2022/07/14
世界でもっとも小さな犬種であるチワワは、その小さな体とうるうるとした瞳が特徴的で、日本でも人気の犬種です。今回はチワワの歴史や性格から、特徴や飼い方、注意すべき病気やケガなどもご紹介します。これからチワワを飼おうと検討している、現在チワワを飼っている方はぜひ、参考にしてみてください。
まずは、チワワという犬種の歴史や体の特徴、寿命などを見ていきましょう。
チワワは、古代のメキシコ中央部に生息していた「テチチ」という小型犬を祖先とする説が有力ですが、起源についてはっきりとは分かっていません。テチチは家畜として飼われており、食用や儀式が行われる際には生贄として神に捧げられとされています。
16世紀頃、テチチは一度絶滅の危機に瀕しましたが、19世紀にメキシコの「チワワ」という町で生き残っていた数匹が発見され、アメリカにもち込まれた後、現在の「チワワ」と呼ばれている犬種が生まれました。
チワワの体重は約1.5kg〜3kgほどで、体高は約15〜23cmと、とても小さい犬種です。被毛は、毛の短いスムースコートと毛の長いロングコートの2種類です。元々はスムースコートでしたが、アメリカに持ち込まれ、ロングコートのチワワが生れました。毛色はホワイト、ブラック、レッド、チョコなど、カラーバリエーションが豊富です。ほかにもタンマーキングと呼ばれる、目の上に眉毛があるような毛色も人気です。
小型犬の寿命はおおむね12〜15年程ですが、チワワの寿命は12〜20歳程度と言われており、長生きする傾向にあります。
チワワは警戒心が強く、初対面の人に対しては、すぐになつかないと言われています。しかし、自分の飼い主だと認めた人へは献身的で、高い忠誠心と深い愛情を示してくれます。
勇敢で賢く好奇心旺盛ですが、その警戒心の強さから、人やほかの犬に対して吠えることがあるため「性格がきつい」と誤解されることがあるようです。チワワが人に慣れてくれるまでは、急に抱きあげたり、触ったりといったことは控え、警戒心がなくなるまで見守りましょう。優しく話しかけたりしてあげることで、警戒心が徐々に和らいでいきます。
オスはとてもやんちゃでリーダー意識も強く、時には大型犬にも立ち向かう勇敢さを備えています。飼い主さんや家族に対しては、とても甘えてくれます。
メスはオスに比べて、穏やかな性格です。飼い主さんに対しては基本的に従順で献身的ですが、元々の警戒心の強さからヒート(生理)期間中は攻撃的になることもあるようです。また、年を重ねるにつれて独立心が芽生え、飼い主さんの愛情表現が強すぎると、ストレスになることもありますので、過度なスキンシップは注意です。
上記のようなチワワの特徴から、ほかの犬に吠えたり、見知らぬ人を威嚇することがあります。また、甘やかしてしまうと飼い主さんに対しても要求行動をとるようになりますので、小さいうちからしっかりしつけ、社会性を育てましょう。
飼い主さんとの信頼関係を築くトレーニングが最も重要です。特にチワワは、1人の飼い主さんだけになつく傾向があります。ほめる、しかるタイミングやしかり方について、家族でルールを設け、同じ行動をしてもあの人は怒るけれど、この人は怒らないと混乱させないようにしましょう。
人と同じく、犬も小さな頃から犬同士での交流をとることで社会性が身に付きます。チワワは神経質な犬種ですが、子犬の頃から交流をさせることで柔軟な社会性を育てることができます。例えば、日々の散歩中にほかの犬と触れ合わせてみたり、たまにはドッグランなどへ出かけ、様々な犬たちと一緒に遊ばせてあげましょう。
ここからは、チワワの飼い主さんに適している方の特徴をご紹介します。もし、自分は向いていないと思っても、チワワを飼うために努力できる方であれば、何も問題はありません。
小さくてかわいいため、チワワをついつい甘やかしてしまう方は実際に多いようです。しかし、愛犬のためにきちんとしつけをできる方が、チワワの飼い主さんには向いています。ただし、怖がりのチワワには、怒鳴ったり、たたいたりすることは絶対にNGです。あくまでも「悪いことをしたから、冷静にこれは悪いことだと教えてあげる」という姿勢を保つことが重要です。
