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特別講義
「金融機関における
理系人材の活躍と成功」
2017年10月25日水曜日、慶應義塾大学日吉キャンパスにて、当社取締役 上級執行役員 CFO(Chief Financial Officer)CTO(Chief Technical Officer)CDO(Chief Data Officer)である齋藤貴之による「理工学概論」の特別講義が行われました。対象は、理工学部の1年生約250名。特別講義の内容をダイジェストでお届けします。
みなさんこんにちは。アクサ損害保険の齋藤と申します。みなさんは理工学部の1年生ということで、就職はまだ先のことだと思いますが、この講義で金融機関にも理系のみなさんにとっても活躍の場があるということを理解いただいて、金融機関も就職先の選択肢のひとつに入れていただけたらなと思っています。
私は、立教大学の理工学部を卒業した後、国内中堅損害保険会社に就職しました。外資系損保会社、監査法人などを経て2008年からアクサ損害保険のCFOとなりました。その間、2001年に日本アクチュアリー会の正会員になりました。今は、財務、資産運用、商品、数理、データサイエンスの部門を担当しています。アクチュアリーというのは保険会社の根幹に関わる仕事です。
アクサ損害保険は、インターネットやスマートフォンを活用したビジネスを行っているので、アクチュアリーやデータサイエンティストといた理系の人材確保に力を入れています。ここ数年、われわれは理系の大学院生のインターンを積極的に採用し、インターンのなかから毎年数名社員として入ってもらっています。
金融業界における
理系の典型的な職種
金融業界における理系人材の活躍エリアは、資産運用、クォンツ、アクチュアリー、システム部門など。最近では、フィンテックやビッグデータの活用に関するポジションも拡充しています。
「金融業界で需要のある典型的な理系スキル」は、確率、統計や、プログラミング、AI、マシンラーニング等がメインです。それから、ビッグデータ、クラウド環境構築、データエンジニアリング等のスキル、また保険数理、金融工学なども含まれます。
代表的な理系の職種の一つとして、システムエンジニア、ソフトウェアエンジニア、プログラマーなどがありますが、金融機関においてもシステムの分野に対する需要は非常に大きいものがあります。今後は、クラウドコンピューティング、業務アプリケーションなどのスキルが求められるようになります。
次に、クォンツ。金融工学を用いて金融市場動向や企業業績を分析・予測したり、投資戦略や金融商品を開発・考案する人です。資産運用やトレーディングは人からAIにかわりつつありますが、コアとなるロジックを組むのは人間ですから、そこに一定の需要があります。
そして、今最もホットなデータサイエンティスト。統計とかコンピューターサイエンス、データ分析を駆使して、膨大なデータを構造化しながら整理し、データからバリューを引き出すのが仕事です。今後は、IT技術の発達、蓄積されるデータ量が大きくなってきますので、金融機関においてもデータサイエンティストの需要は間違いなく増えます。
最後にアクチュアリー。数学・統計を用いて保険や年金を扱う企業の商品開発、資産運用、リスク管理等を行う人材のことです。保険会社においてアクチュアリーが関与する業務の幅は非常に広く、商品開発、資産運用、リスク管理のほかに、経理・財務、マーケティング、戦略策定等々の分野で活躍している方もいます。
理系人材が企業で成功するには、自分の差別化を
考える
そもそも理系の人間は金融機関で出世できるのか? 調べてみたら、日系の大手の金融機関の社長はほぼ文系です。しかし、データサイエンティストやクラウド環境構築ができる人材を欲している会社は増加の一途です。特にネット銀行やネット証券、ダイレクト系の保険会社は、ビジネスモデルそのものがIT技術と非常に密接にかかわっていますので、今後はそういったエリアの人が金融機関で成功していくようになると思います。
「成功」といっても、経営層まで出世するのか、ある特定のエリアを極めていくのか、これは人によって目指すところが違うと思います。経営層まで出世したいなら、企業に貢献して認められることが最低条件です。「私はこの分野の専門家なのでここだけやります。会社の業績がどうなろうと関係ありません」という姿勢では企業では通用しません。経営層まで出世したいなら、人をマネージメントする力、コミュニケーション能力は必要です。一定の専門分野を突き詰めたい人であれば、研究者、大学に残るのがいちばんだと思います。企業でも研究職はありますが、リターンを産まない研究はいずれ続けられなくなります。
理系人材が企業で成功するためには、自分の差別化をどういうふうにするのかを考える必要があると思います。私は10年かけてアクチュアリー資格をとり、30歳をすぎてから外資系の会社に入って英語を話せるようになり、今は経営もやっているため、差別化できることが3つくらいあります。自分の価値とか得意分野で他者と差別化するのは非常に重要なことです。
就職した後も自分でどんな履歴書をつくっていくかは大事です。今日の話が皆さんの今後の参考になればいいと思います。