2019/01/15
愛猫の体に円形の脱毛が見られたら、「猫カビ」の症状かもしれません。「猫カビ」とはどのような病気なのか、症状や感染経路、治療法や感染した場合の対処法について、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—「猫カビ」とはどのような病気なのでしょうか?
「猫カビ」は正式な病名ではありません。一般的に「猫カビ」と言われているのは、主に皮膚真菌症の一種である「皮膚糸状菌症」を指しています。
糸状菌は真菌、つまりカビの一種なので、「猫カビ」と称されているのだと思います。
—皮膚糸状菌症になると、どのような症状が出ますか?
糸状菌は猫の皮膚に感染し、感染した部位が円形に脱毛したり、フケが出たり、カサブタになることもあります。
痒みはほとんどないこともあれば、非常に強い場合もあり、様々です。
—皮膚糸状菌症にはどのように感染するのでしょうか?
動物から動物へと感染します。感染動物の毛や皮膚表面に糸状菌がついているので、それに接触することで次々と感染が広がります。
多頭飼育している場合は、感染猫が出たら他の猫と隔離しましょう。
—「カビ」のように湿気が多い季節にかかりやすいのでしょうか?
温度や湿度などは、感染にあまり影響ありません。
—猫以外の動物にも感染するのでしょうか?
糸状菌症は人獣共通感染症なので、人間にも感染します。
—感染した動物に接触する機会がなければ、新たに感染することはありませんか?
ペットがたくさん集まる場所や、衛生状態の悪いトリミングサロンなどで感染する恐れはあるかもしれませんが、完全室内飼育であればほとんど心配はありません。
—感染しやすい猫の種類はありますか?
基本的に感染した猫と一緒にいれば、他の猫も感染するものと考えておいたほうが良いでしょう。
その中でも特に、子猫や基礎疾患を持っている猫、猫エイズなど免疫力が低下している猫は感染する可能性が高いです。
また糸状菌は毛に多くつくため、長毛種のほうが感染する可能性が高くなります。
—皮膚糸状菌症は、どのような治療をするのでしょうか?
患部の毛を剃って薬を塗り、定期的に薬用シャンプーで殺菌します。その治療を続けて1ヵ月程度経過しても効果が見られないようであれば、抗真菌剤などの内服薬を使用します。
治療の最初に全身の毛を剃ってしまえば、薬が塗りやすいし薬用シャンプーも浸透しやすくなり、なにより物理的に毛についた菌を除去できるので治癒も早くなるのですが、毛剃りを嫌がる飼い主さんも多いです。そうなると、治療が長引くこともあります。
—皮膚糸状菌症が治ったら、脱毛部分に再び毛が生えますか?
通常は毛はまた生えてきますので、心配ありません。
—皮膚糸状菌症にならないために、どのような予防法がありますか?
感染している猫と接触しなければ、基本的に心配ありません。
多頭飼育の場合は、感染猫と他の猫が接触しないように注意してください。直接的な接触だけでなく、ブラシやベッドなど布製品を介して感染することもあります。
もし感染した場合は、掃除機や粘着テープで抜け毛をしっかりと取り除き、家具や床は塩素系漂白剤を希釈した液で消毒しましょう。
猫ベッドなどの布製品は、廃棄してしまったほうが良いです。
—一般的に、猫は皮膚病にかかりやすいのでしょうか?
猫は体が柔らかいので、痒いところがあるとそこを舐めてしまい、舐め壊すことで症状が悪化することもあります。
また塗り薬も舐めてしまうので、場合によってはエリザベスカラーなどを装着する必要があります。
飼い猫の体に脱毛やカサブタができていたり、痒がっている様子が見られたら、皮膚糸状菌症に限らず何らかの皮膚トラブルの場合があります。動物病院に相談して、適切な治療を受けてください。