2020/06/25
犬を飼っている以上、いつかは経験することになる愛犬の老化。老犬と呼ばれるシニア期に入る年齢は、7歳ぐらいからとなります。日頃から動物病院での健康診断や病気のチェックなどを行い、愛犬が年齢を重ねても、健康で元気に過ごせるようにしたいですね。
子犬編に引き続き、老犬を飼う上で気をつけておきたい病気や健康管理について、獣医師の三宅亜希先生に聞いてきました。
—犬がシニア期に入る年齢はだいたい7歳とお聞きしました。老化の兆候として、目に見える変化にはどんなものがありますか?
わかりやすい変化としては、瞳が白っぽくなる傾向があります。これを「核硬化症」と呼びます。他にも毛艶が悪くなってくることや、ヒゲが抜けたり、顔の毛が白っぽくなったりという変化は、見た目には分かりやすいです。
—犬が年齢を重ねたことで、かかりやすくなる病気にはどんなものがありますか?
年齢とともに各臓器が弱ってくることもあり、心疾患、肝疾患、腎疾患などは多く見られます。また、糖尿病やクッシング(副腎皮質機能亢進症)、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患や悪性腫瘍(ガン)も注意が必要です。
関節に痛みがでてくることも年齢を重ねたことによる変化として見られます。
—関節というと、ダックスフンドがヘルニアになりやすいとよく聞きますが、犬種ごとになりやすい病気はありますか?
ダックフンドやコーギーなどは軟骨異栄養犬種といって、遺伝的に手足が短く生まれますが、これらの犬種では椎間板の早期変性を起こしやすいため、若くしてヘルニアになりやすいことが知られています。
また、どの犬種においても年齢とともに関節の動きが悪くなったり痛みが生じたりすることはあり得ます。
年齢が7歳を過ぎたら、歩き方に不自然なところはないか、どこかを痛がる仕草はないかなどを注意して観察しましょう。
—年齢を重ねるごとに太りやすいということですが、ドッグフードは犬の年齢別に商品化されていますよね?そちらに合わせれば十分でしょうか?
そうですね。愛犬の年齢に合ったフードを与えるのが1番分かりやすいです。以前は年齢が7歳以上はすべてシニア期とされていましたが、最近では11歳以上専用のフードなども販売されているようです。
—犬も年齢が若い頃と比べて食欲が落ちることなどあるのでしょうか?
食欲については、若いころとあまり変わらないことが多いと思います。もし、年齢を重ねてから食欲がないという場合は、内臓などの病気によるものかもしれません。
気付いたら早めに動物病院に連れて行くことをおすすめします。
—人間だと年齢を重ねると、認知症など脳に関わる症状も気になりますが、犬も認知症の発症はあるのでしょうか?
犬の認知症は、洋犬よりも日本犬に発症することが多いとされています。
症状としては壁沿いにグルグルと歩き続ける、後ろ歩きや後ずさりが出来なくなるため、隙間に頭を突っ込んだら、そのまま挟まってしまうなど動作の不調も見られます。また、以前できていたことができなくなったり、夜鳴きをする犬もいます。
—ケガにも繋がりそうですね。治療はできないのでしょうか?
人間の認知症と同じように治療は難しいです。脳内物質の変化なので、サプリメントを与えたり、夜鳴きなどの症状には薬を処方して、愛犬が夜更かしせずに眠れるようにすることもあります。
年齢を重ねてからの夜鳴きは認知症の症状のひとつですが、どこかが痛くて鳴いている場合もあります。
認知症であることを飼い主さまが断定することは難しいので、いま挙げたような症状が見られたら、認知症以外にも疾患がないか調べてみたほうが良いでしょう。
—他にも年齢を重ねるとかかりやすくなるガンなどは、どういった症状が出たら疑えば良いでしょうか?
