2018/11/15
朝晩の空気がひんやりするこの時期は、ストーブやコタツなどの暖房器具のそばでじっとしている猫の姿をよく見かけます。ぬくぬくと気持ちよさそうにくつろいでいますが、もしかすると「低温やけど」になってしまうかも……。低温やけどとはどのような状態なのか、予防法や対処法についてご紹介します。
低温やけどとは、湯たんぽやホットカーペットなど多少触れた程度では問題ない40~50度程度のものに、長時間接触することで起きるやけどです。
お湯やガスの火など高温のものであれば、少し触れただけでも痛みを感じるので、すぐに対処することができます。
しかし低温やけどは、ゆっくりと進行するため気づきにくく、気づいたときにはすでに重症化している場合もあります。
やけどのレベルは、以下の4段階に分かれています。
Ⅰ度熱傷:皮膚の表面(表皮)が赤くなってヒリヒリする状態
Ⅱ度熱傷:皮膚が赤くなり、水ぶくれができて痛がる状態
Ⅲ度熱傷:皮下組織までダメージを受け、知覚が消失するため痛みを感じない状態
Ⅳ度熱傷:骨や筋肉など、深い部位までダメージを受けた状態
一般的に低温やけどは軽症の場合が多いのですが、触れている時間が長時間になればなるほどじわじわと皮膚の深いところに達し、重症化します。
猫の場合、44度程度の暖房器具に3~4時間、46度程度の暖房器具に1時間程度触れていると、低温やけどを発症する可能性があると言われています。
人間と比較すると、猫は低温やけどになりやすい傾向があります。
猫の平熱は38度程度と、人間よりもやや高くなっています。また皮膚が厚く、体毛がミッシリ生えている猫は、人間よりも熱さを感じにくくなっています。つまり、猫は人間よりも熱さに「鈍感」なのです。
しかし熱さを感じないからと言って、皮膚がダメージを受けないわけではありません。
熱さを感じにくいためにずっとストーブのそばにいて、熱さに気づいた頃にはやけど状態になってしまった……ということも十分にあり得ます。
また猫の皮膚は体毛に隠れて見えないため、飼い主さんが皮膚の異常に気づきにくいことも、重症化する原因の一つです。
暖房器具を使用する時期は、愛猫の皮膚の状態をこまめにチェックしておきましょう。
もし飼い猫にこんな様子が見られたら、低温やけどを発症しているかもしれません。
低温やけどをしたら、まずは濡れたタオルや氷袋で患部を10分以上冷やし、すぐに動物病院に連れていきましょう。
動物病院では、患部を冷やしながら消毒をし、状態にあわせて抗生物質や抗炎症剤などの内科的治療を行います。そして、「湿潤療法」と呼ばれる患部を乾燥させない治療を行います。
やけどが広範囲に及んで脱水症状を起こしている場合は、点滴も行います。
皮膚がただれてケロイド状になってしまった場合は、皮膚移植などの外科的治療が必要なこともあります。
家庭では、猫が治療中の患部を舐めたり触ったりしないように、エリザベスカラーを着用したり、服を着せるなどして対応します。
愛猫を低温やけどさせないために、暖房器具には以下のような注意が必要です。
また、暖房器具以外で猫が温かく過ごせるように環境を整えることも重要です。
くわしくは「冬を元気に乗り切る!猫にとってベストな寒さ対策とは?」もあわせてご覧ください。
愛猫が低温やけどにならずに冬を過ごせるように、飼い主さんは室内環境の見直しと日々の皮膚チェックをお願いします!
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。