2019/11/07

災害時にペットを守るために。同行避難時の救護対策を確認しよう

2019/11/07

災害時にペットを守るために。同行避難時の救護対策を確認しよう

 2011年の東日本大震災では、飼い主とはぐれたペットの姿が数多く報道されました。またペットを連れての避難生活の困難さについても注目されました。
 さらに2018年、2019年の大型台風の際には、自治体がSNS等でペット同行避難を呼びかける一方で、一部ペット受け入れ不可の避難所もあり、対応にバラつきがありました。

 災害は、いつ自分のところにやってくるかわかりません。いざというときのために、自分と大切なペットも守るために、日頃から備えておきましょう。

ペットと「同行避難」が原則

 東日本大震災で飼い主とはぐれて放浪状態になったペットが続出したことから、環境省では2013年に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を作成しました。2018年には「人とペットの災害対策ガイドライン」へ変更・改訂し、ペットと避難する際の基本行動などを詳しく説明しています。

 このガイドラインにて、ペットは飼い主との「同行避難」が原則であると示されました。
 では、「同行避難」とは、どのように行動することでしょうか。

 「同行避難」は、飼い主さんがペットを連れて避難をすることです。勘違いされている場合も多いのですが、飼い主さんとペットが共に生活する「同伴避難」ではありません。ただし盲導犬、介助犬、聴導犬などは同伴を認められています。

飼い主さんが避難をするときは、ペットを同行することが原則です。

飼い主さんが避難をするときは、ペットを同行することが原則です。

 「ペット受け入れ可」の避難所の多くは、人間とペットの避難エリアを分けており、人間の生活エリアにペットを持ち込むことを許可していません。避難所によってはケージや柵で囲った専用スペースを用意するところもありますが、その運営は自治体に委ねられています。

 お住まいの自治体はペットの同行避難についてどのような方針を採っているのか、まずはウェブサイトなどで確認してみてください。

 また自宅に二次災害の危険がない場合は、ペットを自宅に残し、世話をしに定期的に通う、というのも選択肢の一つです。その場合は、自宅や周辺の状況をしっかりと確認しましょう。

ペット用の「避難袋」を用意しておこう

 避難所では人間用の食料や物資は供給されますが、ペット用の物品はほとんどありません。飼い主さん自身が、非常時の備えをする必要があります。

 「人とペットの災害対策ガイドライン」では、ペット用の備蓄品と持ち出す際の優先順位を以下のように記載しています。

【 優先順位 1 】動物の健康や命に係わるもの

  • 療法食、薬
  • フード、水(少なくとも5日分、できれば7日分以上)
  • キャリーバッグやケージ(猫や小動物には避難時に欠かせないアイテム)
  • 予備の首輪、リード(伸びないもの)
  • ペットシーツ
  • 排泄物の処理用具
  • トイレ用品(猫の場合は使い慣れたトイレ砂)
  • 食器

【 優先順位 2 】情報

  • 飼い主の連絡先とペットに関する飼い主以外の緊急連絡先・預かり先などの情報
  • ペットの写真(携帯電話に画像を保存することも有効)
  • ワクチン接種状況、既往症、健康状態、かかりつけの動物病院などの情報

【優先順位 3 】ペット用品

  • タオル、ブラシ
  • ウェットタオルや清浄綿(目や耳の掃除など多用途に利用可能)
  • ビニール袋(排泄物の処理など他用途に利用可能)
  • お気に入りのおもちゃなど匂いがついた用品
  • 洗濯ネット(猫の場合は屋外診療・保護の際に有用)など
  • ガムテープやマジック(ケージの補修、段ボールを用いたハウス作り、動物情報の掲示、など多用途に使用可能)

 そのほか、古布や新聞紙などを用意しておくと重宝します。
 また大型犬を徒歩で避難させる場合は、犬用の靴下やバンテージなどを履かせておくと、ガレキなどによるケガの防止に役立ちます。

トイレ砂など、使い慣れたものを用意しておきましょう。

トイレ砂など、使い慣れたものを用意しておきましょう。

 上記のもののうち、名前を書けるものはすべて記名しておきましょう。避難袋の持ち手に、年齢やワクチン接種などのペットの個体情報や、飼い主の連絡先を記した名札をつけておくのも有効です。

 災害時はペットもストレスを感じているため、代用食を受け付けなかったり、食べても軟便になってしまったり、またトイレの環境が変わって排尿できなくなってしまうこともあります。できるだけ「普段通りのもの」を用意しておくことが大切です。

同行避難をする前の準備をしよう

 いざ避難所に向かう前に、まずは準備が必要です。

 犬の場合は、しっかりとリードを付けます。首輪がゆるんでいないか確認し、首輪に鑑札や予防注射済み票、迷子札などを付けておきます。
 小型犬の場合は、リードを付けた状態で、キャリーバッグやケージに入れましょう。

