2019/10/17

獣医さんに聞く!猫の「尿路結石」種類や原因、治療法など

2019/10/17

獣医さんに聞く!猫の「尿路結石」種類や原因、治療法など

 おしっこに血が混じっている、おしっこの回数が多いなどの猫の排尿トラブル。軽い膀胱炎かな?と思って受診したら実は「尿路結石」だった、ということも。尿路結石とはどのような病気なのか、原因や治療法、予防法について獣医師の三宅先生にうかがいました。

「尿路結石」はどんな病気?

—尿路結石は、どのような病気でしょうか?

 腎臓で作られた尿が排泄されるまでの「尿路」のどこかの場所に結石ができるのが、尿路結石です。

腎臓から尿道までの間のどの場所にも、結石ができる可能性があります。

腎臓から尿道までの間のどの場所にも、結石ができる可能性があります。

—なぜ結石ができるのでしょうか?

 結石の種類によっても異なりますが、細菌感染が起因しているもの、肥満や運動不足で水を飲まずこまめに排尿しないこと、食べ物が関係しているもの、遺伝的な要因、などが考えられます。

—結石には、どのような種類があるのでしょうか?

 一番多いのが「ストルバイト結晶」によるもので、尿がアルカリ性になると作られやすくなる結晶です。尿路結石の過半数はこれが原因です。
 そして次に多いのが「シュウ酸カルシウム結晶」によるものです。この2種類が結石になる原因の大半を占めています。
 その他、あまり多くはありませんが、尿酸塩、リン酸カルシウム、シスチン、シリカ、などもあります。

—猫は腎臓病になりやすいと言われていますが、それも結石の原因となりますか?

 腎臓病になりやすいから結石ができやすいということはありませんが、結石が原因で腎臓病を起こすことはあります。
 猫の腎臓病については「獣医さんに聞く!猫の腎臓病 原因・症状・治療について」をご覧ください。

排尿の回数が少ないと、尿路結石の原因になることもあります。

排尿の回数が少ないと、尿路結石の原因になることもあります。

—結石になりやすい種類や年齢、性別はありますか?

 アメリカン・ショートヘアやヒマラヤン、スコティッシュ・フォールドなどの一部の純血種は、シュウ酸カルシウム結晶ができやすいという報告があります。
 年齢は、あまり関係ありません。
 また、猫ではオスとメスでも「結石のできやすさ」はあまり変わりませんが、メスは尿道が短く太いのに対し、オスは尿道が細く長いため、尿道に結石ができた場合はオスのほうが閉塞しやすく(詰まりやすく)なります。

—結石ができると、猫は痛みを感じますか?

 痛みを感じるかどうかは、結石ができる場所や大きさにもよります。
 膀胱内に小さな結石ができた場合はひどい痛みを訴えることは少ないかもしれませんが、尿道や尿管に詰まると異変を訴えるでしょう。

—飼い主さんは、どのような症状が出たら尿路結石だと気づくのでしょうか?

 結石や結晶(結石になる前の細かい粒子)が膀胱の粘膜を傷つけることによって、血尿や頻尿といった膀胱炎のような症状が出ます。その段階で尿検査をして、結石だと診断されることが多いです。
 また、結晶を含んだ尿はキラキラしているので、それを見て気づく飼い主さんもいます。
 中には、猫の具合が悪くなり画像診断をしたところ、尿管に石が詰まり腎臓が尿を膀胱へ送り出せず膨れ上がっている(水腎症)というようなこともあります。
 猫の膀胱炎については、「おしっこがいつもと違う?猫の膀胱炎はどうやって気付けばいいの?症状と対策方法」もあわせてご覧ください。

「尿路結石」の治療方法は?

—尿路結石の治療は、どのように行うのでしょうか?

 ストルバイト、尿酸塩、シスチンは、療法食による治療が可能です。
 これらの結石であれば、療法食で溶かすことができますが、摘出を検討しなくてはいけないこともあります。
 シュウ酸カルシウムは療法食で結石を溶かすことはできないため、結石を摘出する必要があります。
 細菌感染がある場合は、抗生剤を服用します。

療法食で結石を溶かしたり、結石を作りにくくしたりします。

療法食で結石を溶かしたり、結石を作りにくくしたりします。

 療法食を摂り、定期的に尿検査をして症状が治まっているのであれば、その後は通常の食事に戻すことが可能なこともありますが、結石ができやすい体質の場合は、生涯に渡って療法食を摂る必要があります。

—尿路結石が原因で、重症化してしまうことはありますか?

 結石により閉塞をおこしている場合は、尿毒症を起こす恐れがあります。
 また膀胱の粘膜が結石や結晶によって傷つき、そこから細菌感染を起こすこともあります。

「尿路結石」の予防方法は?

—尿路結石の予防方法はありますか?

 水を飲ませて、こまめに排尿させることです。
 あまり水を飲まない場合は食事をウェットフードに変える、汲み置きの水を好まない場合は流水タイプの水飲み器を使うなどして、できるだけ水を摂らせるようにしましょう。

猫が好む形で、できるだけ水分を摂らせるようにしましょう。。

猫が好む形で、できるだけ水分を摂らせるようにしましょう。

 また、トイレが汚れていたり、トイレの置いてある場所が怖い、などの理由で排尿を我慢する場合もあります。猫のトイレについては、「猫のトイレ、しつけは楽って本当?粗相の原因、置く場所や数を見直そう!」もあわせてご覧ください。
 また、肥満になるとトイレや水飲みを億劫がることがあります。食事量のコントロールや、室内の運動環境を整えるなどして、肥満防止を心がけてください。
 猫は一般的に、あまり水分を必要としない動物だと言われています。しかし、水分量が少ないと尿が濃くなり、尿路結石をはじめとする病気の原因にもなってしまいます。
 猫の好む形で無理なく水分が摂取できるよう、心がけてあげましょう。

三宅亜希先生
お話しいただいた先生 /
三宅 亜希 先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。
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