2016/08/23
犬に比べると猫は暑さに強いと言われますが、それはなぜでしょうか?
また、暑さに強い猫でも夏バテすることがあるのでしょうか?
今回は、猫の夏バテ予防とその対策について、三宅先生にうかがいました。
—犬は熱中症になると聞きますが、猫も熱中症になりますか?
猫は犬に比べると熱中症にはなりにくい生きものです。しかし、自由に涼しい場所へ移動できないような環境(暑い部屋に閉じ込められている、車内に閉じ込められている等)では猫も熱中症になり得るため注意は必要です。
また、熱中症にはならなくても、夏バテをすることはあります。
—猫の夏バテはどのような症状が出るのでしょうか?
猫の夏バテは、食欲不振や嘔吐などの消化器系の症状が多いですね。暑さで食欲が落ちたり、嘔吐をしたりしている場合は、受診を検討されたほうが良いでしょう。
—「受診」と「様子見」のボーダーラインはどこでしょうか?
猫の場合は、食欲の低下や、食事をとらなくなった時点で受診を検討される方が多いですね。猫は痛みを表に出さない動物なので、少しでも様子がおかしいと感じたら獣医師に相談してください。
ただ、5~6月の換毛期に毛づくろいをして、たくさん毛を飲み込んでしまったために嘔吐の症状が出ることもあります。嘔吐物や便の中に毛がたくさん入っていたら、ブラッシングをしたり、毛玉を流す栄養補助食品などを使って様子を見ても良いかもしれませんね。
—食欲のない猫には、どのようなものを食べさせたら良いでしょうか?
暑さで胃腸が弱っているときに食べ慣れないものを食べさせると、余計に消化不良を起こすこともありますから、普段食べているものが一番です。
ただ、いつものドライフードにウェットフードなどの香りの良い物をトッピングするなどの工夫は、食欲増進に効果的です。
—水はたくさん飲ませたほうが良いですか?
猫は本来砂漠の生き物なので、あまり水を飲みません。嘔吐が続いて脱水症状が心配なときは、水分の多いウェットフードを与えてみてはいかがでしょうか。
水の容器を家のあちこちに置いておき、飲みやすくするという方法もありますね。また、流れている水なら飲むという猫もいますので、蛇口から水を与えたり、流水機能のある給水器を使ったりする方もいらっしゃいます。
—水以外の水分を与えるのはどうでしょうか?
暑そうだからと冷たい水を与えたり、氷を与えたりするのはあまりおすすめできません。冷たい飲み物は胃腸の動きを余計に低下させてしまいます。また、人間用の飲み物を薄めてあげる方もいらっしゃいますが、スポーツドリンクなどは糖分が多いので与えない方がいいでしょう。
経口補液は糖分の心配はありませんが、ミネラルが豊富なため、心臓や腎臓に疾患がある場合は適しません。
猫用のミルクなら飲むというのであれば、その分食事のカロリーを減らして与えてみてはいかがでしょうか。
—暑い日に冷たいシャワーで洗うのはどうでしょうか?
熱中症になって体温が上昇しているのであれば、体を冷やすことに意味がありますが、夏バテだと難しいですね。多くの猫は体が濡れることに不快感を持ちますし、濡れた毛を乾かすためにドライヤーをかけることも苦痛に感じるでしょう。
—猫にとっての「適温」はどれくらいですか?
人が過ごしていて心地よいと感じる温度であれば、猫にとっても問題ありません。
夏場よりもむしろ、5月~6月の「まだクーラーは早いかな?」という時期のほうが、猫は夏バテになりやすいんです。猫を飼っているご家庭では、早めに空調管理をしたほうが良いかもしれません。湿度が高くなると夏バテしやすくなるので、ドライ機能だけでも良いですよ。
また、クーラーが苦手という猫も多いため、クーラーが効いていない場所へ逃げられるようにしておいてあげることも大切です。
—扇風機の風があたっても大丈夫ですか?
扇風機の風でも大丈夫です。猫が扇風機にイタズラできないように対策してくださいね。
ただし、ケージの中に入れて扇風機の風をあてっぱなし、というのはあまり良くありませんね。留守中はケージの中に猫を入れておく、という方もいらっしゃるかもしれませんが、平面を移動する犬と違い、猫は上下運動が活発な動物です。自分で移動して快適な場所を探せるように、自由に行動できるようにしてあげてください。
—長毛種の方が短毛種よりも夏バテしやすい、などの傾向はありますか?
毛の長さはさほど重要ではありませんが、鼻がつぶれているような猫種では体の熱を鼻呼吸で逃がしにくいため、夏バテや熱中症に気をつけてあげたいですね。長毛種の場合はサマーカットをする場合もありますが、あまり短くし過ぎると地肌に日光があたって余計暑くなってしまうので、注意してください。
—子猫や老猫などの方が夏バテしやすいですか?
どちらも成猫に比べると体温管理の能力は劣ります。しかし、子猫はどちらかというと寒さに弱い傾向にあります。
また老猫や太った猫はあまり動かないので、水を飲んだり涼しいところに移動するのを面倒くさがる傾向がありますので、様子を見てあげましょう。特に太った猫は熱がこもりやすいという面でも、夏バテや熱中症に注意が必要です。
—今まで、猫の熱中症で相談を受けたケースはありますか?
ある飼い主さんが、閉めきった車の中に猫を残してその場を離れ、数分後に戻ったところ、グッタリしていて脱糞をしていたというご相談がありました。
具合が悪くなった状況を飼い主さんが見ていないので、すぐには判断できませんが、体温が高くなっていたら熱中症の恐れがあります。その場合は、体を濡れたタオルで包んで体温を下げる応急処置が有効です。
しかし、体温に変化がないようでしたら、何もせずにそのまま病院へ。
人間の場合もそうですが、暑い車内に猫を置いて車から離れるのはやめましょうね。
飼い主さんが気を回しすぎて、食べ物や飲み物を冷やしたり、栄養価が高いものを与え過ぎたりすると、残念ながら逆効果になってしまいます。でも、やはり愛猫が夏バテしないか、心配になってしまいますよね。
猫は自分の居心地の良い場所を見つけるのが上手な動物です。暑いときはひんやりした廊下や玄関へ、寒い時は日差しが暖かい窓辺へと、自由に移動します。猫が自由に移動できる、「いつも通り」の環境が、猫にとっては何よりの夏バテ予防なのです。
▼コチラの記事もCheck!▼
→ペットもかかりやすい熱中症。実は屋外だけでなく屋内にも熱中症の危険性は潜んでいます。いつもと様子がおかしいと感じたときに、おこなうべき処置方法をご紹介します。
・猫の臭いがする部屋を徹底消臭!正しいトイレのしつけ方と対策
→まだ上手にトイレができないなど、慣れないうちに起こってしまうペットの粗相は頭を悩ませるもの。今回はあるものを使って簡単にトイレの臭いを解決する方法と、正しいしつけ方をご紹介します。
・ペット保険の種類と補償内容|人間の保険のように選んでみよう![vol.3]
→たくさんのプランや保障のあるペット保険。難しいと思いがちですが、人間の保険にたとえると理解しやすくなります。詳しい保障内容を知ることで、どの内容が自分のペットに合っているのかを適切に見極めましょう。