2020/10/30
くしゃみや鼻水、鼻づまり。猫も人間同様に風邪をひくことがあります。人間ならちょっとした風邪なら放っておきがちですが、猫は重症になってしまうことも。
猫が風邪をひいたときの対処法や治療法について、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—「風邪」と一口に言っても、その症状は様々ですし、原因は違いますよね。いわゆる「猫の風邪」と言われているのは、どのような病気なのでしょうか。
一般的には、猫のヘルペスウイルスや、カリシウイルスの感染症が多いですね。くしゃみ・鼻水・涙目・咳などの、一般的な風邪症状が出ます。
—室内で飼育されている猫は、どのようにそれらのウイルスに感染するのでしょうか?
野良猫の場合はお互いにグルーミングをしたり、近くでエサを食べたりすることで感染しますが、室内単頭飼育の場合でも、家に来る前の環境ですでに感染しているケースもあります。
これらのウイルスは、一度感染すると症状がおさまっても潜在的に残っているので、何らかのキッカケで症状が出ることがあるんです。
また、飼い主さんがウイルスを媒介することもあります。外で野良猫を触って、そのまま自分の飼い猫に触ると感染させてしまうことがあるので、他の猫を触ったときはしっかりと手を洗ったほうがいいですね。
—一度ウイルスに感染したら、潜在的に残るものなのですか?
すべてのウイルスがそうではありませんが、ヘルペスウイルスとカリシウイルスに関しては、潜在的に残ります。一度症状がおさまっても、たとえば出産や他の病気で体力が落ちていたり、ストレスを感じることで、再び症状が表れることがあります。
—人間だと、ちょっとした風邪なら「放っておけば治る」と考えがちですが、猫の場合はどの程度の症状になったら受診すべきでしょうか?
基本的には、くしゃみや鼻水などの症状が出たら、受診して治療をしたほうが良いでしょう。
ウイルスが体内に入ってくると、体の中にそのウイルスに対する抗体ができます。しかし抗体ができるまでにはある程度時間がかかるので、それまでの間に体が弱ってしまうことになります。特に体力がない子猫などは、重症化することもあります。
また体が弱ると細菌などで二次感染を起こし、気管支炎や肺炎などになってしまうこともあります。
—「鼻が乾いていると風邪をひいている」と言われますが、本当ですか?
それは、あまり関係ありません。脱水症状を起こしているときは鼻が乾燥するかもしれませんが、単に空気が乾燥しているだけかもしれませんので、一概には言えません。
—単なる風邪だと思っていたら、実は別の病気だった、ということもありますか?
それもあります。風邪の症状に似ている病気は、アレルギーや歯周病、猫喘息、また鼻の中に腫瘍ができた場合など、色々あります。
それらを判断するためにも、早目に受診をしたほうが良いですね。
—病院では、どのような治療をするのですか?
治療としては、ウイルスの活性を抑えながら、症状に対処していくのが一般的です。
抗ウイルス剤や、二次感染を抑えるために抗生剤を投薬したり、また涙や結膜炎など目に強い症状が出たときは点眼薬も処方されます。場合によっては、ウイルスの活性を抑えるインターフェロンの注射をすることもあります。
—治療期間はどれくらいですか?
一般的に、ウイルスに感染すると2週間程度は症状が出ます。早い場合でも1週間は薬を飲むことになると思います。
—複数の猫を飼育している場合、他の猫が感染しないようにするためにはどうすればよいでしょうか?
それは、隔離するしかないですね。一緒の空間にいて感染しないようにするのは、とても難しいです。
—人間や犬など他の動物の風邪が猫にうつることもありますか?
それはありません。人間や犬などとはウイルスの型が異なるため、猫の風邪が人間や犬にうつったり、人間の風邪が猫や犬にうつったりすることは通常はありません。
—家庭でできる予防法はありますか?
たとえば庭に野良猫などが入ってきやすい環境であるなら、感染リスクは高いと思っていたほうが良いですね。野良猫と網戸越しに接触するだけでも感染することはありますので、窓やドアはしっかりと閉めておきましょう。
また体力が落ちていたり、ストレスを感じているときに症状が出やすいので、日頃から食事に気をつけたり、ストレスの少ない環境を整えてあげるようにしてください。
そして何より、定期的な予防接種を受けることです。ヘルペスウイルスとカリシウイルスは注射で予防できますし、感染した場合でも軽症で済むことがあります。
猫の予防接種に関して詳しくは、「猫を感染症から守るワクチン接種。種類、費用、副作用のリスクは?」もあわせてご覧ください。
定期的な予防接種を受けて、栄養バランスの良い食事を摂って、ストレスなく元気に過ごす。それでも症状が出た場合は、早目に受診するようにしましょう。