2018/06/19
愛犬が体を痒がっている、皮膚全体が赤くなっている…そのような状態が見られたら、アレルギー性皮膚炎かもしれません。犬のアレルギー性皮膚炎にはどのような症状が出るのか、また治療法や家庭でできるケアについて、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—一般的に、どのようなアレルギー性皮膚炎があるのでしょうか?
代表的なものは、ノミアレルギーと食物アレルギー、そしてアトピー性皮膚炎です。
—最近、アレルギーを持つ犬が増えてきていると聞きますが、実際はどうなのでしょうか?
アトピー性皮膚炎に関しては多少増えてきているという印象はありますが、それ以外のアレルギー性皮膚炎に関しては、特に増えているというデータはありません。
室内飼育をする犬が増えたことで、飼い主さんが皮膚の異常などにすぐ気づくようになり、アレルギー性皮膚炎での受診率が上がっているということはあるかもしれません。
また、都市部はコンクリート舗装されているところがほとんどのため、土に比べると花粉などが何度も舞い上がり浮遊しやすい、室内飼育によりハウスダストにつくダニへの接触機会が増えている、という点もあると思います。
ノミアレルギーは、単に「ノミに刺された箇所が痒い」ということではなく、ノミの唾液に反応してアレルギー症状が出て、全身が痒くなります。
予防薬や滴下剤でノミ予防をしていない犬が散歩に行き、その後に全身を痒がるような様子が見られたら、ノミアレルギーの可能性があります。
犬の皮膚炎については、
「犬が体をかく8つの理由。その症状、皮膚炎へつながることも!? [皮膚炎 前編]」
「愛犬を「皮膚病」から守るために|知っておきたい予防と治療法 [皮膚炎 後編]」
もあわせてご覧ください。
—食物アレルギーは、どのような食品に反応するのでしょうか?
小麦、大豆などの穀類や、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類などです。これらは、通常、ドッグフードに含まれている食品です。
—食物アレルギーかどうか、どうやって検査をするのでしょうか?
まず、アレルギー対応の療法食をしばらく食べさせてみて、それで症状がおさまるのであれば、また元のフードに戻してみます。それで再度症状がみられ、再び療法食でおさまるようであれば、食物アレルギーである、という診断になります。
必要に応じて血液検査などでアレルゲンの特定などを行いますが、療法食に変更することで症状が出なくなるのであれば、特に詳細な検査を行わないこともあります。
—なぜアレルギー性皮膚炎になってしまうのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の場合は遺伝的な素因もありますが、特に原因はわかっていません。
清潔な環境で健康的な食事をしている犬でも、何かしらのアレルギー性皮膚炎になることがあります。
—アレルギー症状が出やすい年齢はありますか?
アトピー性皮膚炎は生まれつきの体質があるので、6ヵ月~3歳あたりで発症しやすいと言われています。
食物アレルギーやノミアレルギーについては特に年齢は関係ありません。
—アレルギーになりやすい犬種はありますか?
アトピー性皮膚炎になりやすい犬種としては、柴犬やレトリーバー種、シー・ズーなどです。
食物アレルギーが出やすい犬種は、コッカー・スパニエルやスプリンガー・スパニエル、ボクサー、コリー、ダルメシアンなどの報告があります。
またアトピー性皮膚炎の犬は、食物アレルギーやノミアレルギーであることも多い、という相関関係が報告されています。
—長毛種でも短毛種でも、アレルギー症状に違いはありませんか?
なりやすさや症状自体は変わりませんが、長毛種はノミなどがついた場合に見つけにくいという面はあるでしょう。
また短毛種、特にパグやフレンチ・ブルドッグなど短くて硬い毛を持つ品種の場合、毛並みに逆らってシャンプーをすることにより、毛が揺れて、毛穴の中を固い毛が刺激してしまい、そのせいで毛穴を傷つけてしまうことがあります。
そして傷ついた毛穴にシャンプー剤などが入ることで、皮膚トラブルを引き起こすことが多いです。
—アレルギー性皮膚炎の治療は、どのようなことをするのでしょうか?
治療の目的は「痒みのコントロール」になります。
まず、痒みが出ている場合は、痒みを止める内服薬を飲みます。
その後は、ノミアレルギーであればノミ予防薬を処方したり、食物アレルギーであれば、原因物質を食べさせないようにして療法食を出すなど、アレルゲンに接触しないための対策を行います。
またアトピー性皮膚炎に関しては、アレルゲンを少しずつ体内に入れて慣らしていく「減感作療法(げんかんさりょうほう)」を行うこともあります。
—アレルギー治療専門の動物病院もありますか?
獣医師には、皮膚の専門医制度があります。スキンケア方法など、家庭でもできる指導を詳細に受けることもできます。
—飼い犬がアレルギー性皮膚炎になった場合、飼い主さんはどのようなことに気をつければ良いでしょうか?
日常生活の中でアレルゲンとの接触機会を減らすこと、丁寧にスキンケアをすることが大切ですね。
アトピー性皮膚炎の場合は、ハウスダストやダニがアレルゲンになるので、室内を清潔にしておくことが必要です。散歩時に皮膚を保護する「アレルギースーツ」を着せて、花粉などがつかないようにする方もいます。
食物アレルギーの場合は、食事を療法食に切り替えます。シャンプー剤の中にはオーツ(大麦)などが含まれるものがあるので、麦系の食物にアレルギーがある場合は切り替えが必要かもしれません。
ノミアレルギーの場合は、ノミ予防をきちんとすることが第一です。そして散歩から帰ったらすぐにブラッシングをして、ノミがいないか確認してください。
またすべての皮膚炎に言えることですが、シャンプーのしすぎは必要な皮脂まで洗い流してしまいます。シャンプーをするときは保湿効果の高いものを選び、シャンプー剤を直接肌につけるのではなく、洗面器などで泡立ててから優しく洗ってあげるようにしましょう。
犬のシャンプーについては「自宅でできる!愛犬のシャンプーとお風呂 頻度とコツ」で詳しくご紹介しています。
愛犬が体を痒がる様子が頻繁に見られたら、アレルギー性皮膚炎の可能性があります。愛犬の皮膚の状態を観察し、必要に応じて獣医師の診察を受けてくださいね。