2021/07/02
愛猫が、聞いたこともないような大きな声で鳴き始めたり、甘えながら普段あまりしない体勢をとったりしたら困惑しますよね。オス猫やメス猫の問題行動や避妊・去勢・避妊手術で問題行動は抑えられるのでしょうか?また発情期中の手術は可能なのでしょうか?発情期を迎えた愛猫との上手なつきあい方や、飼い主さんが気をつけたいことを獣医師の三宅亜希先生にうかがいました。
—「春になると猫は発情する」と聞きますが、猫の発情期は具体的にいつなのでしょうか?
日照時間が長くなる春先がメスの発情期のピークであり、月に数回発情することもあります。冬も全く発情期が来ないわけではなく、ピーク時より回数は落ち着きますが、発情は起こります。
—発情期の猫は、大きな声でずっと鳴き続けますよね。初めて猫を飼う方は、声の大きさに驚くようです。
そうですね。電話相談でも発情期の鳴き声に関する悩みが多く寄せられます。普段とは鳴き方も声の大きさも違く、それが数日続くため、心配になったり、寝不足になったりと、参ってしまう飼い主さんもいらっしゃいます。
—鳴き声がうるさいので、なんとかして鳴き止ませる方法はないのでしょうか?
残念ながら、ありません。叱っても、閉じ込めても、鳴くのを止めさせる効果がないどころか、かえって猫のストレスになってしまいます。
猫は「交尾排卵」といって、雄と交尾をすることで排卵する動物のため、綿棒などで膣を刺激して排卵を起こさせ発情をストップさせる方法などが知られていますが、デリケートな粘膜を傷つけてしまう恐れがあるため、決して行わない方がいいでしょう。
また水をかけたり、驚かせたり、マタタビや好物を与えたりしても、その瞬間に鳴き止むだけで、継続的な効果はありません。甘えてくるからと体を撫でていると、それが刺激になって余計に発情することもあります。発情が始まったら、できるだけ構わずに、見守っているのが一番です。
—ご近所に迷惑にならないかと、気にする方が多いようです。
散歩に行く犬とは違い、猫を飼っていることが周囲の方からはわかりにくいものです。ご近所の方とお話をする機会があれば、「実は猫が発情期で鳴いていて大変なんですが、ご迷惑はかかっていないですか」など伝えておけると少し気持ちが楽になると思いますが、なかなか、難しいかもしれません。
—オスが発情したら、どのような行動を取るのでしょうか?
オスの発情は、発情中のメスに接触することで起こります。室内飼育で他猫に接触する機会がなくても、外から鳴き声が聞こえたり、気配を感じることで刺激されたりして、発情することがあります。
—「発情期になると、あちこちにおしっこをしてしまう」と悩む飼い主さんもいるようです。
尾を高く持ち上げて広範囲に尿を吹き付ける行動を「スプレー行動」といいますが、これは、オスが縄張りを主張するために行うことが多いため、外に自由に出られる環境下で飼育されているオス猫では、周りのオス猫に触発されてそのような行動をとるのかもしれません。
メスのように自ら鳴くことがないので気づきにくいのですが、生後7ヶ月を過ぎたらいつ発情期が訪れてもおかしくありません。周囲に発情した猫を近づけないように気をつけた方がよいと思います。
—避妊・去勢手術をすれば、発情しなくなりますか?
メスで卵巣子宮全摘出、オスで睾丸摘出を行っていれば、その後は発情しません。しかし、ごく稀に、卵巣があった場所の周辺組織が卵巣の変わりに性ホルモンを放出し始め、避妊手術をしたにも関わらず再度発情がみられるというケースが報告されます。
ただ、通常は、避妊・去勢手術によって、その後は発情せずに穏やかに過ごせます。
—全身麻酔をかけて行う避妊・去勢手術は、猫の健康に影響しませんか?
通常、術前検査を行い、全身麻酔を問題なくかけることができるかを確認しますので、過度に心配する必要はありません。むしろ、発情時の身体への負担がなくなることはメリットです。また、メスの場合は乳腺腫瘍の発生率を抑えられるという報告もあります。
—メスの発情と乳腺腫瘍に関係性があるのでしょうか?
発情を迎えると乳腺が発達しますが、乳腺を発達させないことが乳腺腫瘍を抑える一助になっていると考えれています。
猫の乳腺腫瘍は8割~9割が悪性腫瘍であるといわれており、転移もしやすいのが特徴です。
—出産をさせるつもりがなければ、早めに避妊手術をしたほうがよいのですね。避妊手術はいつから行えるのでしょうか?
生後数ヶ月~1歳までの間に行う病院が多いです。個体差もありますので、一度受診をして診てもらってから決めるといいでしょう。
—発情中でも避妊手術はできますか?
発情を迎えてみて「こんなに大きな声で鳴かれるのであれば今すぐ避妊手術をしてしまいたい」というご相談をいただくことがあります。発情中でも避妊手術はできなくはないのですが、出血が増える傾向もあるため、かかりつけの先生に相談していただくのが一番でしょう。
—乳腺腫瘍にかかるリスクの低いオスも、去勢手術をする必要があるのでしょうか?
乳腺腫瘍のリスクは低いですが、先ほども少し話題に出た「スプレー行動」などは去勢しているオスではほとんどみられませんし、発情によって気が立つこともありません。
何より、発情期に起こりやすい「脱走」を防ぐためにも、メスもオスも避妊・去勢手術をしたほうがよいでしょう。
—発情期になると、室内飼育の猫も脱走しやすくなってしまうのですか?
そうですね。発情期の猫は交尾相手を求めて、本能的に外に出ていきます。網戸を開けたことなんてなかった猫が開けてしまったり、ドアが開いた隙に一目散に走っていったり、ということが多々あるのです。
脱走することで、交通事故にあったり、外の猫のケンカをする恐れがあります。また、感染症を患っている猫との接触や交尾により、感染してしまうこともあります。それに加えてメスでは多くの確率で望まない妊娠をしてしまいます。
是非、普段よりも注意深く脱走には注意をしてください。
—それほかにも、飼い主さんが気をつけることはありますか?
発情中に食欲が落ちるような場合、数日続くようなら獣医師に相談したほうがいいでしょう。また、発情中はいつもと性格が変わり、飼い主さんが咬まれて怪我をするようなケースもあるため気をつけましょう。
発情は生理現象なので、無理に止めることはできません。しかし避妊・去勢手術で発情を抑えることで、人間も猫もストレスを感じずに健康に過ごすことができますので、早めの手術をおすすめします。
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