2020/06/25

かかりつけ獣医選び方のポイント|大切なペットの健康を守るために

2020/06/25

かかりつけ獣医選び方のポイント|大切なペットの健康を守るために

 ペットの病気やケガの治療で、お世話になる獣医さん。愛犬、愛猫の健康を守るためには獣医さんと飼い主さんの協力が大切です。獣医さんとの上手なコミュニケーションや動物病院の選び方、かかりつけ医の重要性について、獣医師の三宅亜希先生に聞きました。

どうやって症状を伝えたらいい?

—ペットは話ができないので、飼い主が病状を説明しますよね。うまく説明ができなかったらどうしよう、と不安になります。

 獣医さんは、まず「普段はどんな様子か」を飼い主さんにうかがいます。ですから、ペットを病院に連れて行くのは毎日一番良く世話をしている、普段の様子を知っている方が望ましいですね。

 病状については、獣医さんが上手に質問してくれるので、覚えている範囲で答えてください。わからないことは「わからない」で大丈夫ですよ。

 たとえば便の状態が悪くて受診するときは、その便を持参すると診断の参考になります。
 ただ、便が採取できなくても検査は可能なので、絶対ではありません。

普段の様子を一番良く知っている方が、病院に連れて行ってください。

普段の様子を一番良く知っている方が、病院に連れて行ってください。

—獣医さんが質問していることに正確に答えられなかったら、どうすればよいですか?

 そんなに心配することはありませんが、時々、獣医さんの質問の意図と、飼い主さんの回答が食い違ってしまうこともありますね。

 たとえば獣医さんが「何か変わったものを食べましたか?」と質問した場合、それは“毎日食べているフード以外”のものについて聞いているのですが、飼い主さんは“変わったもの=食べ物以外”だとイメージされるようで、「何も食べていません」とお答えになることがあります。

 しかし、しばらくお話を聞いていくと「そういえば、アイスクリームを食べました」と。獣医さんにとって人間の食べ物は“変わったもの”だったのですが、それが上手く伝わらなかった例です。

 最近の獣医さんは、飼い主さんにわかりやすく、具体的に質問するように配慮している方も多くいらっしゃいますが、質問の意図がわかりにくいときは、遠慮せずに質問してください。

わからないときは、どんどん獣医さんに質問しましょう。

わからないときは、どんどん獣医さんに質問しましょう。

—診察を受ける際の「マナー」はありますか?

 思わぬ事故を防ぐために、キャリーケースに入れるかリードを付けて来ていただくことは重要ですが、それ以外は何もありません。 時々、わざわざシャンプーをしたりトリミングをしてから来院される方もいらっしゃいますが、その必要は全くありませんよ! 汚れていても気にせずに、そのまま来てください。

 吠えたり、攻撃的な性格のペットの場合は、事前に空いている時間を問合せておくと良いですね。

「かかりつけ医」を持つことが大切!

—人間のように、ペットもかかりつけ医を持ったほうが良いですか?

 もちろんです。小さいときから定期的に診察を受けていれば、成長の様子や普段の状態を獣医さんに把握してもらえるので、いざというときに安心です。

 特に、かかりつけ医での定期的な健康診断はとても大切です。動物にも人間と同じように“参考基準値”はありますが、個体差が結構あるんです。継続して健康診断を受けていると、自分のペットにとっての“健康値”を獣医さんがわかってくれるので、何か異常があったときに、見つけやすくなります。

動物病院=痛いことをする場所、にならないようにしたいですね。

動物病院=痛いことをする場所、にならないようにしたいですね。

—病院に行くのを嫌がるペットも多いですよね。

 病気やケガがひどいときにしか病院に行かないと、ペットは“病院=痛いことやイヤなことをする場所”と認識してしまいますね。

 でも健康診断などで通っていると、その場所や人に慣れてくるし、痛いことだけをする場所じゃないと思ってくれるので、病院に連れて行きやすくなりますよ。

—病気ではなく、ちょっとした相談事で動物病院に行っても良いのでしょうか。

 もちろんです。最近は、動物病院を獣医さんと飼い主さん、そして飼い主さん同士が交流できるコミュニティスペースにしようという動きもあり、地域に開かれた活動をしている動物病院が増えてきました。

 ちょっと気になることがあった時に一番に相談できる先として、かかりつけ病院が挙げられるような関係性が理想的ですね。

「かかりつけ医」選びのポイントは?

まずは一度診察を受けて、信頼できるかかりつけ医を見つけましょう。

まずは一度診察を受けて、信頼できるかかりつけ医を見つけましょう。

—「相性の良い獣医さん」を探すコツはありますか?

 合う、合わないは個人の主観なので、一概には言えません。強いて言えば、電話対応や受付に院長先生の考えが出ることが多いので、問い合わせ時の印象は判断材料の一つになるかもしれません。

 ただ、実際に一度診察を受けてみないと、その判断は難しいでしょう。

—かかりつけ医を選ぶ際は、ペットとの相性を重視したほうが良いですか?

