2020/12/17
犬も便秘になることがあり、その原因は生活環境の変化や、病気が原因となるものなど様々です。放置すると命に関わる場合もあります。便秘の見極め方から便秘を起しやすくなる生活環境や日常生活の中でできる食事、運動、マッサージなどの予防方法などをご紹介します。
犬は1日に何回くらい排便をするのが正常なのでしょうか。便秘の判断基準や、便秘の症状についてご紹介します。
犬の排便回数は、食事の食物繊維の量、体格、年齢、生活環境、運動量などにより差があり、明確な排便回数の基準はありません。おおよそ1日2〜5回程度を目安にすると良いでしょう。ちなみに食物繊維の量が多くなると便も大きくなり排便回数は増えます。
また、適度な運動は腸の働きを活発にしますので排便回数は増えますが、過度な運動や運動不足は逆に腸の運動を抑え排便回数が減ります。
犬の排便回数に明確な基準はありませんが、便秘の際に現れるいくつかの兆候はあります。排便回数が普段と比べて減っていないか、いきんでいる時間が多くないか、便が異常に固くなり水分の無いパサついた状態になっていないか、などを飼い主さんが日常的に観察することで、便秘の兆候を確認できます。排便が数日無い状態や上記の症状がみられる場合には、便秘の可能性があります。
便秘のタイプには大きく2つあります。
① 腸に構造的な異常があり、便の通過障害が起こるタイプ(器質性便秘)
便を出したいのに出せないので、いきみや激しい腹痛、ふるえ、嘔吐、しぶりや残便感などがみられます。原因によっては血便やゼリー状の便が出ることもあります。
② 腸の働きに問題が起こり、便をうまく出せないタイプ(機能性便秘)
この症状は腸の働きがどこで弱まっているかにより、排便回数や量が減る、いきみやしぶり、残便感があるなど症状が異なります。
便秘が放置され大腸が伸びきった状態(巨大結腸症)になると体重の減少や脱水、食欲不振などが起こります。
また、大腸内で細菌により発生する毒素を体内に過剰に吸収してしまうと、衰弱して死亡することもあります。
便秘を起こす原因としてよく挙げられる病気に、会陰ヘルニアや大腸の腫瘍、甲状腺機能低下症などがあります。これらの好発犬種は、ウェルシュ・コーギー、ミニチュア・ダックスフンド、ボストン・テリア、トイ・プードル、シェットランド・シープドック、コリー、ジャーマン・シェパード、ミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエル系、シベリアン・ハスキー、柴犬、ゴールデン・レトリーバーなどです。
日常の管理で治すことのできる便秘から難治性の便秘までを含めて、犬が便秘を起す主な原因についてご紹介します。どのタイプの便秘に注意をするべきか確認してみましょう。
栄養バランスの乱れから便秘になる場合があり、特に食物繊維の量は便秘に関与します。食物繊維は毎日適量摂取することで便の腸内通過時間を適度に保つ役割を持っています。食物繊維には不溶性と可溶性があり、不溶性繊維を過剰に摂取しすぎると便が大きくなりすぎたり、固くなりすぎたりと排便がしづらい状態になります。例えば、体重管理用や歯石予防用など食物繊維の量を多くしたフード、野菜や穀類、イモ類などを食べて便秘の症状がある場合には、獣医師に相談をして食事内容を見直すとよいでしょう。
また、水分不足も便秘につながります。寒い時期は水分の摂取量が減りますので、室内温度に注意をしたり、水分量の多い食事にしたりと工夫をしてあげるとよいでしょう。
愛犬の生活環境が便秘の原因になる場合があります。例えば、トイレの汚れや場所の変更したことによるトイレを我慢してしまい便秘になる、引っ越しや新しいペットを迎える、一緒に過ごす家族が増えたり、減ったりといった変化などで、愛犬が緊張状態になり排便回数が減ると、便秘になることもあります。
また、運動不足も腸の動きが鈍り便秘を引き起こします。散歩時に排便排尿をする犬の場合、散歩のリズムや回数が変化すると、うまく排便のタイミングが取れずに便秘になることもあります。このような便秘が起きた場合はもとの生活環境にできるだけ近づけるようにしてあげるとよいでしょう。
犬は排便痛があると便を我慢することがあります。肛門周りの炎症、肛門にできた腫瘍、飲み込んだ異物が直腸〜肛門に詰まっているなど、排便痛の原因は様々です。また、排便痛以外にも、足腰に痛みがあり排便姿勢をうまくとれず、排便ができないため便秘になることがあります。
もし、トイレ周辺で困った仕草をしたり、少量ずつ便を出したり、排便時にキャンと鳴くなどの場合は、肛門周辺に異変がみられなくても動物病院に連れて行きましょう。
なかなか治らず繰り返す便秘には重大な病気が隠れている場合が多いです。例えば、異物による腸閉塞、会陰ヘルニア(肛門の横がお餅のように腫れてきます)、直腸の腫瘍、腰の神経の損傷によって便意を感じない、腸の機能低下を起すホルモン疾患(甲状腺機能低下症、上皮小体機能亢進症)などです。命に関わることもありますので動物病院に連れて行きましょう。
愛犬の便秘を予防するためには、飼い主さんの役割は大切です。便秘予防に効果的な方法を学んで、しっかりとケアしてあげましょう。
食事のバランスを整えることで便秘の予防になります。適度に食物繊維を含んだ食生活を心掛けましょう。特に可溶性繊維は犬にとって重要で便をしっとりさせてくれるだけでなく、腸内細菌の善玉菌の増殖を促します。腸内の細菌バランスを改善すると、腸内の有毒物質の生産を減らし、便秘を予防してくれます。
適度な運動は腸の動きを活発にしてくれるだけでなく、運動によりストレスが軽減されることで腸の機能をコントロールしている自律神経のバランスが整い、便秘の予防になるでしょう。
小型犬に必要な散歩の回数や距離について詳しくは、「【獣医師監修】小型犬に散歩は必要?適切な回数や距離、注意点を解説」をご覧ください。
へその周りには便秘解消のツボがあります。愛犬が嫌がらない程度に、へその周りをゆっくりと押して刺激し、「の」の字を描くように優しくお腹をさすってあげましょう。
愛犬へのマッサージについては「心も体も癒やされる!愛犬へのマッサージで健康&愛情確認」も参考にしてみてください。
愛犬に排便が無くても、まったく症状が無く気にする素振りが無ければ、2日程度は様子をみてもよいでしょう。ただし、2日以上排便をせず、症状(いきみや激しい腹痛、ふるえ、嘔吐、しぶりや残便感など)がある場合には、早めに動物病院に連れて行きましょう。
犬の排便回数に明確な基準はないため、日頃から飼い主さんが愛犬の排便状態をチェックしておくことが重要です。できれば手帳などに日々の排便時刻や回数を書き留めておくとよいでしょう。運動不足の解消や食事内容の改善、ストレッチやマッサージなど、飼い主さんとの触れ合いのなかで愛犬の便秘は十分予防できます。