2019/12/17
動物のお腹の中に住みつき、成長して卵を生む「回虫」。猫に感染する種類の回虫は、どのような種類があるのでしょうか?猫につく主な回虫である「猫回虫」「犬小回虫」に感染した場合の症状や、予防方法、人間への健康被害などについて、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—猫に感染する回虫には、どのような種類があるのでしょうか?
主なものは、「猫回虫」と「犬小回虫」です。
猫回虫は、基本的には猫にしか感染しません。犬小回虫は、猫にも犬にも感染します。
—回虫に「感染」するとは、どのような状態を指すのでしょうか?
感染力を持つ虫卵や回虫の幼虫が体内に入ることで感染します。
—「猫回虫」や「犬小回虫」は、どれくらいの大きさに成長するのでしょうか?
成虫で約10cm、大きくなると20cmです。感染経路によって異なりますが、感染から、早くて約3週間程度で成虫になります。
—成虫の状態で、自然に排泄されることはないのでしょうか?
回虫の幼虫は腸に住みつくまでに体の中を移動します。その際、気管を通るときに吐き出されることがあります。
また、駆虫薬を使用した際に嘔吐や便と一緒に排泄されることもあります。
—猫は、どのようなところで回虫の卵を口にするのでしょうか?
感染している他の猫の便や、幼虫を体内に持っているネズミなどのげっ歯類を捕食した結果、卵が体内に入ります。
また猫回虫の場合は、母猫が感染していると幼虫が母乳を介して子猫に感染することもあります。
—回虫に感染すると、猫はどのような症状になるのでしょうか?
猫の回虫は、重篤な症状になることはほとんどありません。健康な成猫の場合は、ほとんど無症状のこともあります。
ただ、子猫が感染した場合は下痢をしたり、お腹が膨れたりします。
また子猫は抵抗力がないので、栄養がうまく吸収できずに発育不全が見られることもあります。
—回虫に感染しているかどうか、どうすれば飼い主さんは気がつきますか?
虫卵はとても小さいので、肉眼で見ることはできません。
咳で幼虫が吐き出されたり、健康診断の便検査で見つかることがほとんどです。
—回虫が見つかったら、どのようにすれば良いでしょうか?
駆虫薬を使用すれば、体内の成虫は死んで排泄されます。それ以降は室内飼育をして、虫卵のある環境に行かなければ、感染する心配はほとんどありません。
駆虫薬は、飲むタイプのものや、背中に垂らすタイプなど様々なタイプがあります。
また、幼齢、妊娠中、授乳中、などでは使用できない駆虫薬もありますので、必ず受診をして獣医師に処方してもらいましょう。
—猫を回虫に感染させないためには、どうすれば良いでしょうか?
他の猫の便やげっ歯類から感染するので、室内飼育をしていれば感染リスクはほとんどありません。
一度健康診断をして問題がなければ、その後は猫の健康のためにも室内で飼育しましょう。
—猫の回虫が、人間にも感染することはあるのでしょうか?
人間の体内では成虫になれないのですが、「幼虫移行症」になることがあります。これは、回虫が幼虫の状態で人間の体内を移動して、脳や肺、眼球に入り込んでしまう病気です。
こうなってしまうと、幼虫を取り除くことは非常に難しいと言われています。
虫卵は口から入りますので、公園の砂場遊びやガーデニングなど、外で土や砂に触ったら必ず手を洗いましょう。
猫から人間に感染する病気については、「猫から人間に伝染する病気 獣医さんに聞きました!」もあわせてご覧ください。
—多頭飼育の場合、一匹が感染したら他の猫も感染することが多いのでしょうか?
虫卵は便の中に出ますが、実は排泄したての便の中にいる虫卵には、感染力がありません。感染力を持つようになるまでの時間は、「猫回虫」か「犬小回虫」かによって異なります。「犬小回虫」の方が感染力を持つまでが早いですが、それでも排泄後1週間ほどはかかります。ご家庭の場合なら、排泄した便をすぐに処理していれば、他の猫に感染するリスクはほとんどありません。
猫につく回虫は、重篤な症状になることは多くありませんが、それでも大量に寄生されると健康被害が出ます。
回虫が見つかったらすぐに駆虫薬を使用し、その後は室内飼育で感染リスクから遠ざけるようにしましょう。