2020/07/30

愛猫が高齢期を迎えたら気にしておきたい病気と生活環境

2020/07/30

愛猫が高齢期を迎えたら気にしておきたい病気と生活環境

 腎臓病や下部尿路疾患だけでなく、心疾患や悪性腫瘍など愛猫の老化にともない気になる病気は増えていきます。子猫編に続き、猫の年齢に合わせたケアや気をつけたい病気、ストレスを与えない環境作りについて獣医師の三宅亜希先生にうかがいました。

年齢を重ねると腎臓が悪くなるのは猫の宿命?

猫の病気で最も注意が必要なのはなんといっても腎臓病

猫の病気で最も注意が必要なのはなんといっても腎臓病

—年齢が若いうちから動物病院に慣らしておくことが大事とのことでしたが、猫の場合、シニアと呼ばれる年齢はいくつからでしょうか?

 大体7歳からシニアと考えて良いでしょう。7歳というと見た目は若い頃と大きな変化はありませんが、悪性腫瘍や慢性腎臓病なども増えますので注意が必要です。

—やはり、年齢を重ねても若い頃のままの生活習慣で過ごしていたりすると、腎臓に負担がかかりますか?

 急性の腎臓病は、腎臓に毒性のあるものを食べたり、尿路結石で排尿困難になったりすることで起こるため、防ぎようがあるのですが、慢性腎臓病は多くの猫が年齢を重ねるとともに罹患しますので、飼い主さまの飼育方法などに責任を感じる必要はないと思います。

—年齢を重ね腎臓が悪くなってしまうのは猫の宿命なんですね…。猫の腎臓が弱ってしまった時には、どんなケアが必要ですか?

 定期的な血液検査や尿検査で腎臓がどれくらい働けているかをモニタリングしていく必要があります。
そのうえで、腎臓の負担を和らげる薬や療法食などが選択されます。
慢性腎臓病があると脱水や食欲不振につながりますので、それらに対する治療も日常的に行います。

年齢を重ねた猫のためにできるケアは?

猫の体調の変化は分かりづらいもの…だからこそ、ささいなことも気にかけて

猫の体調の変化は分かりづらいもの…だからこそ、ささいなことも気にかけて

—年齢を重ねた猫の体調管理について、他に気をつけるべき点はありますか?

 年齢とともに腎臓以外の臓器も弱ってくることもありますので、心疾患、肝疾患などにも注意したいですね。
 また、糖尿病や甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患やもちろん悪性腫瘍も注意が必要です。あとは、関節に痛みがでてきたり、若い頃には上手に吐けていた毛玉が吐けなくなったりすることもあります。

—子猫編では猫の健康診断に来られる飼い主さまは少ないとお伺いしましたが、年齢を重ねた猫には、健康診断で検査したほうが良い項目はありますか?

 先ほど出てきた内分泌疾患である甲状腺機能亢進症はシニアの猫に多く見られますので、甲状腺ホルモンを測定する検査を追加すると良いと思います。
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンがたくさん出ることによって起こります。
甲状腺ホルモンは体を活動的にさせるホルモンなので、年齢の割にすごい食欲なのに太ることもなく、目もギラギラとして活力があるように見えるため、飼い主さまが病気だと気づかないことも多いです。

年齢を重ねた愛猫にとっては滑りやすいフローリングの床よりも、カーペットが理想的

年齢を重ねた愛猫にとっては滑りやすいフローリングの床よりも、カーペットが理想的

—元気そうに見えても病気だなんて、健康診断をしなければ気づかないですね。愛猫が年齢を重ねたら、年齢が若い頃よりも行動は落ち着くものですか?

 そうですね。猫は元からよく眠る生き物ですし、犬と違って一緒に散歩をすることも少ないので気付かれにくいのですが、年齢が若い頃よりは活動量が減ります。
以前はジャンプできていた場所でも落下してしまうケースもありますから、事故には注意しましょう。
また、硬くて滑るフローリングの床よりも、柔らかくすべりにくいカーペットの床が理想的です。

さらに、猫は新しい刺激にとても弱いので、飼い主が変わる、家に子供が増えることも大きなストレスとなります。

年齢を重ねた猫に新しい刺激はNG!

愛猫家の憧れである多頭飼いにも実は注意が必要です

愛猫家の憧れである多頭飼いにも実は注意が必要です

—新しい刺激というと、多頭飼いも含まれますか?年齢が若く活発な猫よりも、年齢を重ね落ち着いた猫の方が新しい猫を受け入れてくれそうなイメージがありますが…

 確かに若い猫よりも落ち着いて接してくれるかもしれませんが、ストレスは多くかかっていると思います。
飼い主さまが上手に少しずつ慣らしていける場合や、ひとりになりたいときに逃げられる居場所があればいいのですが、子猫が常にまとわり付いてくるような環境だと、ストレスが原因で体調を崩すこともあります。
一般的に単独を好む猫の特性から、小さいころから一緒に育った兄弟や親子でもないかぎりは多頭飼育は難しいと言われています。
先住猫、新入り猫、双方それぞれに専用の居場所を用意してあげることが理想的ですね。
そのような環境でない限りは新しく猫を迎えるのは避けた方がいいかもしれません。

また、引越しもストレスになります。
やむを得ない場合は新居に今まで使っていた猫用品を持っていく、レイアウトを似せるなど工夫してあげて下さい。

—年齢を重ねた猫のためには刺激を与えず、穏やかに暮らせるように配慮してあげるべきですね。

 そうですね。
穏やかに暮らせるためにも、定期的な健康診断を受けることや、「いつもと様子が違うな」と感じたときにすぐに相談できるかかりつけ病院を探しておくといいですね。

少しでも長く一緒に暮らすためには、やっぱり欠かせない動物病院での検診

少しでも長く一緒に暮らすためには、やっぱり欠かせない動物病院での検診

 そのため、ある程度年齢を重ね、平均寿命である16歳を越えたり近づいてきたら、心臓や腎臓は大丈夫かな?と常に気にかけて下さい。
何かあったらすぐに動物病院へ連れて行く、日頃から定期検診を受けるというのが、体調の変化を読み取りづらい猫の健康と長生きには重要です。

—愛猫の年齢が若い頃からの健康管理と、年齢を重ねてからの体調変化に気づいてあげることが愛猫といつまでも一緒に暮らすためのコツですね。

—子猫の健康管理については、[子猫編]からご覧ください。

 
猫が病院で暴れないようにするには?子猫から気をつけること【年齢別】

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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