2020/11/30
愛猫が下痢でつらそうな時に何をしてあげればよいのか分からず、困ったという飼い主さんもいるのではないでしょうか。猫の下痢にはいくつかの種類があり、その原因と対策をご紹介します。動物病院に連れて行くべき症状もありますので、ぜひ参考にしてください。
下痢とは、便の形が正常な便より柔らかく半固形状や液体状になることです。一日に何度も繰り返すこともあります。正常な便の目安はある程度の太さと長さがあり、持ち上げても崩れない程度の固さがあることです。持ち上げると崩れる便(軟便)や、水分量が多い便(泥状便、水様便)は下痢便と判断します。
ほかにも、形がしっかりしていても便の表面にゼリー状の粘液が付着している場合や、血が混じっている(血便)場合があります。
さらに、排便の回数が増える、いきんでいるのに排便が無い、便の臭いがいつもと違う、愛猫のおなかからゴロゴロやキュルキュルといった音が聞こえるなどの症状がみられることが多いです。
猫の下痢は一般的に多い症状のひとつで、「アクサダイレクトのペット保険」の保険金の請求が多い猫の病気ランキング第5位で、0歳の子猫においては下痢がランキング1位となっています。これから子猫を飼おうとしている、または現在子猫を飼われている飼い主さんは、いざ愛猫が下痢を起こしたときのためにも下痢の種類や原因、対処法を知っておくとよいでしょう。
愛猫の便の異常に気がつくためには、日ごろから便のチェックが欠かせません。猫の下痢便の形状にはどのようなものがあるのか把握しておくようにしましょう。
下痢の中でも水分の含有量がもっとも多く、液体状の便です。通常、便に含まれる水分の量は約60〜80%ほどですが、水様便は90%以上も含んでいます。水様便が出ている場合は感染症や、消化器の疾患で重症化している可能性が高いため、愛猫が水様便をしていたら、すぐに動物病院を受診した方がよいでしょう。
便に含まれる水分は80~90%ほどで、形は半固形から泥状です。
大腸や直腸に異常がある場合、正常便や軟便の表面にゼリー状の粘液が付着することがあります。便を出したいのに出せないような仕草(しぶり)も確認されることがあります。
血が混じる便のことで、赤い血(鮮血)のほかに、便の色が全体的に赤黒いタール状の場合も血便の疑いがあります。黒色便やメレナとも呼ばれます。
赤い血が見られる場合には、肛門に近い消化管(大腸~直腸あたり)からの出血が疑われます。黒色便(メレナ)の場合には、肛門から遠い上部消化管(口腔内~小腸あたり)での出血が疑われます。このような便が確認された場合、消化管内で出血を伴う緊急性の高い病気が疑われるため、できるだけ早めに動物病院に連れて行きましょう。
猫の血便について詳しくは「愛猫が血便を出したときの原因と対処法を獣医さんに聞きました」をご覧ください。
猫が下痢を引き起こす原因は様々ですが、ここでは主な原因を紹介します。
寄生虫、細菌、ウイルスなどの感染が原因となる下痢です。
寄生虫は、肉眼でも確認できる大きさの蠕虫類(ぜんちゅうるい)や、肉眼で確認できない小さな原虫類などが下痢を引き起こします。子猫では腸管の免疫が未発達なため、重症化することが多いです。定期的に動物病院で便検査を行い、感染が無いか確認をしましょう。特に、新しく子猫を迎えた時や家の外に出た愛猫が帰ってきた時などは、必ず確認しましょう。
細菌感染による下痢の場合は、主に腸内細菌のバランスが崩れる事で発生するタイプ(大腸菌、カンピロバクター、ウエルシュ菌の過剰など)と、食事に原因があって発生するタイプ(サルモネラ、腸管出血性大腸菌O-157など)があります。
予防としては、食事の栄養バランスを適正化、ストレスを軽減してあげるなど、腸内細菌のバランスが乱れないような環境を整えることです。また、生肉や不適切な処理のおやつ・フードを避けるようにしましょう。
ウイルス性の下痢は、主にパルボウイルス、コロナウイルス、レトロウイルス(猫エイズ、猫白血病)が原因で発生します。室内飼育により不特定多数の猫との接触を避け感染リスクを減らすことや、ワクチン接種によって予防対策をするようにしましょう。
猫のワクチンについて詳しくは「猫を感染症から守るワクチン接種。種類、費用、副作用のリスクは?」をご覧ください。
消化・吸収しにくい食物や、アレルギーなどが原因で下痢を起こす猫もいます。猫は肉食動物に分類されるため、タンパク質を多く必要とし、炭水化物の中に含まれる乳糖やショ糖、デンプンなどの消化や吸収が苦手です。過剰な摂取によって、下痢を引き起こしてしまうことがありますので、栄養バランスの良い食事をあげるようにしましょう。栄養バランスが偏ると腐敗臭や酸っぱい臭いなど、普段の便と比べてにおいが変わることがありますので注意しておきましょう。
