2022/07/14
人間もペットも高齢化が進んでくると、気にかかるのが、飼い主さんに万が一のことがあった場合に残されるペットのこと。「自分がペットの世話をできなくなったら、どうしたらいいの?」とお悩みの飼い主さんのために、健康なうちに考えておきたい、遺産や飼育費用についてご紹介します。
平成25年に改正・施行された「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」では、飼い主さんがペットを最後まで責任をもって面倒をみる「終生飼養」が努力義務として明文化されました。しかし、ペットよりも先に飼い主さんが病気になったり、亡くなったりして飼育できなくなった場合は、どうすればよいのでしょうか。
家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査結果の概要によると、アンケートに回答した飼育者の年齢は、60歳以上が24.0%を占めています。おおよそ4人に1人が「シニア層」と呼ばれる年代であることがわかります。
いつ、飼い主さんがペットの世話ができなくなる日がやってくるのか…それは誰にもわかりません。
「大富豪が飼い猫や飼い犬に数億円の遺産を相続!」というニュースを耳にしたことがあるかもしれませんが、これらはすべて海外の話。日本の法律では、ペットに財産を遺すことはできません。
では、飼い主さんの死後にペットの生活を保障するためには、どのような方法があるのでしょうか?
■負担付遺贈
負担付遺贈とは、財産を相続することと引き換えに、一定の義務を負担することです。たとえば飼い主さん(遺贈者)が、誰か特定の人(受遺者)を指定して、「残されたペットの世話をするのであれば、財産を渡す」といった形で遺言を残すことができます。
この方法は、生前に受遺者との合意が得られていれば大きな問題はありません。しかし受遺者は遺贈を放棄することもできるので、確実性という点では低くなります。
■負担付死因贈与契約
負担付死因贈与契約とは、相手との間で「自分が死亡した場合はペットの世話をすることを条件に財産を渡す」という内容の契約をすることです。契約であれば、相手が一方的に撤回することができないので、負担付遺贈よりは確実性が高くなります。
■ペットのための相続信託
ペットのための相続信託とは、あらかじめペットの生活に必要な費用を「信託財産」として監督人に預けておく仕組みで、NPO団体や一般社団法人などで行っています。また弁護士や行政書士などにも相談できます。信託法の民事信託に基づいて手続きされ、監督人は飼い主さんの代わりに、ペットを飼育する人や団体(受託者)に対し、定期的に費用を支給したり、正しく飼育しているかを監督したりします。信託財産は契約で決められた範囲内での支出しか認められないので、財産をペットの飼育費用としてのみ支出することができます。
負担付遺贈や負担付死因贈与契約と異なる点は、あらかじめ飼育費用を準備する必要があることです。
いずれの場合も、弁護士や司法書士、行政書士など法律の専門家に相談する必要があります。自治体などにも法律相談窓口がありますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
飼い主さんが存命でも、体調不良等でペットの世話ができなくなる可能性もあります。
そのようなときには、信頼できる施設や団体にペットを預ける方法があります。
■長期預かり施設
日本全国には、犬や猫を終身で介護してくれる民間施設があります。全国の老犬ホーム相談窓口を運営している「老犬ケア」によると、有料で入居している犬は636頭、猫は107頭でした(*)。
愛するペットと別れなくてはならない日は、必ずやってきます。もし飼い主さんの身に何かがあったとき、残されたペットが安心して過ごすためにベストな方法はどれなのか。飼い主さんが健康な今のうちに、きちんと考えておく必要があるかもしれません。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。