犬も様々な部位にガンができますので、皮膚など、分かりやすい部位であれば日頃のブラッシングなどで出来物に気づくことができます。
外から触って分かる出来物以外のガンに気がつくというのはなかなか難しいと思います。
愛犬の年齢が7歳を過ぎたら、できれば年に2回以上、少なくとも1回は健康診断して様々な病気の早期発見を目指したほうが良いですね。
—見た目で分からないところに病気が潜んでいると怖いですよね。
年に2回の健康診断というのは、人間からすると多すぎるように感じるかもしれませんが、人間と犬では歳をとるスピードが違います。
1年間で、人間の年齢で4~5歳も歳をとる犬からすれば、年に1回の健康診断でも5年に1度ということになりますからね。
病院や地域によって、健康診断の内容は違いますが、一般的な血液検査や、場合によってはレントゲンやエコーなどの画像による検査もしておいた方がいいかもしれません。
血液検査には「血球数計算」と「生化学検査」があります。
「血球数計算」では、貧血はないか、赤血球増多症はないか、血小板数は正常か、炎症・壊死・過敏症・ストレスはないか、白血球減少症はないか、などが分かります。
「生化学検査」では、各臓器の健康状態を把握することができます。
血液検査でどの項目まで確認するかにより、健康診断の料金は異なりますので、かかりつけの病院では一般的な健康診断をいくらで行えるのか聞いてみましょう。
—愛犬が年齢を重ねて老犬になり、若い頃と性格が変わってしまうということはありますか?
脳腫瘍ができると性格が大きく変わってしまうことがありますが、年齢を重ねただけで性格が変わることはあまりありません。
ただ、年齢が若い頃のときのようにはしゃいで遊んだりはしなくなることが多いでしょう。
また、視力や聴力が衰えてるとどうしても反応が鈍くなっているように感じることもあるでしょうし、突然触られたときにびっくりして、おびえたり唸ったりするといったことも考えられます。
そのような場合は、何度かそっと体に触れ、「今からなでるよ」「今から抱っこするよ」という合図を出してからしてあげるといいでしょう。
目が悪くなると、まずは暗い環境で見えづらくなりますので、昼は散歩に行くが夜は嫌がるといった行動で判明することが多いです。
—たまに、カートに乗せられてお散歩している犬を見ますが、ああいった形でのお散歩は犬にとって良いのでしょうか?
お外に出るのが好きな犬のためには、足が弱ってしまいお散歩が困難になってしまった場合、カートに乗せて連れて行ってあげるのは良いことです。
外の景色や空気に触れることで良い気分転換になるでしょうから。
年齢を重ねると、おとなしく過ごさせようとしてしまいがちなのですが、適度な刺激や緊張感は犬にとって大事ですよ。
—年齢を重ねておとなしくなったからと言って、気を遣ってそっとしておくよりも、若い頃と同じように接したほうが良いのですね。
犬の足腰のために床に滑りにくいシートを敷く、階段をスロープにする、首を下げるのが辛くなってくるため、高さのあるフード入れを使うなどの、設備を変えることはおすすめしますが、愛犬が年齢を重ねたからと言って、飼い主さまの態度まで変えてしまう必要はありません。
若い頃と同じように接したほうが良いですね。
—人間より早く年齢を重ねる犬のために、飼い主さまがしてあげられることはありますか?
やはり、年齢が若いうちからの健康診断の習慣、普段から触れ合って健康な状態を知っておくことで変化があったときに気づけるようにするということです。
どこが悪いか?と聞かれると分からないけれど、「どこかがおかしい」と感じた飼い主さまの勘が当たって、何かの疾病が発覚することは良くあります。
また、犬が年齢を重ねたときに、どこまで治療をしてあげられるか、どこまでお金をかけてあげられるかなどを早いうちに決めておくことも大事です。
—子犬の健康管理については、[子犬編]からご覧ください。
▼コチラの記事もCheck!▼
・犬がかかりやすい病気は犬種・年齢でちがう?ランキングから分析!
→犬の健康を襲う様々な病気。犬種や年齢などによってもかかりやすい病気は違うのだそう。飼っている犬のかかりやすい病気を知り、病気を未然に防ぎましょう。
→ペットが誤飲や誤食をしてしまった場合、自宅で対処しようとするのはとても危険。ペットの誤飲・誤食しやすい物や、未然に防ぐ方法を獣医さんに伺いました。
・ペット保険の保険料を決める要素|品種での制限は?高齢でも入れるの?[vol.4]
→大きく3つの要素から決まるペットの保険料。品種やペットの年齢などで変わる保険料の仕組みを、具体例をみながら確認しましょう。