食物アレルギーによる下痢では皮膚の痒みを伴う事が多く、下痢と同時に皮膚にポツポツと赤い湿疹ができる場合は、動物病院に相談しましょう。また必要に応じて、アレルギー物質を除去した食事に切り替えましょう。
ほかにも、毎日違う食事を与えることで腸内細菌のバランスが崩れてしまったり、消化しきれない量の食事や、冷えた食事を与えてしまうと下痢をする場合があります。
猫の食事について詳しくは「猫の餌って何がいいの?適切な食事の回数、選び方から与え方まで」をご覧ください。
猫は、稀に膵液などの消化酵素の分泌が乏しく栄養素の分解がうまく行えず、下痢をすることもあります(膵外分泌不全症)。体質に合った食事に変更し消化酵素を補うことで、下痢は収まります。
ビニールや布、ゴム製品などを好んでかじる猫は多いですが、誤って飲みこんでしまうと消化管を傷つけたり、腸の閉塞を起こすことがあり、下痢や嘔吐をします。
また、猫にとって有毒な食べ物(ネギ科の植物、ユリ科の植物、チョコレート、タバコ、生卵など)を摂取した場合も下痢を起こします。中には命に関わるものもありますので、誤飲・誤食が疑われる場合には、早急に動物病院に連れて行きましょう。
愛猫がいる環境には、飲み込んでしまいそうなものを置かないようにしてください。
猫はストレスに弱いため、生活環境には注意が必要です。室内温度の管理不足、衛生管理不足、騒音や臭いなど、些細なことでも猫にとってはストレスになっていることがあります。特に、引っ越しや模様替え、新しくペットが増えたなどの変化が起きた場合には、愛猫がストレスを感じて下痢をしていないか注意が必要です。可能な範囲で以前の環境に近づけ、落ち着くまで愛猫が隠れてすごせる場所を作ってあげるとよいでしょう。
ほかにも、腸以外の悪性腫瘍、腎障害、膵炎、肝障害、心臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症など消化管そのものに直接の原因がなくても下痢が起こることがあります。
下痢は、重篤な病気のサインとなっている場合もあるため、なかなか治らない下痢の場合は、動物病院で原因を調べ、適切な治療を受けるようにしましょう。
愛猫が下痢を起こしつらそうにしている姿は、飼い主さんにとってもつらいことでしょう。ここでは、飼い主さんだからこそできるチェック方法をご紹介します。
便の状態だけでなく、猫の様子も合わせて観察するようにしましょう。元気や食欲があるか、嘔吐などの症状がないか確認してください。便の状態については臭いや形状、色に変化がないか、排便回数が増えていないか、異物が含まれていないかを確認します。日ごろから愛猫の便を確認しておくと下痢になったときに素早く対応できます。
多頭飼育の場合でも、便の形や大きさには個体差がありますので、観察し続けることでどの猫の便なのか意外と区別することができるようになります。
また、便の異常を発見し動物病院に行く場合には、便を持参するようにしましょう。当日便を採取し、常温で密封しておきます。水様便など持参が難しい場合は、写真を撮って獣医師に見せるようにしましょう。
どの程度の下痢で動物病院に行けばよいのか悩む飼い主さんもいるでしょう。猫は、自身のテリトリーの外へ出ることが苦手であるため下痢をしても、元気で食欲もあり1~2日程度で収まるようでしたら自宅で様子を見たり、電話で獣医師に相談をしてみてもいいかもしれません。ただし、下痢が3日以上続く場合や何度も下痢を繰り返す、元気や食欲がない、嘔吐などの症状を伴う場合には緊急性の高い疾患の可能性もあるので、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
また異物や毒物の摂取、子猫や老猫の下痢、トマトジュースの様な血下痢、激しい嘔吐を伴うなどの場合は緊急性の高い疾患または重症化していることが多いため、早急に受診してください。
下痢をするとお尻の周りが汚れたり、汚れで毛が固まってしまうので、放っておくと皮膚が炎症を起こすこともあります。ぬるま湯で湿らせたタオルなどで優しく拭きとってあげましょう。
愛猫のちょっとした変化に気がついてあげられるのは飼い主さんだけです。日ごろから愛猫の体調、食欲、排便の状態などに気を配り、長く一緒に暮らしましょう。