した猫と里親さまが末永く暮らすためのステップを設けています。
1.譲渡会ではたくさんの猫と触れ合って、相性を確かめて
2.引き取る猫を決めたら、スタッフさんと面談
3.事務手続き、譲渡前の検査を経て引き渡しへ
これらのステップ、具体的な内容を「ちよだニャンとなる会」代表の古川さまにお話をうかがいました。
――まず、譲渡会へ参加するためにはどうしたらよいのでしょうか?当日、直接会場へ訪れてもいいものですか?
譲渡会の主催団体によりますが、当会では、事前にお電話でお問い合わせいただくか、ホームページからお申し込みいただいています。
ホームページには里親になっていただくための条件を記載しておりますので、同意していただいたうえでお申込みいただくかたちですね。
――里親の条件は厳しそうですね…。
譲渡会に初めてご参加される方は、ひょっとしたらそう感じられるかもしれませんが、猫を飼っていらっしゃる方なら、当たり前のことだと思いますよ。
まずは、里親さまが責任を持ち、猫の健康管理も含め、一生大事にしてくれること。
そして、完全室内飼育が可能であること。こちらは、不注意で猫を逃がしてしまい、せっかく引き取っていただいた猫が野良猫に逆戻りしてしまうことを防ぐためなので、ご協力ください。
――他に条件はありますか?
そうですね、60歳以上のご高齢の方でも里親になっていただくことができますが、ご自身が病気などで猫と一緒に暮らしていくことが難しくなった場合、猫を一人ぼっちにさせないよう、ご親族のご協力を得られることはお約束していただきたいです。
今の時代、猫の寿命も長いですから、当会といたしましては、ご高齢で且つご自身の代で猫を看取りたいとご希望される里親さまには、幼い猫ではなく8歳以上のシニアの猫をおすすめしています。
もちろん、先ほど申し上げた通り、ご自身にもしものことがあっても、ご親族の方がいらっしゃるようであれば、子猫を迎えてくださっても問題ありません。
――ご高齢の里親さまにはシニア猫をおすすめされているとのことですが、他にも里親さまの家庭環境によっておすすめされている猫はいますか?
ご夫婦で共働きなど、ご自宅を留守にされているお時間が長いご家庭には、健康面が安定した生後6カ月以上の猫をおすすめいたします。
その場合、猫が寂しがってしまわないよう2匹セットでのお引き取りをおすすめすることもありますが、ご家庭の事情や猫の性格にもよりますので、強制はいたしません。
また、当会から引き渡す猫については、みんな避妊・去勢手術が済んでおります。
避妊・去勢手術については、各団体によってご意見があろうかと思いますが、当会では、不幸な野良猫を増やさないために取り組んでおります。
そのため、里親希望の方でも先住の猫がいらっしゃる場合は、その先住猫も避妊・去勢手術が済んでいらっしゃるかを事前に確認させていただきます。
――猫も家族だと思うと、一生大事にすることや脱走を避けること、先住猫との関係については厳しいものではなく、当たり前のことのように感じますね。
――引き取る子を決めたら、譲渡会当日にそのまま自宅へ連れて帰ることはできますか?
当日、そのままお引き渡しすることはほとんどありません。
会場内の相談コーナーで、先ほど申し上げたお約束についての確認をいたします。
具体的には、完全室内飼育ができるか、そして、ご家族構成、お引き取りいただいた後はかかりつけの病院を見つけていただくようお願いしております。
あとは、猫の飼育が初めての方であれば、飼育にあたり必要なグッズをアドバイスすることもございます。
そして、譲渡が決まった子の検査もございますので、その検査日も踏まえたうえで、お引き渡し日を調整いたします。
――譲渡会の日から引き渡しまで、どのくらいの時間がかかりますか?
だいたい1週間ほどでお引き渡しが可能です。
――引き渡しの際は、直接団体の事務所に向かえばよいですか?
団体スタッフが里親さまのご自宅まで直接連れて行きます。
そこで新しい環境への慣らし方やご飯の与え方、身体が弱い子の場合は日常生活での注意点などを丁寧に説明します。
お部屋の中に猫が簡単に外に出られるような場所がないかを実際に拝見し、逃げ出してしまうのを防ぐためのアドバイスもいたしますので、ご安心くださいね。
――なかなかご飯を食べてくれないなど、引き渡し後に何かトラブルがあった場合は相談しても大丈夫ですか?
もちろんです。その際はスタッフが電話やメール、場合によっては訪問して対応します。
団体によっては所属している獣医がアドバイスをくれるところもあります。
当会の場合、お引き渡し後のご連絡やご報告については特に義務化しておりませんが、中には近況報告というように猫のお写真を送ってくださる里親さまもいらっしゃいますよ。
特に、初めて猫を飼った里親さまは、猫がご自身に懐いてきたのが嬉しいそうで、たくさんのお写真を送ってくださいます。 我々スタッフとしても大変嬉しいですし、差し支えなければ、そのようなお写真は会報でもご紹介させていただいています。
実際、譲渡会にご参加された方々にお話をうかがいました。
初めて譲渡会に参加した女性(20代)
インターネットでこの譲渡会を見つけて参加しました。私は猫を飼うこと自体も、譲渡会への参加も初めてで、緊張していたのですが、スタッフの方が優しくてよかったです。
また、去勢・避妊のことからアフターケアまで丁寧に面倒を見てくれるので、私のように初めてペットを飼う人でも安心できると思いました。
過去に譲渡会で猫を迎えたことのある女性(50代)
譲渡会にはいろんな環境で育った子たちがいます。
その子たちを引き取って共に暮らすことは猫にとっても幸せですし、私も社会貢献ができていることを実感できます。譲渡会には、2匹目をお迎えしたいという理由で参加する人も多いですよ。
譲渡会は全国で開催されています。
もし、譲渡会に関してご興味がありましたら、まずはインターネットを利用して近くで行われている譲渡会を探してみましょう。
全国の譲渡会の開催情報を集めたポータルサイトも存在しています。こうしたサイトを利用すると、簡単に情報を集めることができます。
譲渡会で新たな家族に出会えるといいですね。
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動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。