2017/06/13
猫は、便秘になりやすい動物です。人間は市販の便秘薬を服用したり、マッサージや運動をして便秘を改善しますが、猫の場合はどのようにすれば良いのでしょうか?
猫の便秘の原因や、家庭でできる改善方法について、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—猫の場合、何日くらい便が出ないと「便秘」なのでしょうか?
本来排泄されるべき便が、お腹の中に残っている状態が「便秘」です。
丸2日便が出ていなければ便秘だと言えますが、たとえば便が出ていても硬くて小さいポロポロしたものであれば、それもまた便秘ですね。
—猫が便秘になる原因は、何なのでしょうか?
猫の便秘原因は、様々です。まずは食事が合っていないことが考えられますが、その他にも水分不足や、うまく吐き出せなかった毛玉が影響していることもあります。また年を取って筋肉が落ちたり、消化管の運動が鈍くなったりして便秘になることもあります。
—猫は、便秘をしやすい動物なのでしょうか?
そうですね、猫は基本的に便秘になりやすい動物だと言えます。あまり水を飲まないことや、毛づくろいにより毛を飲み込みやすいことが関連しているのではないでしょうか。
—人間の場合、女性のほうが便秘になりやすいと言いますが、猫の場合もそうですか?
猫の場合は、便秘になりやすさに性差はありません。
—長毛種・短毛種など、種類によって便秘になりやすいということはありますか?
種類によっての違いはありませんが、長毛種のほうが飲み込む毛の量が多いので、それが便秘の原因になりやすいということはあります。
毎日ブラッシングして抜け毛を減らすことは、皮膚の清潔さを保つためだけでなく、毛の飲み込み防止にも必要なお世話です。
—便秘になってしまったら、飼い主さんはどのように対応すれば良いでしょうか?
まずは、食事の見直しです。もし最近フードの種類を変更したのであれば、便秘になる前の体調が良かった頃に食べていたものに戻してみましょう。
猫の飼い主さんの中には、頻繁にフードの種類を変更する方もいらっしゃいますが、体調を崩したら一つ前のフードに戻して様子を見るのが、基本的な対応になります。
—よく「便秘には食物繊維」と言いますが、猫に対してもそうでしょうか?
通常の食事に加えて、かぼちゃやさつまいもなどを茹でてペースト状にし、それを少しだけ総合栄養食に混ぜてあげると、食物繊維を補うことができます。
ただ、食物繊維を摂りすぎても便秘になってしまいますので、ほんの少し加える程度で良いと思います。
また総合栄養食そのものを、食物繊維が多い療法食に変更する方法もあります。
猫のエサ選びについては、「猫の餌って何がいいの?適切な食事の回数、選び方から与え方まで」もあわせてご覧ください。
—「猫草」を食べることは、食物繊維を摂るのに役立ちますか?
猫は肉食動物なので、植物をそのまま食べても消化・吸収できません。
猫草は、猫の栄養にとって特に必要なものではないんですよ。なぜ猫が猫草を食べるのか、理由はハッキリわかっていません。おそらく胃がムカムカしているときに吐きやすくするために食べているのかもしれませんね。
—人間同様に、運動やお腹のマッサージも効果がありますか?
もちろん、できるのであればやったほうが良いですね。ただ、マッサージを好まない猫も多いので、無理にやる必要はありません。
—水をあまり飲まない猫は、どのように水分を摂らせたら良いでしょうか?
食事をウェットフードに変更して、食事から水分を摂るのが良いですね。
子猫のときはドライフードを熱湯でふやかしたものを冷まして与えますが、食べにくいので成猫はあまり好まないかもしれません。
猫の好みによりますが、肉の茹で汁などを好むようでしたら、食事に混ぜてあげるのも良いでしょう。
—牛乳などを与えるのはどうでしょうか?
牛乳は下痢をしやすいので、あげるのであれば猫用ミルクか、ヤギミルクにしてください。
—人間の浣腸剤などを猫に使っても良いでしょうか?
それはやめてください。たとえ赤ちゃん用のものであっても、人間用の薬を獣医師の許可なく使用するのは、危険なので絶対にやめてください。
—猫用トイレの環境で、気をつけるべきことはありますか?
トイレは、猫が落ち着ける場所に設置するのが基本です。便秘をしているからと言って、特に場所を変更する必要はありません。
またトイレが汚れていることを嫌がって排泄を我慢してしまい、その結果便秘になることもあります。特に多頭飼育の場合は、トイレは「猫の数プラス1つ」を用意するようにしましょう。
猫のトイレ環境については、「猫のトイレ、しつけは楽って本当?粗相の原因、置く場所や数を見直そう!」もあわせてご覧ください。
—便秘状態が何日くらい続いたら受診すべきでしょうか?
食事内容を見直してみて、それでも2日間便秘状態が続いたら、受診をしたほうが良いでしょう。
—単なる便秘だと思っていたら他の病気の症状だった、ということもあるのでしょうか?
あります。たとえば、肛門や腸に炎症などがあり排便時に痛みがある、神経に問題があり排便のコントロールができなかったりふんばる力が入らない、異物誤飲や腫瘍など通過傷害を起こす原因がある、これらは全て便秘の原因になり得ます。
その判断をするためにも、まずは受診して獣医さんに相談してください。
—便秘の治療は、どのようなことを行うのでしょうか?
脱水が原因で便秘になっているのであれば、まずは脱水の治療をします。食事の内容が適切でない場合は療法食を処方したり、便を柔らかくする薬を飲ませることもあります。
状態がひどいときは、下剤を使ったり、直腸に手を入れて便を取り出す「摘便」を行うこともあります。
便秘が続くと、食欲が落ちてグッタリすることがあります。また、いきんでも便が出ない状態は、猫にとっても辛いものです。食事を改善しても便秘が続くようでしたら、早目の受診をおすすめします。