2021/12/23
犬が痒そうに体を掻いている、湿疹やニキビのような膿疱がある……犬の皮膚トラブルの原因は、もしかしたら膿皮症かもしれません。
膿皮症とはどのような病気なのか、なってしまった場合の治療法や、膿皮症にならないための予防法を、獣医師の三宅先生にうかがいました。
—膿皮症とは、どのような病気ですか?
膿皮症は、犬の皮膚にいる常在菌の一つ「ブドウ球菌」が、異常に増殖してしまったために、皮膚に湿疹ができる病気です。
—なぜ、ブドウ球菌が増えてしまうのですか?
犬の皮膚に、何らかのトラブルがあるからです。たとえば免疫機能の異常や、内分泌系の疾患などですね。またアレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎なども原因の一つです。
そのほかにも、外傷や間違ったスキンケアによって肌が傷ついてしまい、膿皮症になることもあります。
—間違ったスキンケアとは、どのようなことでしょうか?
まず挙げられるのが、洗いすぎです。シャンプー剤を使うのは1~2ヵ月に1度で十分。それ以外は、お湯で汚れを洗い流す程度にしておきましょう。
また間違ったブラッシングで皮膚を傷つけてしまったり、逆に換毛期にブラッシングをしなかったために毛が落ちず、皮膚が蒸れてしまうことも良くありません。
犬のシャンプーについては、「自宅でできる!愛犬のシャンプーとお風呂 頻度とコツ」もあわせてご覧ください。
犬のブラッシングについては「ブラッシングが好きになる!愛犬と楽しむ毎日のブラッシング」もあわせてご覧ください。
—膿皮症の見た目の症状は、ニキビのような状態なのでしょうか?
膿皮症かその他の皮膚病であるかは、見た目だけではわかりません。ニキビのように膿疱ができたり、米粒状の「丘疹(きゅうしん)」ができたり、ひどいときにはグジグジして痛みを伴う「びらん」状態になることもあります。
—膿皮症かそうでないかは、どのように判断するのでしょうか?
飼い主さんが判断するのは難しいので、まずは動物病院で検査を受けてください。皮膚の状態や細菌検査を行い、原因を特定します。膿皮症だと判明したら、治療を行います。
—膿皮症の場合は、どんな治療をしますか?
膿皮症は、内服薬で治療します。表在性の、表皮の感染であれば抗生剤を3週間しっかり飲めば治ります。深在性のものだと、1~3ヵ月飲むこともあります。
ただ、いずれの場合も抗生物質ではなかなか治らない難治性の場合もありますが、その原因は不明です。
また場合によっては、薬剤をいれたお湯で入浴させる薬浴などを指示されることもあります。
—治療中に、飼い主さんが気をつけることはありますか?
見た目に症状が無くなっても、処方された抗生剤を最後までしっかりと飲ませることです。そうしないと、中途半端に菌が残ってしまうため再発したり、耐性菌が出来てしまうこともあります。
3週間という期間が長過ぎる、そんなに長い間抗生物質を飲ませて大丈夫なのか、と不安に感じる飼い主さんも多いと思いますが、処方通りにしっかりと飲ませてください。
—他の犬にうつることはありますか?
ブドウ球菌自体に問題があるわけではないので、うつることはありません。
—ブドウ球菌とは、食中毒の原因菌のことですか?食事が原因で膿皮症になることもありますか?
ブドウ球菌には色々な種類があり、膿皮症の原因となるブドウ球菌と食中毒の原因菌となるものとは種類が異なります。
また、食事のアレルギーによって皮膚にトラブルがあり、それが原因となって膿皮症になるケースも全く無いわけではありませんが、ほとんどの場合は直接的な原因ではありません。
—犬の年齢などによって、かかりやすい、かかりにくいの差はありますか?
年齢は関係ありません。また、長毛・短毛でも違いはありません。
—膿皮症にならないように、飼い主さんができることはどんなことでしょうか?
まずは、正しいスキンケアをすることですね。特にシャンプー剤での洗いすぎに注意してください。
また高温多湿の環境は皮膚に良くないので、温度・湿度管理をしてください。人間が快適だと思う程度で大丈夫です。洋服を着せっぱなしにすると湿度が高くなってしまうので、気をつけましょう。
ブラッシングは、肌を傷つけないように適度に行ってください。やり過ぎも良くないですが、逆にやらなさ過ぎて換毛期に抜け毛が溜まってしまうと、それが原因で湿度が高くなります。適度なブラッシングを心がけてください。
—シャンプー以外に、オイル等でスキンケアをした方が良いでしょうか?
乾燥を防ぐスプレーなども市販されていますが、犬は全身に皮脂腺があり、皮膚をバリアしています。人間が皮脂を取り除きすぎなければ、何かを足す必要はありません。
膿皮症かどうかは、見た目では判断できません。「単なる肌荒れだろう」と思って放っておくと悪化して治りにくくなるので、犬の肌に何らかのトラブルを見つけたら、早めに動物病院を受診してください。