2019/12/03
小型犬に多いと言われる「気管虚脱」とは、どのような病気なのでしょうか?最悪の場合は呼吸困難に至ることもある「気管虚脱」の発症原因や治療法、予防法などについて、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—気管虚脱とは、どのような病気ですか?
気管は、鼻や口と肺をつなぐ、空気の通り道です。ホースのような形状になっていて、チューブ状の気管の外側をC形の軟骨が覆うことで、丸い形を保っています。
気管虚脱は、何らかの原因で軟骨が歪んだために気管が潰れたような形になり、呼吸が苦しくなる病気です。咳が出たり、異常な呼吸音がしたり、ひどくなると呼吸困難になることもあります。
—気管虚脱になる原因はなんですか?
はっきりとした原因はわかっていません。
マルチーズやチワワ、ヨークシャテリアなど、「トイ種」と呼ばれる小型愛玩犬種に多く見られるため、遺伝が影響しているのではないか、と言われています。
また、太りすぎや吠えすぎ、過度に首輪を引っ張ることなどによる物理的な気管の圧迫も原因として考えられます。
高温多湿の地域で多く見られることから、それも原因の一つではないか、とも言われています。
—大型犬や、犬以外の動物でもなる病気でしょうか?
大型犬にはあまり見られません。
猫などその他の動物でもあまり症例がないので、小型犬に多い病気と言えるでしょう。
—発症のタイミングはありますか?
小型犬のシニアに多く見られますが、遺伝的素因があると考えられている犬種の場合は、若くても発症することもあります。
—飼い犬にどのような症状が出たら、気管虚脱が疑われますか?
多少の咳が出る程度であれば、すぐに気管虚脱を疑う必要はありません。
呼吸が苦しそうだったり、「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような異常な呼吸音がしたら、動物病院で診察を受けてください。
—気管虚脱は、どのように診断されるのでしょうか?
レントゲンを撮って、気管の一部分が狭くなっていたら気管虚脱だと診断されます。
—気管虚脱と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか?
ほとんど症状が出ていない場合は、経過観察です。
咳や呼吸困難が出ている場合は、咳止めや気管を拡張する内服薬を使用します。
場合によっては、気管の形を維持するための外科手術が選択されることもあります。
—外科手術は、どこの病院でも受けられるものですか?
一般的な動物病院では、行っていないケースが多いですが、必要があれば手術可能な病院を紹介してくれますので、まずはかかりつけ医に相談してください。
—治療を続けていたら、気管は元の形に戻りますか?
残念ながら、元の形には戻りません。
内服薬はその後も継続して飲む必要がありますし、症状の進行に合わせて薬が増えていくこともあるでしょう。
外科手術をした場合は、丸い形を維持できている間は症状がおさまりますが、場合によっては再発することもあります。
—気管虚脱を予防するためには、どうすれば良いですか?
発症原因がわかっていないため特に予防法はありませんが、肥満にさせないこと、吠えすぎを予防すること、首輪を引っ張って喉を刺激しないこと、などを心がけましょう。
—気管虚脱と診断されたら、どのような生活を送れば良いでしょうか?
肥満の場合はダイエットをさせたり、首輪を胴輪(ハーネス)に変えて喉への刺激を減らしたりしてあげましょう。
また、興奮して吠えたりすることで呼吸が荒くなるので、あまり興奮させないことが大切です。
—興奮させないためには、どのようなことができるのでしょうか?
ドッグランなどで走るなどの激しい運動は避けて、日常の散歩程度に留めましょう。
あまり興奮させず、興奮しても「待て」や「おすわり」でクールダウンさせるためには、日頃のしつけが重要です。
犬が興奮しているときに飼い主さんが構うと、犬はますます興奮するようになります。たとえば飼い主さんが帰宅したときに、大喜びで興奮している犬を受け入れてしまうようなことはやめましょう。興奮する犬をしばらく無視して、興奮がおさまってから相手をするようにすれば、犬は自然と落ち着いた態度になります。
犬を興奮させないようにすることは気管虚脱に限らず大切なことですので、しっかり教えてあげたいですね。
犬の気管虚脱は、小型犬に多く見られる病気です。息苦しそうだったり、異常な呼吸音を発したりしていたら、すぐに獣医師にご相談ください。