2021/12/23
ペットが迷子になってしまったとき、「マイクロチップ」があればスムーズに捜索できると言われています。では、マイクロチップにはどのような機能があり、どこで購入・装着することができるのでしょうか。装着することでのメリット、デメリットなどマイクロチップに関する知識と、その重要性についてご紹介します。
動物に埋め込むマイクロチップは、長さ8mm~12mm、直径2mm程度の円筒形で、アンテナとICを内蔵している「電子タグ」です。15桁の固有の数字が識別番号として記録されており、専用のリーダー(読み取り機)を使って識別番号を読み取ることができます。この識別番号で、データベースに登録された情報(飼い主さんのお名前や住所など)を照合することができます。
ペットにマイクロチップを装着していれば、迷子や災害などで飼い主さんと離ればなれになって保護された際、自治体や動物病院においてマイクロチップの情報を読み取り、飼い主さんと連絡をとることができます。
マイクロチップの耐久年数は30年程度で、作動に電池は必要ありません。途中で交換する必要はなく、一度埋め込むと半永久的に使用できます。
なお、マイクロチップには識別番号しか含まれず、GPS機能や医療情報等は含まれません。
マイクロチップについて詳しくは、「ペットの迷子防止にマイクロチップ。装着&登録費用は?」もあわせてご覧ください。
マイクロチップは、犬や猫、ハムスターなどの小動物に埋め込んで装着することができます。動物園や水族館では哺乳類のほか、爬虫類や魚類などほとんどの動物にマイクロチップが装着されていますが、一般の家庭のペットにマイクロチップを使用しているケースはまだそれほど多くはありません。
環境省の調査によると、2011年度段階では、ペットの所有者表示の方法としてマイクロチップを選択している人はわずか7.8%に止まっていました。しかし、マイクロチップの情報を管理する「動物IDデータベースシステム」の登録件数をみると、2010年度末時点の450,414件から、現在(2021年12月9日時点)は2,753,197件へと約6倍に増加しており、マイクロチップを装着される方の割合が増えていることがうかがえます。
ペットのマイクロチップ装着に補助金等を交付している自治体もありますので、装着の際はチェックしてみてください。
外国では、ペットへのマイクロチップ装着が広く行われている国もあります。スイスやフランス、ベルギー、オーストラリアなどでは、犬へのマイクロチップ装着は飼い主さんの義務です。
また、海外から日本へ犬や猫を連れてくるときは、「マイクロチップ埋め込み証明書」の提出が必要になります。日本から海外へ連れていく際も、国によってはマイクロチップの装着が必要になります。
日本国内でも2019年に動物愛護管理法が改正され、2022年6月1日からマイクロチップの装着が販売業者等(ペットショップやブリーダー)に義務づけられます。また、すでに犬や猫を飼っている飼い主さんには努力義務が課せられます。
マイクロチップを装着する最大のメリットは、迷子や地震、事故などで飼い主さんと離ればなれになったペットが保護された場合、すぐに身元確認ができることです。
環境省の調査によると、2019年度に負傷動物として保護された犬・猫のうち、飼い主さんが引き取ることができたのは、犬が約35%、猫は約3.5%に止まりました。
また、東日本大震災の際、ある自治体で保護された犬と猫のうち、迷子札や鑑札、狂犬病の注射済票を身に着けていた場合は100%飼い主さんが判明しましたが、迷子札のついていない首輪のみの場合、飼い主さんが判明したのは犬が0.5%、猫はゼロでした。
この震災の後、マイクロチップの重要性が改めて見直されました。
仮に首輪や迷子札に飼い主さんの情報を記載していたとしても、それ自体が破損してしまったり、外れてしまったりすることがあります。しかしマイクロチップは一度体内に埋め込めば、一生無くなることはありません。
情報の登録はとても簡単です。登録先団体が「AIPO(動物ID普及推進会議/日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会、日本獣医師会によって構成)」の場合は、マイクロチップを埋め込んだ後、日本獣医師会に飼い主さんの氏名や住所、電話番号などの情報を記載した申込書を送付します。その情報がデータベースに登録され、動物病院や動物愛護センターから照会することができます。
もし、マイクロチップを装着したペットが動物病院や警察署、動物愛護センターなどで保護された場合、マイクロチップに記録された数字を読み取ってデータを照会することで、すぐに飼い主さんに連絡することができるのです。
災害への備えについては、「災害時にペットを守るために。同行避難時の救護対策を確認しよう」もあわせてご覧ください。
マイクロチップが発する電磁波による健康被害を懸念される方もいらっしゃいますが、日本獣医師会によると体内における影響は認められないそうです。
レントゲンやCTスキャンの操作にも特に影響はなく、一部のMRI機器で画像が乱れることがありますが、ほとんどの場合は問題ないと報告されています。
また、マイクロチップは、安全性の高い生体適合ガラスやポリマーで覆われているため、副作用やショック症状等の報告もありません。マイクロチップを埋め込む際の痛みが心配な方は、部分麻酔を使用するなどの方法もありますので、獣医師と相談してみてください。
マイクロチップの装着は医療行為となるので、動物病院で獣医師が行います。専用のインジェクター(注入器)で動物の体内に埋め込みますが、短時間ですみ、体への負担はほとんどありません。
犬は生後2週、猫は生後4週頃から埋め込みができるとされていますが、個体差があるため獣医師と相談してください。
装着費用は動物病院によって異なり、一般的には数千円~1万円程度です。また、情報の登録費用に別途1,050円がかかります(2022年3月31日まで。2022年4月1日より、オンライン申請300円、紙申請1000円に改訂)。
お住まいの自治体によっては、マイクロチップ推進のために費用の一部助成を行っています。
もしかしたら、大切なペットがうっかり外に出て迷子になってしまったり、災害で離ればなれになってしまうかもしれません。
そんなとき、一刻も早く大切なペットと巡りあうために、マイクロチップの埋め込みを検討してみてはいかがでしょうか。
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動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。