2016/05/31
犬の誤飲・誤食はよく挙げられる事故ですが、病院に連れて行くべきか判断に迷うところ。そこで、犬の誤飲・誤食はどの段階で病院に連れて行くべきなのか、誤飲・誤食しやすい物や誤飲・誤食を防ぐ方法まで獣医さんに聞きました。
—散歩時に砂や石ころを食べてしまうなど誤飲・誤食があった時、犬がけろっとしていたら様子を見ていて大丈夫ですか?
中毒を起こすような物質ではなく、さらにつまる恐れのない小さな物であれば、便と一緒に排泄されるのを待つこともできます。
しかし、ある程度の大きさのものは消化管の通過障害を起こす危険があります。
通常、食べ物は胃内に2~3時間ほどは残っているため、誤飲・誤食から数時間以内であれば、受診して内視鏡などで取り出してもらうことができるでしょう。場合によっては、催吐させることもあります。
—病院で吐かせるのであれば、家でも吐かせることはできそうな気がします。ネットでは逆さまにして吐かせるとか、背中を強く叩くといった方法を見かけたのですが。
そうですね。喉で詰まった場合などは背中を叩くなどで吐き出してくれることもあるかもしれませんが、胃内に入ったものを嘔吐させるのはまず無理でしょう。ネットなどでは、食塩を使った催吐方法などが書かれていることもありますが、高濃度の食塩を取りすぎることや、嘔吐が止まらなくなることなどの弊害を考えると、きちんと受診して処置してもらうのが一番です。
—誤飲・誤食で病院へ連れて行くとどんな治療をするのですか?
一番安全なのは麻酔下で内視鏡を用いて胃から取り出す方法ですが、催吐させることもあると思います。催吐させた場合は、これ以上嘔吐が続かないように吐き気止めの注射を使ったり、嘔吐による脱水防止で点滴を行うこともあります。これらの方法で取り出せない場合は、開腹手術によって摘出します。その際はもちろん入院が必要です。
—やっぱりお医者さんに診てもらうのが大切なんですね。誤飲・誤食するものは色々ありますが、「これを誤飲・誤食したらすぐに病院に連れて行くべき」という物はありますか?
個体差があるので一概には言えませんが、タバコや人薬など中毒の心配があるもの、竹串や画鋲など消化管を傷つけそうなものなどは本当に気をつけたいところです。また、ある程度の大きさのものを丸呑みした場合なども同様です。
—大きなかたまりですか?犬ってあんなに立派な歯があるから噛んで飲み込めそうですけど……。
犬の歯はたべものを引きちぎるために使われることが多く、草食動物のようによく咀嚼(そしゃく)することはありません。また、何か口にくわえているのを飼い主さんが発見すると、ついつい「だめ!」など大きな声を出して取り上げようとするため、犬も取られまいと慌てて飲み込んでしまうことも多いんです。
—でしたら、大き目のおやつなども丸呑みしないように注意したほうがいいですね。ところで、誤飲・誤食の後に食事を与えるのはダメなんでしょうか。
誤飲・誤食の際は受診してレントゲンを取ることが多いので、何も食べさせずに病院に行ったほうがいいでしょう。また、麻酔をかけて取り出すことになった際も、胃内に食べ物があると麻酔時に嘔吐して誤嚥するおそれもあります。
誤飲・誤食したものが、取り出す必要のない食べ物だった場合も、おなかを休ませるために食事は控えた方がいいでしょう。
—犬が誤飲・誤食しやすいものは何でしょうか?
人の食べ物が多いです。おいしそうな匂いもしますし、飼い主さんが食べているものなので興味を持ちやすいのでしょう。それと同じ理由で、タバコや人の薬など、飼い主さんが口にしているのを見ている事で誤飲・誤食につながるケースもあります。
また、洋服のボタン、おもちゃのきれはし、ペットシーツ、ダンボール、観葉植物も多いです。観葉植物は毒性のあるものも多いため、注意してください。
やわらかいティッシュなどは保湿成分として含まれているグリセリンによって舐めると甘味を感じるため、普通のティッシュよりも誤飲・誤食は増える傾向にあると思います。
食べ物だと、2~3月はチョコレート、12月はチキンの誤食が増えます。どれも注意したいものですね。
—三宅先生のところにも誤飲・誤食の相談が多く寄せられるとのことですが、なぜ犬はよく誤飲・誤食をしてしまうのでしょうか?
食べ物の誤飲・誤食に関して言えば、「今度いつエサにありつけるか分からない」という本能的な思いから、目の前の食べ物を積極的に食べる傾向はあります。異嗜(いし)といって、食べ物以外の物(石など)を好んで飲み込んでしまうこともあります。
また、子犬に関しては、人間の子どもと同じように興味をもったものは口に入れるため、うっかり飲み込んでしまうという事故もあるでしょう。
—誤飲・誤食を起こしやすい年齢や犬種はありますか?
やはり子犬が多いですが、大きくなっても誤飲・誤食を繰り返すこともあります。
また、大型犬など口が大きい犬種では、「こんなものはまさか飲み込めないだろう」と油断していると比較的大きなものを飲み込んでしまうこともあります。
—誤飲・誤食を防ぐためには、犬が届かない場所にものを置く、なるべく散らかさないようにする以外に対策はありますか?
一番大切なのは、物を置かずに誤飲・誤食を事前に防いであげることです。ただ、訓練しておくことも有効です。
例えば、号令によりくわえているおもちゃを離したらおやつをあげ、さらにすぐおもちゃも返してあげる、という遊びを繰り返していれば、犬は「くわえているものを飼い主さんに渡すといいことがある!」と思い、咄嗟のときに号令をかけることで、飲み込まずに口から離してくれることが期待できます。
散歩中の拾い食いなどは、物理的に食べられないように口輪をするのが安全ではありますが、室内で、リードをつけ、床におちているフードを拾い食いせずに通り過ぎることができたらご褒美をあげるという練習もいいでしょう。
また、当然のことですが、人の食べ物は与えないようにしましょう。テーブルの上、ゴミ箱、キッチンなどに必要に以上に興味をもたれると大変です。
—飼い主さんが気をつけることで誤飲・誤食は防げるんですね。
誤飲・誤食は飼い主さんの不注意が原因で起こってしまうことが多く、中毒症状を起こしたり、開腹手術が必要になった際には、自責の念にかられる方も少なくありません。是非、日々、気をつけてあげてくださいね。
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