2019/08/22
愛犬の被毛に白い粉のような「フケ」がついていたら、それは何らかの病気やストレスのサインかもしれません。フケの量が気になるようなら、原因を知り早めに対処していきましょう。
フケとは、古い皮膚が新陳代謝によってはがれ落ちたものです。犬の皮膚は、人間と同じように下の方から新しい細胞が生まれ、古い細胞が表面からはがれることによって、世代交代します。これを「ターンオーバー」といい、約3週間のサイクルで繰り返されています。
犬の皮膚が健康な状態であっても、ターンオーバーによって多少のフケは出ます。しかしフケの量が増えて目立ってきた場合は、皮膚に何らかのトラブルが生じている可能性もあります。犬のフケに適切に対処するために、フケが出る原因を見ていきましょう。
フケが増えるのは皮膚の病気が原因かもしれません。代表的な病気として、ツメダニ症、皮膚糸状菌症、アトピー性皮膚炎、脂漏症などが挙げられます。
ツメダニ症とは、ツメダニという寄生虫が引き起こす皮膚炎です。フケが目立つようになるのが特徴で、その他の症状はあまり出ませんが、かゆみや脱毛が見られることもあります。
ツメダニは宿主を離れても、草むらなどで数日間生息できます。そのため、動物間の感染だけでなく、草むらなどにいるツメダニが付着して発症することもあります。大きさは0.4~0.6mmで、肉眼でも確認できます。
ツメダニは人間にも感染するので、ツメダニを見つけたら早めに動物病院を受診したほうが良いでしょう。治療として、薬用シャンプーを使った沐浴や、薬による駆虫が行われます。
皮膚糸状菌というカビ(真菌)の一種に感染することによって起こる症状です。皮膚糸状菌症にかかると、感染した箇所から菌を追い出そうとして皮膚のターンオーバーが速まるため、フケが増えたり、円形脱毛が見られたりします。
人にも感染する場合があるので、早めの受診が大切です。抗真菌薬の処方や、薬用シャンプーで体を洗うなどの治療が行われます。
アトピー性皮膚炎の犬の場合、肌が乾燥しやすいためにフケが出やすくなります。また、肌がカサカサしているとかゆみが増し、頻繁に掻いてしまうことで肌が傷つき、ますますアレルゲンなどに対して敏感になってしまいます。
アトピー性皮膚炎ではなくても、皮膚を舐めたり掻いたりしてフケが目立つようになってきた場合は、早めに動物病院を受診して悪化を防ぎましょう。
アトピー性皮膚炎は、アレルギー性皮膚炎のうちの一つです。「獣医さんに聞く!犬のアレルギー性皮膚炎 症状や治療法、自宅でのケア」もあわせてご覧ください。
脂漏症は、皮膚の新陳代謝が異常に速まることによって起こる症状で、「油性脂漏症」と「乾性脂漏症」があります。
油性脂漏症の場合は、体がベトベトと脂っぽくなって体臭も強まり、油性のフケが出ます。乾性脂漏症の場合は、皮膚が乾燥してフケが増えます。
脂漏症はかゆみが強く、掻き壊して症状を悪化させてしまう恐れもあるので、症状が見られたら早めに獣医さんに相談して、適切な治療を受けさせましょう。
そのほか、犬の皮膚トラブルについては、以下のページもあわせてご覧ください。
「犬が体をかく8つの理由。その症状、皮膚炎へつながることも!? [皮膚炎 前編]」
「愛犬を「皮膚病」から守るために|知っておきたい予防と治療法 [皮膚炎 後編]」
「犬の膿皮症って?湿疹や痒がる原因と治療法を獣医師に聞きました」
病気以外の原因でフケが増えるケースとして、短毛種に多く見られる「乾燥肌」が挙げられます。体質的に乾燥しやすい場合は、保湿スプレーや保湿成分入りのシャンプーなどでケアしてあげましょう。
また、ストレス解消のために頻繁に皮膚を舐め、皮膚トラブルが生じてフケが増えることも。その場合、生活環境などに愛犬のストレスとなる要因がないかを検討し、対処する必要があります。
他にも、シャンプーが合っていなかったり、シャンプーの仕方が間違っていたりすると、皮膚のコンディションが悪くなってフケが出ることもあります。
シャンプーをした後からフケが増えてくる場合は、飼い主さんのシャンプーの方法を見直してみる必要があるかもしれません。
病気が原因でフケが増えている場合は、動物病院で適切な治療を受け、日頃のケアや食事内容についても、獣医さんの指示やアドバイスを守ることが大切です。
特に原因となる病気がない場合は、愛犬の皮膚を清潔に保つようにお手入れして、フケのトラブルに対処していきましょう。ここでは、シャンプーとブラッシングのポイントをご紹介します。
フケが目立っている場合、すでに皮膚のコンディションは悪化しているので、シャンプーの仕方にも注意が必要です。
清潔にしたいからと、あまり頻繁にシャンプーをすると、必要な皮脂まで落としてしまいます。月に1~2回を目安としましょう。あらかじめ泡立てておいたシャンプーで優しく丁寧に洗い、しっかりと洗い流すことがポイントです。
また、皮膚病ではないのに抗菌シャンプーや脱脂力の強いシャンプーに切り替えると、かえって皮膚にダメージを与えかねません。低刺激性のシャンプーなど、肌の状態に合ったものを選びましょう。
シャンプーの頻度とコツについては、「自宅でできる!愛犬のシャンプーとお風呂 頻度とコツ」もあわせてご覧ください。
フケは被毛に付着するため、こまめなブラッシングは欠かせません。被毛を清潔に保ち、皮膚の通気性を良くすることによって、コンディションの改善につながります。肌を傷つけないよう、被毛のタイプや長さに合わせて、適切なブラシを選びましょう。
また、ブラッシングの際には皮膚の状態にも目を向けて、何か異常が見られたら動物病院を受診するように心がけましょう。
ブラッシングについては、「ブラッシングが好きになる!愛犬と楽しむ毎日のブラッシング」もあわせてご覧ください。
一口に「フケ」と言っても、様々な原因があります。愛犬の肌を健康に保つために、適切な治療やお手入れを心がけてください。
動物病院勤務の経験がある獣医師、アクサダイレクトのペット保険業務に携わる犬好き・猫好きの在籍する編集部です。ペットとの暮らしに役立つ情報から、犬や猫に関する健康・しつけなどの大切な知識、しぐさからわかるおもしろ豆知識など、専門的な視点から幅広く情報をお届けします。