2018/09/20
猫が、まるで顔を洗うように手で顔をこする仕草。とっても可愛らしいですよね。顔を擦ったり、体を舐めたり、毛づくろいする行動を「グルーミング」と言います。なぜ猫がグルーミングを行うのか?それにはさまざまな理由がありました。
今回は、猫のグルーミングの秘密と、「猫が顔を洗うと雨が降る」という言い伝えの真偽についてご紹介します。
猫が「顔を洗う」などのグルーミングを行う理由はさまざまですが、代表的なものは以下の5つです。
猫はとてもきれい好きな生き物です。体に汚れがついてしまったら、自分で舐めたりこすったりして汚れを落としています。
野生では、ニオイを発していると敵から見つかりやすくなったり、狩りがしづらくなったりします。食事の後に特に口の周りをこすっているのは、食べ物のニオイを消すための本能的な行動です。
猫は足の裏以外からは汗をかきません。暑いときは自分で体を舐めて、唾液の水分が蒸発するときの“気化熱”で体温を下げようとします。
反対に寒いときは、体をこすることで被毛の間に空気の層ができ、保温効果を高めています。
体を舐めたりこすったりすることで、血流が促進され、全身の血行が良くなります。
また唾液には感染症予防の効果もありますので、全身に唾液を塗って病気から自分の体を守っています。
ノミやダニがついた場合は、自分で舐めて取り除くこともあります。
例えば棚から落ちてしまったり、他の猫とケンカをしたり、飼い主に怒られたりなど、猫がストレスを感じたときに、それを紛らわすためにグルーミングを行い、気持ちを落ち着かせます。
これを動物行動学的には「転位行動」と呼びます。
「猫が顔を洗うと雨が降る」という言葉を聞いたことはありませんか?
猫の仕草とお天気の関係は古くから言い伝えられてきたようで、明治43年に出版された猫研究書である『猫』(石田孫太郎)の中では、
「猫顔を拭ふてその手耳を越せば降雨」
「猫顔を拭ふてその手耳を越さねば晴天」
などが紹介されています。
また『日本俗信辞典』の中では「猫の洗面と晴雨」として
「猫の手水は雨(筑前地方)」
「猫が背中から頭を撫で下ろせば長雨(沖縄・竹富島)」
「猫が口元だけ洗うときは雨(岐阜)」
など、これら以外にも数々の俗信が紹介されています。
この「猫が顔を洗うこと」と「雨が降る」の関係については、科学的にも因果関係が検証されています。
雨が降る前には、空気中に湿気が多くなります。すると猫の顔についたノミが活発に動き出して顔がかゆくなるため、顔をよくこするようになります。
また猫のヒゲは、湿気を感じる「センサー」のような役割をしています。低気圧が近づくと空気中の湿気が多くなり、ヒゲの表面に水分が付着して重たくなり、ヒゲの“ハリ”が失われます。そこで猫はヒゲのハリを取り戻すため、顔をこすってヒゲの手入れをしているのです。
このような理由から、猫が顔をこすって洗っているときは、湿気が多く雨が降りそうなお天気だということになったのです。
猫のヒゲについては、「猫のヒゲの秘密 お財布に入れて金運UP?!」もあわせてご覧ください。
適度なグルーミングは猫の健康に良いことですが、過剰なグルーミングを繰り返している場合、何らかのトラブルが考えられます。
[過剰なグルーミングをする理由]
目ヤニが出ていたり目が充血している場合は、「犬・猫の目ヤニや充血は何のサイン?獣医さんに聞きました」もあわせてご覧ください。
グルーミングを無理にやめさせると、かえってそれがストレスの原因になります。
ストレスを感じている様子が見られたら、運動をさせたり、一緒に遊んだり、落ち着ける場所を作ったりして、できるだけ猫がリラックスできるように配慮しましょう。
そして様子を観察し、皮膚や目などに異常が認められたり、舐めすぎて脱毛が起こっているような場合は、獣医師に相談してください。
猫が「顔を洗う」行動には、さまざまな理由がありました。
言葉でのおしゃべりはできませんが、行動や仕草で愛猫が今どのような状態なのか、ちゃんと理解してあげたいですね!
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。