2016/12/29
ふと気づくと、なんだか目を痒そうにこすっていたり、目ヤニがたくさん出ていたり……。ペットも人間同様に、様々な目の病気にかかります。
小柄な動物が素早く動くためには、「目」はとても重要な器官です。
また、会話ができないペットにとって、飼い主さんとの「アイコンタクト」は大切なコミュニケーション。
もし病気になってしまったら、早めに適切な処置をとってあげたいですよね。
ペットの目の病気とその予防法、点眼のコツなどを獣医師の三宅先生にうかがいました。
—「猫は夜目が効く」などと言いますが、犬や猫の目の構造は、人間と違うのでしょうか?
基本的にはほとんど同じですが、犬猫の目は、人間にはない“タペタム層”があります。光が当たるとキラッと光る部分ですね。そこで反射するので、少ない光でも見やすいという性質があります。
—視力についてはどうでしょうか?
人間と比較すると、犬も猫もあまり良くないとは言われています。色彩も人間ほど鮮やかには見えていないようです。
しかし、動く獲物を見つける動体視力はとても優れているようです。
—人間は、生活習慣や加齢、白内障などの病気で視力が低下しますが、犬や猫の場合はどうでしょうか?
白内障や緑内障などの病気は、犬や猫にもあります。
人間は、パソコンや細かい文字を長時間見ると目が疲れたりピントが合わせづらくなったりしますが、犬や猫ではそのような行動はしないため、生活習慣による視力低下というのはなかなか判断が難しいですね。
—ペットの視力低下に気づくのは、どのような時でしょうか?
目線が合わなくなったり、犬の場合は夜の散歩を嫌がるようになったり、急につまずくようになったら、視力が低下しているかもしれません。
また目が見えにくくなると、急に体に触れられることを怖がります。いつものように触っているのにビクッと驚いたり怒るようになったりしたら、視力が低下しているかもしれません。
目が見えているかどうかは動物病院で検査することもできますし、ご家庭では、たとえば綿など音のしない軽いものを顔の近くで落として、それを目で追うかどうかで確認することもできます。
—犬や猫の目の疾患には、どのようなものが多いのでしょうか?
主な原因はぶつけたり、引っ掻いたりといった「外傷」ですね。角膜に傷ができると、目を開けづらそうにしたり、目ヤニや涙が過剰に出たりします。
また角膜に当たるところにまつげが生えてしまう“異所性まつげ”が原因の場合もあります。その場合は、定期的に抜く必要がありますね。
—目を傷つけてしまう原因はなんでしょうか?
目をこすって自分の爪で傷つけてしまったり、多頭飼育の場合はじゃれていて傷つけることも多いでしょう。
また先程お話した“異所性まつげ”や、目の周りの長い毛が原因になることもあります。
犬ではパグやチワワ、猫ではペルシャやエキゾチックなど、鼻が短い犬猫は、目と鼻にあまり高低差がないため、匂いをかぐために鼻を近づけることで、目があたってしまい傷をつけることがあります。
—目を傷つけないようにするために、家庭でできる対策はありますか?
爪を短く切っておくことと、目の周りの毛が気になる場合はカットすることです。
視力が低下している場合は、部屋の模様替えなどをして家具の位置などが変わるとぶつかってしまうことが増えるので、できるだけ環境を変えないようにしてあげましょう。
ペットの爪切りについては、こちらをご参照ください。
獣医さん直伝!愛猫の爪切りは「ちょい切りルール」で簡単に!
獣医師が教える!犬の爪切りの方法とコツ!嫌がる犬への対処法も解説
—目の周りの毛が茶色くなる「涙やけ」は、病気のサインですか?
「涙やけ」は、白っぽい毛の場合は赤茶色に変色するためとても気になりますが、眼の下あたりが少し濡れている程度は問題ありません。
しかし、あまりに涙が多い場合は、眼の病気であったり、鼻涙管(涙が鼻に抜けていく管)の問題であったりする場合もあります。
—目ヤニがある程度出ている状態は、正常ですか?
目頭にちょっとついている程度であればさほど心配いりませんが、黄色や緑色、灰色っぽい目ヤニが出ていたら、感染などを起こしている恐れがあります。
—捨て猫や野良猫は、目ヤニで目が開かなくなっていることもありますよね?
猫の目が開くのは大体生後10日くらいなのですが、そのときに何らかの原因でちゃんと目が開かなかったり、また野良猫によくある風邪の症状を起こすウイルスに感染していることもあります。
キチンと治療すれば目がパッチリと開くこともあるので、早めの受診が必要です。
—目の病気について、良く受ける相談はありますか?
「外出して、帰宅してみたら目を細めている、ショボショボしている、充血している」というご相談が多いですね。おそらく何らかの外傷がありますので、早めに動物病院に行きましょう。
すぐに病院に行けない場合は、自分で目をこすって刺激しないように、エリザベスカラーなどを付けてあげると良いでしょう。
—ペットの目の治療は、どのようにして行うのでしょうか?
疾患によって異なりますが、人と同様に点眼薬(目薬)を用いることが多いですね。
—点眼を嫌がる動物もたくさんいます。上手に点眼をするコツは?
顔の正面から近づくと怖がりますので、横に立っておでこの方から指すようにしてあげると良いですよ。
—家庭で点眼できない場合は、動物病院に通っても良いのでしょうか?
もちろん、点眼のために通院していただいても何の問題もありません。
症状がひどい場合は、1日4~5回の点眼が必要になることもありますので、日中は病院に預けたり、入院したりして治療することもあります。
—ペットの目の健康について、日頃から気をつけることはありますか?
目をしきりにこすって気にしていたり、目を開けづらそうにしていたり、目ヤニや充血の症状があるなど、ちょっとでもおかしいなと思ったらすぐに動物病院へ行ってください。
目の病気は進行が早いこともあるので、早めの治療が肝心です。