2016/06/28
動物病院で支払う治療費や薬品代には、「消費税」が加算されています。人間の場合は消費税がかからないのに、一体なぜでしょうか?
また、家族の医療費が1年間で10万円を超えると、確定申告で「医療費控除」の対象となりますが、そこにペットの医療費は含まれるのでしょうか?
今回は、ペットにまつわる様々な「税金」の疑問についてお答えします。
現在の「消費税法」では、医療に関わる事項は非課税だと定められています。私たちが病院に行って診察を受けたり薬をもらったりしても、医療費に消費税は加算されませんよね。ただしこれは、人間の場合です。
ペットはもちろん大切な家族の一員なのですが、法律上は「物」として扱われるため、ペットの医療サービスはすべて、消費税の課税対象となります。したがって、動物病院では治療費に加えて消費税を支払う必要があるのです。
もし家族全体で医療費が10万円以上かかった場合は、年度末の確定申告の際に「医療費控除」を申請すると、支払った医療費の一部が所得に応じて還付されます。
では、ペットの医療費の領収書は、医療費控除の対象になるのでしょうか?
残念ですが、控除の対象とはなりません。医療費控除は、「自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)」を対象としています。
ペットも、同じ家に住み生計を一にする存在ですが、親族には含まれないので、控除の対象から外れてしまいます。
1年間で支払った生命保険料に応じて、一定の金額をその年の所得から差し引く制度を「生命保険料控除」と言います。
会社員の場合は、毎月の給与から所得税や住民税が天引きで支払われています。しかし、本来生命保険料として差し引かれる分は計算されていないので、そのままだと払い過ぎに。そこで、「年末調整」の際に支払った保険料の明細書を提出し、払い過ぎた税金を還付金として受け取ることができるのです。
この「生命保険料」として計上できるものは、生命保険料、介護保険料、医療保険料、個人年金保険料です。(ただし保険期間が5年未満の保険契約は除く)本人だけでなく、医療費控除と同様に、6親等以内の血族と3親等以内の姻族のものも対象となります。
では、ペットの医療費を補償してくれる「ペット保険」は、控除の対象となるのでしょうか?
こちらも残念ながら、控除の対象とはなりません。ペットの医療保険は、分類的には「損害保険」になります。消費税と同様に、ペットは「物」として考えられていますので、生命保険としては扱われていないからです。
かつての日本には、ペットに対する税金がありました。1955年には2686の自治体で「犬税」が設けられていたのですが、徴収コストなどの問題により続々と廃止。最後に長野県旧四賀村(現松本市)が1982年に廃止して以降、ペットに対する課税はされていません。
最近では、大阪府泉佐野市が、狂犬病予防法に基づいて登録された飼い犬5000匹を対象に「犬税」の徴収を検討していましたが、未登録の犬が多いことなどから、2014年に断念しました。
現在の日本にはペット税はありませんが、外国では導入している国があります。その代表は、ペット先進国・ドイツ。税額は、自治体や飼育している頭数、犬種によって異なります。
ただし、盲導犬や介助犬、生活保護受給者など経済的に厳しい場合は免除されます。
またスイスやオーストリアでも同様の犬税が導入されているほか、中国では毎年、飼い犬を登録する費用がかかります。
いずれも、課税されているのは様々なペットのうち、犬のみ。愛犬家の間からは「他のペットに課税しないのは不公平だ」という声もあがっているようですが、捨て犬の殺処分や糞害が多いことも事実。税金を課すことによって、飼い主が自覚を持って犬を飼育するようになり、飼育マナーの向上にもつながっています。
ペットにかかる医療費や保険料は、残念ながら控除の対象になりません。ペットを飼うためにはさまざまな費用が必要となりますが、それがペットの安全や健康につながります。必要な費用については、飼い主さんそれぞれが、しっかりと負担していく必要があるのですね。
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動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。