2019/06/06
生後間もない子猫が感染すると、高確率で死に至る「猫白血病ウイルス感染症」とは、どのような病気なのでしょうか?感染経路や症状、予防方法について、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—「猫白血病ウイルス感染症」とは、どのような病気でしょうか?
「猫白血病ウイルス」に感染したことによって引き起こされる、様々な病気の総称です。
「白血病」という名前がついていますが、白血病だけでなく、免疫不全やリンパ腫、貧血などを発症することもあります。
—猫白血病ウイルスには、どのような経緯で感染するのでしょうか?
感染している野良猫との接触や、母猫が感染している場合は母胎や乳汁を介して感染します。
比較的感染力が強いウイルスなので、感染猫と同じお皿を使ったり、毛づくろいをし合ったりする程度でも感染することがあります。
多頭飼育をしていて一頭が感染している場合は、他の猫と隔離する必要があります。
ペットショップやブリーダーから購入し、その時点の血液検査で問題がなく、完全室内飼育をする場合であれば、ほとんど感染する可能性はありません。
—猫白血病ウイルスに感染すると、すべての猫が重篤な病気を発病するのでしょうか?
感染時の猫の免疫力によって異なります。
免疫力が低い生まれたばかりの子猫の場合、感染すると高い確率で体内でウイルスが増え続ける「持続感染」という状態になります。
感染時の年齢が高いほど持続感染をする割合は低くなり、1歳を超えていれば多くの場合でウイルスの増殖が抑えられます。
持続感染をしている状態だと、ほとんどの猫が数年以内に何らかの症状が出て亡くなると言われています。
—どうすれば、持続感染の状態にならないのでしょうか?
猫自身の免疫力で、ウイルスの増殖を抑えることができるかどうかによります。1歳を過ぎると免疫力が高くなるため、ウイルスの増殖を抑えられる割合も増えてきます。
—猫白血病ウイルス感染症になると、どのような症状になるのでしょうか?
初期症状としては、くしゃみや発熱、食欲減退といった、風邪に似た症状です。その段階で血液検査をして、猫白血病ウイルスへの感染が認められたら、猫白血病ウイルス感染症と診断されます。
その後どのような症状になるのか、白血病なのか、免疫不全なのか、貧血なのかは、初期の時点ではわかりません。
—猫白血病ウイルス感染症は、どのような治療をするのでしょうか?
様々な症状が現れるため、何を発症するかで治療法は異なります。
白血病やリンパ腫の場合は抗がん剤治療、貧血の場合は定期的な輸血などです。また、ウイルスの増殖を抑えるためのインターフェロン治療などを行う場合もあります。
—体内のウイルスを直接駆除するような治療方法はないのでしょうか?
ウイルス自体を減らしたり駆除するような治療法は、ありません。
—血液検査で猫白血病ウイルスが認められた場合、その後はどのように生活すれば良いでしょうか?
感染していてもすぐに発症しない場合もあるので、定期的に血液検査をして様子を見ましょう。
また、その猫がウイルス感染源となってしまいますので、外に出してはいけません。多頭飼育の場合は、他の猫と隔離してください。
感染している猫を出産させたり、新しい猫を迎えたりといった、猫のストレスになるようなことも避けてください。
—猫白血病ウイルス感染症にならないためには、どうすれば良いでしょうか?
何より、感染している猫と接触しないことです。外に出さず、完全室内飼育をしていれば、感染する恐れはありません。
—予防接種をすれば感染を防げますか?
動物病院で接種を行っている「4種混合」以上のワクチンであれば、猫白血病ウイルス感染症の予防ワクチンが含まれています。
ワクチン接種にはリスクも伴います。完全室内飼育で、感染猫と接触する可能性が無ければ、特に接種の必要はありません。
むやみに接種をするのではなく、接種をするかどうかは獣医師と相談し、生活環境によって判断してください。
猫の予防接種については「猫を感染症から守るワクチン接種。種類、費用、副作用のリスクは?」もあわせてご覧ください。
—感染していることがわかった後に、ワクチン接種をしたら効果がありますか?
感染後にワクチン接種をしても、効果はありません。
猫白血病ウイルス感染症が発病するかどうかは、感染時の免疫力によって異なります。免疫力の弱い子猫の間は特に、野良猫に近づけたり、外に出したりしないよう十分注意してください。