2017/05/09
今、飼い犬の約半数が「肥満」だと言われています。人間同様、肥満は万病の元。肥満の予防やダイエット方法について、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—まず、犬の「肥満」はどういう状態なのでしょうか?
人間同様に、脂肪によって体重の増加している状態が肥満です。個々の犬の適正体重から15%以上増加していたら、肥満の可能性があります。
超大型犬種などを除き、多くの犬は1歳の時点から体格は大きく変化しないので、そのときの体重を適正体重とみなすことができます。1歳のときの体重と比較して増えていたら、それは肥満の可能性があると考えて良いでしょう。
また、「ボディコンディションスコア(BCS)」という指標に照らし合わせてみることも大切です。理想体型は「3」です。
自分が飼育している犬と、同じ犬種で理想体型の犬とを比較出来ると分かりやすいかと思いますが、なかなかそのような機会にも恵まれないでしょうし、「●●犬の標準体重は○kg」というような情報も、体格に違いがあれば参考になりません。
定期的に体重を測ったり、体型をチェックしたりして、それぞれの犬にとっての適正体重・体型を維持できるように注意してください。
—犬が肥満になる原因は何でしょうか?
運動不足とカロリーの取りすぎです。特に食事やおやつでカロリーを取りすぎていることが多いと思います。
犬は自分で食べるものを準備しているわけではありませんから、食事やおやつを与えている飼い主さんがコントロールする必要があります。
—人間の場合、肥満は内臓や骨、関節などの病気の原因となりますが、犬の場合はどうでしょうか?
犬も人間と同様に、肥満は万病の元と考えていただいて良いと思います。肢や腰に負担がかかったり、呼吸器や循環器への影響も考慮しなくてはいけません。
また全身麻酔のリスクが高くなることも知られていますので、手術が必要になったときなども心配ですね。
—太りやすい体質の犬もいるのでしょうか?
狩猟犬や牧羊犬など多くの運動量を必要としている犬種は、そうでない犬種よりもたくさん運動をさせてあげてほしいです。
また、どの犬種でも、去勢・避妊をすると太りやすくなりますので、食事量を減らす、低カロリーの食事に変更する、などの調整が必要です。
—大型犬より小型犬の方が太りやすい、などの傾向はありますか?
体質的に傾向があるとは言えませんが、人が思う1口のおやつは、60kgの超大型犬にとっても同じように1口かもしれませんが、6kgの犬にとっては1口分ではなく10口分ですよね。
飼い主さんがついつい自分の基準で「1口くらい…」とあげてしまうようであれば、体が小さい犬の方が肥満になりやすいでしょう。
—シニアになると太りやすくなる、ということはありますか?
体質としては変わりませんが、シニアになるとあまり運動ができなくなって、その結果太ることもあります。
—重症の肥満の場合、投薬治療などをすることもありますか?
それはほとんどありませんが、ダイエット用の療法食を勧められることはあります。
—食事の適正量は、どのようにしたらわかりますか?
フードの袋に、体重に対しての適正量が記載されているので、それを参考にしてください。
ただし基準にするには、「自分の犬の理想体重」です。
たとえば、犬の体重が5kgだったとします。BCSが3であれば5kgが理想体重と言えますので、フードの表を見るときに5kgの犬の1日適正量を参考にします。しかし、BCSが5だった場合どうでしょうか。太った結果の体重なので、この場合、5kgは理想体重ではないですよね。5kgの場合の適正量を参考にしていたら、いつまでたっても痩せることはできません。
このように、まずは自分の犬の体格を見て、その上で理想体重を考えてフード量を決めるようにしましょう。
フードを1番最初にあげるときに計量カップなどでしっかり分量を計って、2回目以降はその分量を目安にして「このお皿の大体これくらい」という程度で大丈夫ですよ。
—フードは、1日何回に分けてあげると良いのでしょうか? 食事回数によって太りにくい、太りやすいの違いはありますか?
特にありません。1日にあげる総量さえ守れば、食事回数は何回でもかまいませんし、食事の時間帯も特に気にする必要はありません。
—犬は、与えただけすべての量を食べてしまう動物ですか?
個体差がありますので、食に興味のない犬もいますが、基本的には「食べられるときに食べる」性質の動物です。だから、すぐに食べ切ったからといって、量が足りないわけではありません。
—急に食事を減らすのは犬がかわいそうな気もしますが、どう対処すれば良いでしょうか?
まず、急激に食事量を減らすと犬にストレスが溜まるだけではなく、健康を損ねることもありますので、主治医の先生と相談しながら段階を踏んで食事量を調整していく必要があります。また食事量が減ることにより空腹を感じ、胃酸過多で胃酸を嘔吐することもあります。
そのため、食事量をあまり変えずに与えられる低カロリーのダイエット用フードに変更したり、水分でふやかしてかさ増ししてあげることもおすすめです。
もちろん、食事量をわずかに減らすだけで対応できそうな場合は、今までのフードそのままで対応していただいても構いません。
ドッグフードの選び方については、こちらをご参照ください。
→ドッグフードの正しい選び方|愛犬の健康と成長のために
犬同様、猫の肥満防止にもフードの与え方が重要です。過去の記事でキャットフードの選び方についてもご紹介していますので、ご覧ください。
→猫の餌って何がいいの?適切な食事の回数、選び方から与え方まで
—運動不足も肥満の原因ですか?
そうですね。犬種によって必要な運動量は違いますから、しっかりと調べて十分な運動をさせてください。
小型犬の場合、運動量的には室内遊びで十分な場合もありますが、緊張感を感じながら歩く散歩は、消費カロリーも多くなります。
本来、犬は散歩や運動が好きな動物ですが、肥満になって動きにくくなったり、関節を痛めたりすると、動きたがらなくなります。
犬が本来持っている運動する喜びを奪わないためにも、肥満の解消が必要ですね。
—犬の肥満を予防するためには、どうすればよいでしょうか?
「おねだりされたから」「よろこぶ様子がみたいから」という理由でおやつをあげすぎないように気をつけたいですね。食べることが好きな犬の場合は、普段食べているフードを1粒あげるだけでも、十分ご褒美にもおやつにもなるのでおすすめです。
「ほんの少しだから良いだろう」と思っても、その1口は体の小さな犬にとっては「過度な分量」になってしまいます。まずはそのことを、しっかりと理解していただきたいですね。
特に家族で飼っている場合は、家族全員で気をつける必要があります。
人間の勝手な都合で犬を肥満にさせないためには、まずは飼い主さんの努力が必要です。