2021/07/02
愛犬が、よく物にぶつかるようになった、散歩をしたがらなくなった、眼球に濁りがある…。これらの症状が見られたら、それは白内障のサインかもしれません。
犬の白内障の治療方法や日常生活での注意点について、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—白内障とはどのような病気ですか?
水晶体が白く濁って、視力が低下する病気です。症状が進行すると、失明する恐れがあります。
—人間の場合、60歳代の65%以上(*)は白内障だと言われていますが、犬の場合も年齢に関係があるのでしょうか?
もちろん加齢による水晶体の衰えも原因として挙げられますが、遺伝や糖尿病などの疾患、白内障以外の眼の病気の影響で白内障になることもあります。
【参照】
*http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000207.html
加齢が原因の白内障はシニア犬になってからですが、遺伝性の場合は若年でも発症することがあります。
—遺伝による白内障は、どのような犬種に多いのでしょうか?
遺伝性白内障は、多くの犬種に認められています。大型犬・小型犬に限らず、シベリアン・ハスキーやミニチュア・シュナウザー、ビーグル、ボストン・テリアなど、その他にもたくさんあります。
—白内障を発症しやすい、環境的な要因はあるのでしょうか?
外傷でも発症することがあるので、物がたくさん置いてある場所や植え込みなど目を傷つけやすい環境で生活していることが要因となることもあります。
それ以外の、例えば空気汚染や食生活などは特に関係ありません。
—白内障を発症することで、他の病気を併発することもありますか?
緑内障の併発が多いことが知られています。
—どのような様子が見られたら、白内障が疑われますか?
外から見てわかるのは、水晶体が白くなる点です。
しかし白内障以外でも、6~7歳頃のシニアになると水晶体の中心部が老化し、白く見えることもあります。これを「核硬化症」と言いますが、「核硬化症」であれば視力は落ちないので、治療の必要はありません。
愛犬の目が白っぽいかな?と思ったら動物病院を受診し、判断を仰ぎましょう。
また目が見えにくくなるので、夜間の散歩を嫌がったり、家の中でつまずいたり、壁伝いに歩いたりといった行動が見られるようになります。
—白内障と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか?
内科的な治療としては、点眼薬で病気の進行を遅らせます。しかし点眼薬だけでは根本的な治療は行えません。
外科的な治療としては、眼科専門医による手術があります。
—手術をすれば、完全に治るのでしょうか?
まずは眼科専門医の診察を受けて、手術適用かどうかを判断してもらう必要があります。症状が進行していて、手術をしても視力回復の見込みがない場合は、手術は行いません。
手術内容としては、白く濁った水晶体を取り、人工レンズを入れます。手術が成功すれば視力は回復します。
ただし、眼科手術は一般の動物病院ではほとんど行っておらず、眼科専門のクリニックに行く必要があります。
しかも動物の眼科専門医の数はあまり多くはないため、手術ができる場所は限られているのが現状です。
—白内障にならないための、予防方法はありますか?
予防方法はありません。
—愛犬が白内障になったら、何に気をつければ良いでしょうか?
室内で飼育しているのであれば、物の配置などを変えないことです。
犬は目がよく見えなくても、慣れ親しんだ場所であればある程度は記憶で行動ができます。
ぶつからないようにと物をどかしたり、トイレを交換したり、スロープをつけたりすると、かえって転んだりして危なくなるかもしれません。
また、目が見えない不安から攻撃的になることもあります。体に触るときはひと声かけて、安心させてからにしましょう。
—散歩に連れて行っても良いのでしょうか?
犬自身が散歩に行きたがるのであれば大丈夫です。交通量の多い場所が心配なのであれば、抱っこして公園などの安全な場所に連れていき、運動させてあげましょう。
白内障は、早期に発見できれば、手術で視力を回復できる可能性は高くなります。
愛犬の目の様子や行動に注意して、気になることがあればすぐに動物病院を受診しましょう。