2021/11/16
古来「猫にまたたび」ということわざがあるように、多くの猫はまたたびが大好きです。またたびを食べることで、まるで陶酔したように楽しく動き回る姿を見せることもあります。そういった普段は見せない行動は非常に可愛らしいものですが、与え方を間違えると危険な場合もあるため注意が必要です。今回は、猫がまたたびに興奮する理由や危険性、適切な与え方のポイントをご紹介します。
またたびとは、マタタビ科マタタビ属の木で山に自生しています。
またたびの木には、正常な実と「虫えい果」と呼ばれる実の2種類がなります。猫が好むとされているのは「虫えい果」で、ハエやアブラムシが実に卵を産み付けることで変形したものです。表面がつるんとした楕円形の正常な実に対し、「虫えい果」は表面が凸凹としています。
枝や実、粉末やスプレー状のものなどが市販されており、猫が食べたり匂いを嗅いだりすることで反応が期待されます。
またたびによる反応は、猫の上あごにあるヤコブソン器官(フェロモンを感知する器官)を、マタタビラクトンやアクチニジンといった、またたび特有の成分が通ることにより引き起こされます。
成分がヤコブソン器官を通ることにより中枢神経が麻痺するため、猫によっては転げ回ったり走り回ったりといった、陶酔したような姿を見せることがあるのです。
中には、酔っ払った状態に似ていることから依存性を心配する飼い主さんもいらっしゃいますが、一時的なもので依存性はほとんどないとされています。
ではまたたびを与えることによって、猫にはどのような効果があるのでしょうか。
またたびには様々な効き目がありますが、反応には個体差があります。ここでは主なものを見ていきます。
一時的に活発になり、思い切り運動することでストレス解消が見込めます。運動不足解消にもおすすめです。
食欲が落ちている時に、またたび入りの餌や水を与えると効果が期待できます。しかし、食欲不振は病気の可能性もあるので、様子がおかしい場合は早めに病院に連れて行ってください。
猫は餌を食べる時にあまり咀嚼をしないので、またたびの入ったオモチャをかじることで脳が刺激を受け、老化防止につながると言われています。
このように良い効果が期待されるまたたびですが、与え方を間違えると危険性もあるので注意が必要です。
大量に与えすぎると、中枢神経が異常麻痺を起こす可能性があります。最悪の場合は、呼吸困難になってしまうこともあるので要注意です。
また飼い主さんが出かけている時に、またたびの実を見つけて丸呑みしてしまうなどの事故にも注意が必要です。他にも、またたび入りのオモチャが壊れて中の粉末が出てきてしまうなど、事故により過剰摂取をしてしまうケースは少なくありません。
猫の留守番に関する留意点などについては、「飼い主が外泊しても大丈夫?猫のお留守番 準備と注意点」でもご紹介しています。ぜひご覧ください。
このような事態を防ぐためには、与え方や保管場所には常に気を配っておく必要があります。猫の目の届かない場所にしまっておくだけでも、事故の危険性は下がります。猫が自分で取り出せない場所にまたたびが保管されているか必ずチェックしましょう。
また、「粉末、液体、実、枝」の順で強度が高いとされています。強度によって適量が変わるため、必ず飼い主さんの方で把握してください。愛猫のために適切な与え方を知ることが大切です。
全ての猫に共通した適切な与え方が決まっているわけではありません。愛猫の様子を見つつ、注意点をしっかりおさえ、猫の負担にならないようにしましょう。
幼猫のうちは与えない方が良いとされています。体内の器官が十分に発達していないとパニックを起こす可能性があります。
市販の製品には、推奨年齢が記載されているものもあるので、必ず確認してください。
また、老猫や心臓に疾患がある猫にとっては体に負担をかけてしまうので、無理に与えないようにしましょう。
最初は少し嗅がせる程度から始めるのが望ましいです。
個体差があるので、様子を見ながら少しずつ量を増やしていき、愛猫の適量を判断しましょう。
匂いを嗅がせる方法と直接食べさせる・舐めさせる方法があり、それぞれ特徴があります。
匂いを嗅がせる方法は、刺激は弱いですが長続きします。この方法はオモチャに仕込むのが一般的です。
反対に、直接食べさせる・舐めさせる方法は、刺激は強いものの効き目が短いです。美味しそうに舐めることがありますが、上あごのヤコブソン器官に擦り込んでいると考えられていて、飲み込むとすぐに効果が薄れます。
毎日だと効果が薄れていくこともあるので、しつけのご褒美といった特別な時に与えるなど、間をあけると良いでしょう。
猫の嗜好品といえるまたたび。昔から猫にも人にも親しまれており、猫と飼い主さんとの絆を深めるにも良いツールとなります。
ただ、与え方を間違えてしまうと危険性もあります。ポイントをしっかりおさえて、効果的に活用したいですね。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。