2022/4/28
愛犬の爪のお手入れ、上手にできていますか?
猫のように爪研ぎをしない犬は、どのように爪のお手入れをすれば良いのでしょうか?
獣医師の三宅先生に、犬の爪切りをする際のポイントについてうかがいました。
まず、犬の爪と猫の爪は、構造が違います。
猫は、爪を研ぐことで古い爪がサヤを取るように、スポッと抜けます。だから爪研ぎをしていれば、爪が伸びすぎてしまう心配はありません。
一方犬の爪は、人間の爪のようにどんどん伸びていくので、定期的に爪を切る必要があります。
散歩の際に爪が削れるため、よく歩く犬とそうではない犬とでは、爪を切る頻度が変わってくることがあります。
しかし、全ての爪が均等に削れるわけではないので、「うちの犬はよく散歩に行っているから大丈夫」と思わずに、定期的に爪のチェックをしてあげてください。
加えて、地面に接していない5本目の爪「狼爪(ろうそう)」は普段の生活で削れることがないので、切ってあげる必要があります。
※狼爪:いわゆる「犬の親指」で、狼であったときの名残であると言われています。生まれた直後に切除されていることもあれば、狼爪が2本ある犬種もいます。
猫の爪切りについては、「獣医さん直伝!愛猫の爪切りは「ちょい切りルール」で簡単に!」も併せてご覧ください。
爪を研ぐという行為はしないので、必要ないでしょう。よく犬がソファやクッションを引っかくような素振りを見せますが、爪を研ぎたいわけではなく、土を掘りたくて行っていると考えられます。
爪が伸びたことが原因で、肉球が地面にしっかり接地しづらくなります。それが原因でスムーズな歩行ができなくなったり、滑ったり転んだりする危険が増えてしまいます。
また、伸びた爪が引っかかり、根元から折れてしまうこともあります。
さらに、爪は弧を描くように伸びるため、徐々に巻いていきそのまま肉球に刺さるケースもあります。
月に1回くらいで良いと思いますが、先ほどもお話したように、よく歩く犬とそうではない犬などで伸び方は変わってきます。
四肢で立った際に、爪の先が床に付かない程度が理想的です。
フローリングを歩く時に、“カシャカシャ”鳴るようであれば、伸びすぎかもしれません。
爪切りは、ハサミタイプのものよりも、ギロチンタイプのもののほうが扱いやすいと思います。
また、爪を切りすぎて出血させてしまったときに備えて、止血剤を用意しておくと安心です。ペットショップやトリミングショップで取り扱っていることが多いです。
猫の場合は先端の細い部分を切り落とせばよいので一回切ればいいのですが、犬の爪は根元から先まで同じ太さの円柱状なので、1回でバチンと切るよりも、角を取るように角度を変えながら少しずつ切るほうがおすすめです。
野菜の「面取り」をするイメージでおこなってもらうと、爪先が丸く仕上がり、爪があたった時にも痛くなくていいですよ。
横から見ると血管が透けて見えるので、血管の数ミリ手前まで切るようにすると安全です。爪が黒い場合は、切断面が白から透明っぽい色に変わるタイミングでやめておくといいでしょう。
切りすぎると出血しますし、なにより犬が痛がりますので十分注意しましょう。
出血部位に清潔なコットンなどをあてて、1~2分圧迫していれば通常は止まります。止血剤を使用すると、もっと早く血を止めることができます。
爪が伸びると、中の血管と神経も伸びます。そのため、しばらく爪切りをせずにかなり伸びた状態から、こまめに爪を切っていた頃と同じ長さまで切ろうとすると、中の血管や神経を傷つけてしまうため出血してしまうでしょう。
そのようなときは、動物病院に相談することをおすすめします。
犬を四肢で立たせ、爪切りをしたい肢を軽く後ろに曲げるようにして持って行うと、爪を切っている様子が犬から見えないため、あまり気にせずにいてくれることが多いです。肢を持ち上げすぎたり、敏感な肢先を強く握ったりしないようにします。
床で爪切りを行うよりは、テーブルなどの上に載せたほうが切りやすいですが、落下事故には十分気をつけましょう。
二人で行う場合は、一人にご褒美のおやつを与えてもらったり、軽く体を支えてもらったりするといいでしょう。抱いているほうが大人しいという場合ではもちろん一人に抱いてもらって行っても良いです。
痛い思いや嫌な思いをすると爪切りを嫌いになってしまい、今後爪を切るたびに犬も飼い主さんも大変な思いをすることになってしまうので、無理をさせず丁寧に行いましょう。
犬が爪切りにストレスを感じている様子(口をクチャクチャする、舌なめずりする、あくびをするなど)や嫌がる様子を見せたら、暴れる前に休憩を挟みます。一気に全ての爪を切るのではなく、少しずつ切り進めて終わったらほめてあげて、おやつや遊びなどのご褒美をあげましょう。
子犬の頃から慣らしておけば、犬の体の大きさに関わらず爪切りは行えますが、無理やり押さえられた経験や痛かった経験などをしている場合は、難しいかもしれません。
トリミングサロンや動物病院でも、犬の爪切りができます。「爪切り程度で病院に行くなんて」と思わずに、ぜひ足を運んでください。動物病院での犬の爪切りは、決して珍しいことではありません。
犬自身は爪が伸びすぎて歩きづらかったり、走っていて滑ってしまったりしてもそれを直接訴えることはできません。爪が伸びすぎる前に、飼い主さんが気づいてあげたいですね。
犬の爪切りは、犬も飼い主さんも慣れてくるとスムーズにできますが、難しい場合は、気軽に動物病院にご相談ください。
犬の爪は常に清潔に保つ必要がありますが、爪切りの回数は増やしすぎず、愛犬に合った頻度で行うようにしましょう。
爪を深く切りすぎて出血させてしまった場合は、傷口を清潔に保つために散歩を控え、靴下をはかせたり、傷口を舐めないようにエリザベスカラーを着用させたりすることもあります。
爪切りの頻度は犬によって異なりますが、成犬であれば3週間から1ヵ月に1回程度が目安になります。愛犬の適切な爪の長さがわかりにくい場合は、一度動物病院やトリミングサロンなどでプロに爪切りをしてもらい、ベストな長さを写真で記録しておきましょう。その上で、爪切りを行った日付を記録しておくと、愛犬に丁度いい爪の長さと爪切りのペースが分かります。
毎日のケアとしては、散歩後に足を拭くときに爪の汚れもしっかり落としてあげるといいでしょう。その際に、爪の長さ、割れや欠けがないかなど、爪の状態をチェックしましょう。
犬の爪切りは、慣れない方にとっては「難しい」と感じることもあるかもしれませんが、愛犬とのコミュニケーションの時間と捉えてぜひ少しずつチャレンジしてみてください。
もちろん、無理をせずに動物病院やトリミングサロン、ペットショップなどにお任せしてもいいでしょう。
大切なことは、「誰が切るか」ではなく、適切な頻度で爪をカットして、愛犬にとって丁度いい長さに保ち、ケガや足腰の負担などを予防することです。ご自身でカットする場合でも、プロに任せる場合でも、愛犬の爪の状態は小まめにチェックしてあげましょう。