2021/12/23
猫を飼っている人の悩みで多いのが、「猫の噛み癖」。万が一、誰かに噛みつき怪我をさせてしまったら大変ですよね。今回は出血を伴うような、度を過ぎた噛み癖がある場合の効果的ななおし方を見ていきます。
元々、狩猟動物であった猫には、今でも狩猟本能が残っています。そのため、本能を刺激する動きや音やにおいを感じると、空腹でなくても獲物を狙う動作をしてしまいます。実は猫が噛んだりひっかいたりするのは、ある意味当たり前の行動です。
しかし、猫が噛む時にはしっかりとした理由があります。例えば、飼い主さんに甘えたいときの甘噛みなどもそのひとつです。甘噛みであれば問題ないので、飼い主さんが噛んだ状況と意味を冷静に判断し、それに適した対応をすることが重要です。
子猫は基本的に好奇心がとても旺盛です。特に動くものは、狩りの対象(おもちゃ)だと思っているため、なかなか反応させないようにするのは難しいものです。
しかし、子猫はじゃれ合いの中で噛む加減を学んでいきます。例えば兄弟とじゃれ合うことで、仲間同士の限度(甘噛み)を体得することができます。興奮し本気で噛み合い痛い思いをしたり、大きな声で悲鳴をあげたり、またはもっと強く噛み返すという攻撃と防御のやりとりをする中で徐々に加減がわかってくるわけです。
そのため、本来は新しく迎え入れる子猫は最低生後2~3ヶ月までは、親兄弟との生活を経験させるのがベスト。そういった経験がない場合は、しつけなど飼い主さんの方で工夫をしてあげる必要があります。
猫を飼っていると、その可愛さからついついたくさん撫でたくなってしまうもの。
しかし、時には撫ですぎることで、猫も撫でられるのが不快に感じてくることもあるようです。猫によって許容範囲が異なるので、猫の性格にあわせて適度なスキンシップをとりましょう。
対策としては、不快に思っている反応を見逃さないようにすること。
スキンシップをとると、実は猫は細かい反応を返してくれています。その反応の中に、嫌がったり、不快に感じているというサインが隠れています。
耳をピクピクさせる、嫌そうに身体をよじる、しっぽを素早くパタパタするなどしたら要注意。それらの反応を見たら、すぐに触るのを止めてあげてください。
猫がもっと飼い主さんに遊んでほしいと思っている場合です。飼い主さんを噛むことで遊びに誘っています。
対策は、思う存分に遊んであげること。その際、遊んでほしいという欲求を満たしてあげると同時に、しつけも並立して行うことが重要です。
しつけは、大声を出したり、たたいたりするのはNG。飼い主さんを怖がらせる原因になってしまいます。缶などにコインを入れて振る、物を落とすなど、猫の嫌がる音で注意しましょう。
また猫の嫌がるにおいをあらかじめ手につけておくのもよい方法です。噛み癖対策用の市販グッズやミントなどの調理用ハーブを試してみましょう。当然ですが、なめて毒になるものはNGです。
生まれて間もなく親猫から離され、一匹で育てられたペットショップ育ちの猫などは噛み癖のある猫が多い傾向にあります。
対策としては、多頭飼いが一番ですが(多頭飼いのポイントはこちらから)、難しい場合は、2)に記した音での注意や、嫌がるにおいなどを用いたしつけを行うことで徐々に改善させていきましょう。
また子猫の乳歯は生後1ヶ月で生え揃い、3ヶ月~6ヶ月で生えかわります。抜けた歯は飲み込んでしまうことが多いので、生えかわったことに気付かない飼い主さんも多いようです。
この頃は、歯がとてもかゆくなるのが特徴。当然かゆさを軽減するため、何かを噛みたくなってしまいます。
対策としては、ゴムのおもちゃやぬいぐるみなど、猫が気に入ったものを用意し、手を噛んだらすかさずおもちゃにすりかえてください。動くものに興味を示すため、おもちゃを動かしてあげるとより効果的です。
噛み癖のある猫を飼い始めた時や、しつけの途中にはどうしても噛まれてしまうケースもあると思います。このとき、すこし血が出ただけで大した傷じゃないからとそのまま放置するのは危険です。
なぜなら、猫の口内に生息するパスツレラ・マルトシダ菌によって、パスツレラ症という人畜共通感染症(ズーノーシス)を起こすことがあるからです。
パスツレラ症は30分~2日で皮膚症状、呼吸器症状の出る感染症。主な症状は、傷ができたところが腫れ、化膿します。その他、呼吸器系の疾患や、外耳炎等の局所感染、まれに敗血症や骨髄炎、髄膜炎等の全身重症感染症、さらには死亡例も出ています。
高齢者や糖尿病患者、免疫不全患者等の免疫力の弱い方に感染しやすく、重症化の例も少なくありません。猫に噛まれたら、すぐに流水できれいに洗い流し手当をしましょう。もし心配と思われる症状が出たら、早めに医療機関で診察を受けてください。
しつけをするのはたしかに時間と根気が必要ですが、お互い快適な生活が送れるようしっかりと飼い主さんが工夫をしてあげましょう。噛み癖のない分別のある猫に成長するよう、ぜひ頑張ってみてください!
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。