2018/12/11
愛犬の体が急に硬直したり、痙攣したら、それは「てんかん」の発作かもしれません。犬がてんかんになる原因や発作中の対処法、治療法について獣医師の三宅先生にうかがいました。
—なぜ、犬がてんかんになるのでしょうか?
人間のてんかんには、脳に障害や傷があることによって発作が起こるものと、脳の構造には何も障害がないのに発作が起こる原因不明のものがあります。
犬で問題となるてんかんは、後者の原因不明のものです。ビーグルやシェパード、コーギー、スパニエルなどはてんかん発作を起こしやすい犬種と言われており遺伝的要因も考えられますが、明確にはわかっていません。
—てんかんを持病とする犬は、どれくらい存在するのでしょうか?
ある文献によると、すべての犬の0.5~2%程度と言われています。
—老犬がてんかんになりやすいのでしょうか?
年齢は関係ありません。若い犬でもてんかん発作を起こすことはあります。
—発作を起こすと、どのような状態になるのでしょうか?
最も多いのは、体の硬直です。四肢が痙攣してバタバタしたり、あごを噛みしめたり、よだれがたくさん出ることもあります。
軽い発作ではあくびを繰り返すようなものもあり、飼い主さんが気づかない可能性もあります。(*)
ほとんどの発作は、数分程度でおさまります。
*ただし、発作ではなくストレスや緊張が原因であくびを繰り返すこともあります。
—発作を起こしたとき、飼い主さんはどう対処すべきでしょうか?
犬に呼びかけたり体に触れたりすると新たな刺激となり、次の発作を誘発する原因となることもあります。
犬には触れずに見守るだけにして、周囲に危険なものがあったらぶつからないように移動させておきましょう。
余裕があれば、発作が起きた日時や発作の継続時間、状況などをメモしておくとその後の対策に役立つこともあります。
—発作を起こしたら、すぐに動物病院に連れて行った方が良いですか?
何らかの発作を起こしたら、まずは動物病院に相談しましょう。
発作を起こす病気は、てんかんだけではありません。脳炎や脳腫瘍などの場合も発作を起こします。
動物病院で血液検査などを行い、他の病気の可能性がすべて除外されて初めて、てんかんだと診断されることになります。
もしてんかんだと診断されても、発作の頻度が1ヵ月に1回以下であれば、治療の対象とはなりません。
—生活環境など、外的要因が発作の原因となることもありますか?
全般的に「これ」というものはありませんが、発作時の状況をメモしておくことで、その犬ごとの傾向がわかってくることもあります。
—てんかん発作が、死の原因となることはありますか?
重い発作が連続して起きた場合は危険なこともありますが、発作が起きたからといって死に直結するわけではありません。
—てんかんの治療は、どのようなことを行うのでしょうか?
抗発作薬を定期的に飲み、発作の回数を少なくします。治療の最終目的は、発作を3ヵ月に1回程度に抑えることです。発作を完全に無くすことはできません。
発作をコントロールできるようになるまでに、数年かかることもあります。症状が強い場合は薬の量や種類を変えながら、発作の回数が少なくなるようにします。
—犬以外の動物も、てんかんになるのでしょうか?
スナネズミは脳の構造上の問題でてんかんになりやすいと言われています。
年をとった猫もてんかんになりやすいと言われていますが、犬の方が多い傾向です。
—発作中以外の日常生活で、気をつけることはありますか?
特にありません。食事や運動など、普段どおりの日常生活を送ることができます。
痙攣の発作=てんかん、ではありません。何らかの発作が起きたら動物病院に相談し、てんかんの診断が出たら、定期的な投薬を欠かさないようにしましょう。