開かないように、しっかりと固定してください。

キャリーバッグやケージの扉が開かないように、しっかりと固定してくキャリーバッグやケージの扉がださい。

 ネコの場合も、首輪をしているのであれば迷子札を付けておきましょう。キャリーバッグやケージの扉が開かないように、ガムテープなどで固定しておきます。

 準備が整ったら、避難袋を持って避難場所へ向かってください。

避難所では周囲に配慮しよう

 飼い主さんとペットが一緒に過ごす「同伴避難」ができる避難所は、限られています。多くの場合が「同行避難」のため、飼い主さんとペットは別の場所で過ごすことになります。
 各避難所でのルールに従い、時には飼い主さん同士が協力し合いながら、責任をもってペットの世話をしましょう。

 多くの人が集まる避難所には、ペットアレルギーや動物が苦手な方もいます。鳴き声やニオイなど、周囲に迷惑をかけないよう配慮してください。

 また慣れない環境で過ごすペットは、ストレスがたまり体調を崩すことも多くあります。撫でたり、抱きしめたり、声をかけたりしながら、ペットのストレスを少しでも減らしてあげましょう。

自動車の中に避難する場合は熱中症に注意しよう

 ペットと一緒に過ごしたいという理由で、自動車の中で避難生活を送ることを選択する飼い主さんもいます。
 その場合は、頻繁に窓を開けて換気をしましょう。また十分な水分を用意して、熱中症の予防を心がけましょう。
 ペットを車内に残して出かける場合は、水を多めに用意し、車内温度に注意してください。

自動車の中で避難生活を送る場合は、熱中症に十分注意してください。

自動車の中で避難生活を送る場合は、熱中症に十分注意してください。

 狭い所でずっと生活していると、ペットはもちろんですが、飼い主さんの体調にも注意が必要です。エコノミークラス症候群にならないよう、定期的に体を動かし、水分をたっぷりとりましょう。

迷子になったときの対策をしよう

持病などがある場合は名札に記載しておくと、保護された時に役立ちます。

持病などがある場合は名札に記載しておくと、保護された時に役立ちます。

 もし外出中などペットと離れているときに被災した場合は、可能であればすぐに自宅に戻り、ペットを同行して避難してください。

 飼い主さんがすぐに自宅に戻れずにペットが放浪状態になってしまった、またペットが災害に驚いて自宅から逃げ出してしまった場合のために、日頃から首輪や名札をつけて、連絡先などの情報を記載しておきましょう。

 犬の場合は、狂犬病予防接種を受けた際に受け取る「鑑札」と「注射済票」を装着しておくと良いでしょう。

 また、首輪や名札は外れてしまうこともありますので、環境省では体内に埋め込むマイクロチップの装着を推進しています。

 マイクロチップについては「【迷子猫・迷子犬対策】マイクロチップ装着のメリットと費用」も併せてご覧ください。

ペットを連れて避難訓練に参加しよう

避難訓練に参加すると、準備しておくべきことが明確にわかります。

避難訓練に参加すると、準備しておくべきことが明確にわかります。

 災害時の避難場所はどこか、どのようなルートで移動するのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。避難訓練の際には、ペットを連れて積極的に参加すると、様々な気付きが得られます。

 地域や自治会によっては、ボランティア団体や日本獣医師会などが主催する「ペット同行避難訓練」などが実施されることもありますので、自治体のホームページや広報誌、掲示板などで情報収集をしてください。

「預け先」を見つけておこう

被災地域外に住む親戚や友人など、いざというときの預け先を見つけておきましょう。

被災地域外に住む親戚や友人など、いざというときの預け先を見つけておきましょう。

 もし避難所で生活を送ることになった場合、ペットと一緒に過ごせないこともあります。そのような時のために、遠方に住んでいる親戚や友人と話し合って協力体制を取っておくと安心です。

 平常時に積極的に情報収集をしておくことで、いざというときに焦らずに行動できるでしょう。

健康管理をしておこう

どんなときでも飼い主の命令に従うように、日頃からしつけておくことも大切です。

どんなときでも飼い主の命令に従うように、日頃からしつけておくことも大切です。

 災害時は、様々な状況の人と共に生活や行動をする場面が多くなります。ペットも同様に、複数の動物と一緒に過ごすかもしれません。

 非常時は、衛生状態や栄養状態が悪くなり、免疫力が低下します。もし一匹の犬が病気になった場合、それがあっという間に広がってしまうこともあり得ます。

 日頃からワクチンや予防接種をして、感染予防を心がけましょう。また、望まない繁殖を防ぐために、去勢・避妊手術をしておきましょう。

 そのほか、「ケージに慣れさせる」「無駄吠えを無くす」「飼い主の命令に従うようにする」などの日頃のしつけをしっかりしておくことも重要です。

 くわしくは、環境省「一般飼い主向け 人とペットの災害対策ガイドライン」「ペットも守ろう!防災対策」などを参照してください。

 災害時は、人もペットもパニック状態になります。少しでも落ち着いて行動するために、日頃から「万が一」を想定し、様々な準備を整えておきたいですね。

【参考】
公益社団法人 日本獣医師会『災害時動物救護の地域活動ガイドライン』
http://nichiju.lin.gr.jp/aigo/pdf/guideline2.pdf

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