2017/12/07
寝起きに目をこすると、目ヤニが出ていることは人間にも猫にもあります。しかし、あまりに大量の目ヤニが出ているとしたら、それは病気のサインかもしれません。
猫に目ヤニが出る原因・病気・治療法、そして飼い主さんでもできる目薬をさすコツを、獣医師の三宅先生にうかがいました。
※犬や猫の目ヤニや充血については、「犬・猫の目ヤニや充血は何のサイン?獣医さんに聞きました 」もあわせてご覧ください。
—どのような目ヤニが出ていたら、病気が疑われますか?
目ヤニは老廃物の一種で、通常は瞬きをしたら涙と一緒に流れてしまう程度の量しか出ません。もし猫を見て「目ヤニが出ているな」と気になるようであったら、それはもう普通じゃない状態だと考えて良いでしょう。
目ヤニの量が増えていたり、色が緑色や黄色であったら、目に何らかのトラブルが起きていると考えられます。多くの場合、結膜炎か角膜炎ですね。
白目やまぶたの内側が充血していたら、結膜炎が疑われます。
—大量の目ヤニが出ると、目を痒がりますか?
痒がることもありますし、あまりに痛いと目が開かずに、目がショボショボすることもあります。また涙が増えたり、白目が充血することもあります。
—目ヤニが大量に出ていると、視力に影響がありますか?
視力と目ヤニは、直接的な関係はありません。
—結膜炎とは、どのような病気ですか?
目の「結膜」部分に炎症を起こしている状態です。炎症の原因は様々で、アレルギー物質や風邪のウイルス、何らかの細菌が目に入ってしまうこともあります。
ウイルスは一度目につくと、症状は改善してもそこからウイルスがいなくなることはありません。ですから、一度沈静化していたウイルスが、体調が悪くなったときに再び活性化して、また結膜炎になってしまうこともあります。
—結膜炎以外に、目ヤニが出る病気にはどのようなものがありますか?
角膜炎ですね。角膜炎は、引っ掻くなどして角膜に傷がつき、そこが炎症を起こす病気です。
自分の爪で引っ掻くこともありますし、多頭飼育の場合はじゃれ合っていて傷つけてしまうこともあります。また家具などにぶつかって、傷ができることもあります。
—結膜炎や角膜炎は、どのように治療するのでしょうか?
基本的には目薬で治療を行いますが、ウイルス感染が原因の場合は、ウイルス活性を抑えるような注射や投薬を行うこともあります。
角膜炎の場合は傷の深さによって違いますが、軽度のものであれば、目薬をしっかりさしていれば治ります。
傷が深い場合は、角膜を保護するコンタクトレンズをして、一時的にまぶたを縫い合わせる「眼瞼縫合(がんけんほうごう)」をすることがあります。治療が終わると縫合を解きます。
—人間の場合は、汚れた手で目をこすると結膜炎になると言いますが、猫の場合もそうですか?
猫の場合は、多くは猫風邪を起こすようなウイルスの感染などが原因となりますが、汚れや異物が入って炎症を起こすこともあり得ます。
—アレルギー性結膜炎は、アレルゲンを特定することはできますか?
猫にもアレルギー検査を行うことはできますが、全身の痒みなどを訴えているケース以外で検査を行うことは、稀です。
—治療中は、エリザベスカラーや眼帯はしますか?
猫が気にしていじってしまうようだったら、エリザベスカラーは必須です。
また眼帯を猫につけるのは、不可能だと思います。つけられたとしても、そこで雑菌が繁殖してしまうおそれがあるので、やめた方がいいでしょう。
—結膜炎や角膜炎を治療せずに放っておくと、どうなってしまいますか?
結膜炎を放っておくと、痒くて掻いてしまうので、その結果眼球を傷つけて、そこから角膜炎になってしまうことがあります。
また角膜炎は傷の進行が早いと、「角膜穿孔」と言って角膜に穴があき、最悪の場合視力がなくなったりします。
さらに「ぶどう膜炎」を併発すると、それが原因で緑内障になることもあります。
—長毛種、短毛種など、猫種によってかかりやすい、かかりにくいはありますか?
猫にはまつげがありませんし、長毛種でも目の近くまで毛が生えているわけではないので、あまり関係ありませんね。
ただ、ペルシャ猫のように顔の構造上目が飛び出している場合は、目をつぶっていても、まぶたが目を覆いきれないため、乾燥してしまいます。その結果、ドライアイとなって角膜が傷つきやすくなることもあります。
—目ヤニが出ていたら、家ではどのようにお手入れすればよいですか?
目ヤニが出ていると目が開きにくくなるので、優しく拭き取ってあげてください。
固まってしまった目ヤニは、濡らしたタオルなどでふやかしながら取ってください。
—目薬をさすコツを教えてください。
床に猫がいる状態で目薬をさそうとすると、人間が覆いかぶさるようになるので猫は怖がります。
テーブルを壁につけて、そこに猫を乗せて後ろに下がれない状態にし、頭の後ろから猫に目薬が見えないようにしてさすと、上手くいくでしょう。
「たかが目ヤニ、そのうち良くなるだろう」と放っておくと、どんどん酷くなって失明の可能性もあります。通常とは違う目ヤニに気づいたら、すぐに動物病院を受診しましょう。