2019/06/18
しっぽの長い猫、短い猫、丸まっている猫…。猫のしっぽは、とても個性豊かです。中でも、しっぽが途中で折れ曲がっていたり、短く丸まっていたりする猫のしっぽは「かぎしっぽ」と呼ばれ、古くから幸運を招く猫として愛されてきました。
では、かぎしっぽの猫はどのようにして生まれるのでしょうか?
しっぽが途中で曲がっていたり、短くてクルっと丸まっていたりする猫は、「かぎしっぽ猫」「尾曲がり猫」と呼ばれています。
猫のしっぽは、個体差はありますが一般的に18~20個の尾椎という骨で成り立っています。
その尾椎の一部が減少したり骨同士がくっついたり(癒合)すると、しっぽが短くなりクルッと丸まった状態になります。「Bob Tail(ボブテイル)」とも呼ばれ、「ジャパニーズ・ボブテイル」や「アメリカン・ボブテイル」などの猫種があります。
また、尾椎の一部が変形して半椎体化すると、かぎ状の折れ曲がった状態になります。これは「Kinked Tail(キンクドテイル)」とも呼ばれています。
猫がかぎしっぽになるのは、遺伝子による先天的な要因と、事故などによる後天的な要因があります。
かぎしっぽになる要因として考えられているのは、「尾無し猫」で知られるマンクスという猫種だけが持つ「T-Box」遺伝子の変異、あるいはジャパニーズ・ボブテイルをはじめとする猫種が持つ「HES7」遺伝子の変異です。
そして、まだ発見されていませんが、「HES7」遺伝子が変異していないかぎしっぽ猫が存在していることから、「第三の遺伝子」があると考えられています。
先天的な要因によるかぎしっぽであれば、特に健康上の問題はありません。
一方、子猫のときに母猫に押しつぶされたり、ドアに挟まれたりする事故などが原因で、後天的にしっぽが曲がってしまうこともあります。骨が柔らかい子猫の時期であればあまり影響が出ないこともありますが、成猫の場合は神経を傷めてしまい障害の原因となる場合もあります。
繊細な猫のしっぽを引っ張ったり踏んだりしないように十分注意し、もし事故が起きたらすぐに動物病院を受診しましょう。
しっぽを触る際の注意事項については、「猫のしっぽはこんなにすごい!?猫を支える2つの役割」もあわせてご覧ください。
長崎県に住む野良猫の約8割(*)は「HES7遺伝子」を持っているかぎしっぽ猫だと言われています。一体なぜでしょうか?その理由は、なんと江戸時代までさかのぼります。
【参照】
*長崎尾曲がりネコ学会
http://www.omagarinekogakkai.com/nagasaki/
「HES7遺伝子」によるかぎしっぽ猫の原産地は、インドネシアやマレーシア周辺など、東南アジアや中国南部の地域だと考えられています。
江戸時代、長崎県の出島ではオランダとの交易が行われていました。オランダ船の拠点の一つがインドネシアにあり、そこからやってくる船には積荷をネズミから守るための猫が乗っていました。そうして船と共にやってきたインドネシアの猫たちが長崎に住み着くようになり、今でも子孫たちが長崎には多く生息しているのです。
また江戸時代は、長いしっぽの猫が年をとると「猫又」という妖怪になると考えられていました。
「猫又」を恐れる当時の人々が、短いしっぽやかぎしっぽの猫を好んだために、積極的に繁殖されてきたとも言われています。浮世絵にも、多くのかぎしっぽ猫が描かれています。
かぎしっぽは、日本や中国では蔵の「錠前」のような形のかぎしっぽが、「財産を守ってくれる」商売繁盛のお守りとして大事にされてきました。
また、ヨーロッパではかぎの形が「幸運をひっかけてくれる」縁起の良い猫だとされ、かぎしっぽの猫がとても珍しいこともあって、見かけるだけでもラッキーだと言われています。
もしあなたが街中でかぎしっぽの猫を見かけたら、それは幸運の兆しかもしれませんよ!
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。