愛犬のしつけ方法については「大切な愛犬のしつけ。トイレ、散歩などのしつけを学ぼう。」を参考にしてみてください。
チワワは小型犬ですが、意外にも一日に発散すべき運動量が多い犬種です。室内運動だけではなく、毎日の散歩ができると理想的です。そのため、運動好きで、時間もしっかり作れる飼い主さんは向いているでしょう。室内ばかりで過ごしてしまうと心身ともにストレスを抱え、問題行動を起こす原因にもなります。
先述のように、メスのチワワは独立心が強いので、飼い主さんが構いすぎることでストレスをためてしまうため、チワワの様子を見ながら適度な距離感を保って接することができる方が好ましいでしょう。
チワワを飼う際には気をつけておきたい、チワワのかかりやすい病気やケガをご紹介します。
・骨折
骨の細いチワワは、少しの衝撃で骨折してしまうことがあります。子犬ははしゃぎやすいので、特に注意が必要です。階段の上り下り、ソファからのジャンプといった日常でよくみられる行動でも、骨折の原因となりますので、自宅の中に危険な場所がないか確認し、近づけないようにしたり、ペット用の階段を取り付けるなど、適切な対応をしましょう。
・膝蓋骨脱臼
膝蓋骨(膝の皿)が外れてしまう疾患です。地面に足をつかないように歩いたり、曲げにくそうにするので、普段の生活やお散歩中に、いつもと違う歩き方や動きがみられるようでしたら、動物病院で脱臼していないか確認してもらいましょう。
・胃腸炎
感染症、異物の誤飲・誤食、ストレスなど、原因は様々です。下痢嘔吐、よだれを垂らすなどの症状には注意しましょう。特に、誤飲・誤食が疑われる場合は、緊急性が高いことがありますので、動物病院へ連れて行きましょう。
・水頭症
頭蓋内の脳脊髄液が異常に増えて、脳室に溜まり脳が圧迫を受けると症状が出る病気です。先天的(生まれつき)であることが多いとされますが、外傷や腫瘍などによって後天的に発症する場合もあり、歩き方がおかしい、ふらつく、発作などの症状が出ます。突然攻撃的になるなど、行動の変化が出ることもあります。目立った症状が出ないこともありますが、病状によっては精密検査が必要な場合もありますので、疑わしい場合には動物病院で相談するようにしましょう。
・気管虚脱
何らかの原因で気管を支える軟骨が歪んだり、押しつぶされたような形になる病気です。ガーガーと苦しそうな呼吸や咳が特徴で、ひどい場合には呼吸困難になることがあります。自然治癒することはなく、明確な原因がわからない病気のため、定期的な健康診断と悪化させないための予防対策がとても大切です。
・僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁は、心臓内での血液の逆流を防ぐ役割があります。僧帽弁閉鎖不全症とは、この僧帽弁がうまく閉じずに、心臓が血液を全身に送り出そうとしても、血液が逆流してしまい、結果として血液循環がうまくいかなくなる病気です。軽度のうちは、疲れやすくなったり、よく眠るようになりますが、進行するにつれ、咳や、チアノーゼ(舌が紫色っぽくなる)、肺水腫(肺に液体が溜まる病気)、呼吸困難などの症状を引き起こすようになります。
チワワの「アクサダイレクトのペット保険」への保険金の請求件数が多かった病気ランキング(2019年7月~2020年6月対象)では、胆嚢内に溜まっている胆汁が泥状になる「胆泥」に加え、憎帽弁閉鎖不全症や気管虚脱が上位でした。
これらの病気はある日突然起こるわけではありません。早期発見のため日々の健康チェックや定期的な健康診断を心がけてください。
チワワは、勇敢かつ繊細、そして甘えん坊な性格をしています。チワワと一緒に暮らすには、特徴や性格をきちんと理解して、しっかりとしつけることが大事です。
また年齢ごとに、特定の病気やケガのリスクが高まります。日頃からこまめに様子をチェックしてあげましょう。若いうちから定期的な健康診断をしておくと安心です。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。