2019/05/21
人間同様、犬の死亡原因第一位は「悪性腫瘍(がん)」です。「リンパ腫」も悪性腫瘍の一つですが、どのような治療を行うのでしょうか?獣医師の三宅先生にうかがいました。
—リンパ腫とは、どのような病気でしょうか?
動物の体内には、リンパ球という細胞が巡っています。その細胞が増殖して悪性腫瘍(がん)となったのが「リンパ腫」です。
—リンパ腫は、すべて「悪性」なのでしょうか?「良性腫瘍」の場合もありますか?
悪性度の違いはありますが、リンパ腫はすべて悪性腫瘍です。
—どこの部位に腫瘍が発生するのでしょうか?
リンパ球は体中に存在しますので、どこの部位でも発生する可能性があります。
その中でも多いのは、体の表面にある「体表リンパ節」に発生するケースです。
【犬の体表リンパ節】
—リンパ腫ができたら、外側から腫れているのがわかりますか?
発生部位が体表リンパ節であれば、触って気づくこともありますが、内臓など体内にできてしまった場合は、画像診断でしか発見できません。
—どのような原因で、リンパ腫になるのでしょうか?
リンパ腫になる原因は、今のところ不明です。
—リンパ腫になりやすい年齢や犬種はありますか?
中高齢に多く見られる病気で、アメリカでは、ゴールデン・レトリーバー、ボクサー、バセット・ハウンドが好発犬種として報告されています。
—リンパ腫だと診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか。
病気の進行度(ステージ)によって内容は異なりますが、積極的な治療を行うのであれば、基本的には人間同様に抗がん剤治療です。あわせて、ステロイドの内服などを勧められる場合もあります。
病理検査や画像診断で内臓や末梢血への転移の有無などを調べ、治療の方針を決定します。
犬のリンパ腫のステージは、以下のようになっています。
【犬のリンパ腫 ステージ分類】
ステージⅠ | 単独のリンパ節やリンパ器官に限局 |
---|---|
ステージⅡ | 局所リンパ節の腫脹 |
ステージⅢ | 全身のリンパ節の腫脹 |
ステージⅣ | 肝臓、脾臓への浸潤 |
ステージⅤ | 血液、骨髄、またはその他の部位への浸潤 |
—外科的に腫瘍を取り除くことはないのでしょうか?
リンパ腫の場合は、外科的治療は効果がないため行いません。
—人間は抗がん剤を使用すると副作用がありますが、犬も同様でしょうか?
犬の場合は、人間のように脱毛などの副作用はあまり出ません。まれに吐いたりすることもありますが、人間ほど副作用で苦しむことはないでしょう。
通院で抗がん剤治療を続けながら、日常では通常通り生活する犬もいます。
—治療をしない場合は、どうなりますか?
ステージにもよりますが、短い期間で亡くなります。
—抗がん剤治療をすれば、腫瘍がなくなるのでしょうか?
抗がん剤治療では、病状がおさまって「寛解」しますが、完治ではありません。寛解したとしても、その後、健康なときほど長く生きられるわけではありません。
しかし、犬は人間の4倍のスピードで年をとります。寛解後の寿命が1年だったとしても、人間で考えると4年間生きたことになりますので、決して治療が無駄になるわけではありません。
—リンパ腫を早期発見するために、飼い主さんができることはなんでしょうか?
普段からスキンシップをとり、健康なときの体表の状態をよく触って覚えていてください。
そうしておけば、何か異変があったときでも、気づきやすくなります。
リンパ腫は死に至る悪性腫瘍ではありますが、抗がん剤治療が確立しているので、比較的治療を進めやすい病気だとも言えます。
何か異常を発見したらすぐに動物病院で診察を受け、もしリンパ腫だと診断された場合はどのような治療をするのか、獣医師とよく相談してください。