 もちろんペットが先生に懐いているのがベストですが、あまり気にしなくても良いと思いますよ。

 それよりも、説明が丁寧であるとか、質問しやすいであるとか、飼い主さんとの関係性の方が大切ですね。

—たとえば引っ越しなどでかかりつけ医を変える場合は、どうすればよいでしょうか。

 信頼できるかかりつけ医がいるのであれば、その先生に引越し先で知っている病院がないか、尋ねてみてはいかがでしょうか。

—人間のお医者さんのように、獣医さんにも整形外科や眼科などの「専科」はありますか?

 最近は、専門診療を行う病院も増えてきましたが、そういうところは一次診療の動物病院からの紹介で受診することがほとんどです。

 動物病院は基本的にどのような症状でも診察するので、まずは地域のかかりつけ医で診察を受けてください。

遠慮せずに、どんどん質問しましょう!

—獣医さんに、病気のことや治療のことを詳しく聞きたくても、忙しそうで質問できない、と悩む方が多いようです。

 そういう飼い主さんは、とても多いと思います。私が受ける相談の中にも、かかりつけ医から説明はあったものの、その場で全てを理解できず不安になった、というケースが多々ありますね。

 飼い主さんからの質問がないと、獣医さんは「飼い主さんは、病状や治療内容を理解している」と受け取りがちなのですが、飼い主さんからしてみれば「どうやって質問していいのかわからない」「よくわからないけれど、獣医さんに悪くて質問できない」状態だったりします。

 そういうときは、遠慮せずに、わからないことはわからないと獣医さんにぶつけて、どんどん質問しましょう。飼い主さんが質問をすれば、獣医さんはそれに答えてくれるはずです。

病状や治療内容について、わからないことはどんどん質問してください。

病状や治療内容について、わからないことはどんどん質問してください。

—その場で質問できなかったら、電話や別の日に質問してもよいのでしょうか。

 もちろん、大丈夫です。自宅に帰った後に家族と話をして、新たな疑問や意見を持つこともありますよね。

 まずは病院にお電話をしてみて、治療について相談するためのお時間を取っていただけないか、うかがってみると安心ですね。

—獣医さんとの関係性に不安を感じて、転院を考える飼い主さんも多いようです。

 残念ながら、獣医さんとのコミュニケーションが上手くとれないから、と転院する飼い主さんもいらっしゃいます。

 でも転院する前に、まずは獣医さんにとことん質問して、話をしてください。十分に話をした上で、それでも納得いかなければ、転院を考えても良いでしょう。

 しっかりと話をできない状態で転院してしまうと、どこの動物病院に行っても同じことの繰り返しになってしまいます。そうやって治療が進まないことで苦しむのは、大切なペットです。

 まずは、遠慮せずに獣医さんに何でも質問すること、話をすること。それに尽きると思います。

「重大な決断」は冷静な状態で

—深刻な病気やケガの場合は、飼い主さんがパニック状態になってしまい、獣医さんに意思が伝えられない、ということもあります。

 ショックを受けている飼い主さんは、獣医さんの話が理解できるような精神状態でないこともありますよね。

 その場では「わかりました」と言っていても、実際にはちゃんと理解していなかったり、冷静な判断ができていないこともあります。

 一分一秒を争うような状態でなければ、まずは一度自宅で落ち着いてから、家族と話し合って判断をしてみるのも良いでしょう。

重大な決断をするときは、一晩置いてじっくり考えてみましょう。

重大な決断をするときは、一晩置いてじっくり考えてみましょう。

—インターネットで症状や病名を検索して、さまざまな情報を目にすると、不安になったり、かかりつけ医の診療方針に疑問を感じてしまいます。

 インターネットに書かれている情報は、すべて正しいとは限りません。ごく稀に起こるイレギュラーなことが、さも一般的なことのように書かれていたり、古い情報が残っていることもあります。

 もちろん、インターネットで調べるのは構いませんが、インターネットの情報とかかりつけ医の話が異なったとき、インターネットを信じるのはやめたほうがいいですね。

—高額な治療を提案されたときは、どうすればいいですか?

 「獣医さんには治療以外の話はできない」と思っている飼い主さんもいらっしゃいますが、治療費についての相談も獣医さんにして良いんです。

 獣医さんは、基本的に「救える命は救う」というスタンスですが、飼い主さんにとっては、それが高額であったり、治療ではなく延命であった場合、治療をすることが必ずしも最善ではありません。

 命に関わるような重大な局面になったとき、どのような対応をするのか、飼い主さんはあらかじめ考えておいて、それをしっかりと獣医さんに伝えてください。

獣医さんは、大切なペットの健康を守る「仲間」です。

獣医さんは、大切なペットの健康を守る「仲間」です。

 獣医さんとのコミュニケーションが原因で転院を繰り返したり、動物病院が信用できなくなったり……となってしまうのは、とても残念なことです。

 まずは、飼い主さんの思いや考えを獣医さんに伝えてください。そして獣医さんの話がわからなかったら、納得するまで、十分に話し合ってください。

 獣医さんは、飼い主さんと一緒に大切なペットの体や命を守る、“仲間”です。話し合うことで仲間同士の理解が深まり、より良い治療につながっていきます。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。

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